【 銀砂 】
「先生」
典医寺の診察室で呼び止められて振り向くと
「また行くの?」
医仙は驚いたように外出用の薄い長外套を纏う私を、頭の先から爪先まで眺めて尋ねる。
「・・・ええ」
またと言われるほど度々出掛けていたろうか。以前はそれ程出掛けてはいなかっただろうか。
思い出そうとしても無理だった。あの碧の目に出会う前の事を。
薬草を買い付けに出ていた筈だ。
珍しい草が入った、薬効の高い種が入ったと耳にすれば、取置きを頼んでまで求めに通った碧瀾渡。
あの自由な匂いの風の吹く港町。
決して留められず何処にも留まらず、ただ清濁を抱いて香りを、色を変えて吹いて行く川風の町。
「ふうん・・・?」
医仙は何か言いたげに笑うと、しかし何も言わずに含みのある目で私を見
「留守の間は任せて。先生にはいつも助けられてるし。その代わり私が出掛ける時はお願いね?」
共犯者のように声をひそめておっしゃると、まるで何事もなく普段の調子に戻って天真爛漫な笑顔を浮かべ手を振った。
「気を付けてね、先生。行ってらっしゃい!」
医仙の笑顔に半ば押し出されるように診察部屋を出た途端、扉陰に佇む鎧姿にぶつかりそうになった。
扉を出て来たこちらに向けて視線だけを動かして、しかしその壁に凭れた体は微動だにしない。
不機嫌と顔に書いてあるその人は、組んだ腕先の指一本すら動かさず
「・・・何故あの方が、お前に手を振る」
と、唸るような声で問うた。
「さあ、それは私にも」
そんな風に問われても困る。私が無理強いして振らせたわけでもあるまいに。
けれど余りにも判りやすい表情に微笑む私を見ると、初めてその仏頂面に薄い赤みが注す。
「何だ」
「いえ、何でも」
「行け」
「・・・ええ。それでは」
互いに行きたい場所へ、逢いたい人の許へ。
私と隊長は互いにぎこちない表情で、無言のまま擦れ違う。
互いの心の呼ぶ場所へ向かう為に。
隊長の医仙への想いほど強く確かなものがある訳ではない。
それでも会いたいと思う。そして知りたい。あの異国の、自由な風のような人を。
そんな気持ちに足を急かされ厩への道を走り出す私の行く道を開けながら、医官の列が頭を下げた。

確か以前のリク話だったかなと思うのですが、ウンスとヨンとチャン侍医で遠出をして、そこで外国(中近東だったかな)の身分のある女性と出逢いましたよね?
もしかしたら、将来チャン侍医と何かあるのかな~と思わせる終わり方だった様な気がするのですが、その続きが読みたいです。
チャン侍医にも幸せになって欲しいので。
ドラマ本編では最初三角関係になるのかな?なんてちょっと思いましたが、そうはならず、最後までウンスの良き相談相手、師匠で友人でしたよね。
もしかしたら心に秘めた想いがあったかもしれない・・・
ヨンとウンスの2人の絆、想いは近くにいたから良く分かっていますもんね。
そういう隠した想い(ヨンは薄々気づいている)があったので、他の誰かに好意を寄せる等考えられなかったチャン侍医ですが、この女性との出逢いで少しづつ変わっていく・・・なんてどうでしょう^^
そんな想いに全く気がついていないウンスは、一肌脱いで間を取り持とうとしちゃうとか・・・(ヨンに余計な事をするなと言われるかしら( ´艸`))
私の思い付きを長々書いて申し訳ありませんが、さらんさんの味付けアレンジで素敵なお話にして下さいませ(。-人-。)
(すんすんさま)
元話は2014-15 リクエスト | 碧河 です❤
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まあ 別に
お出かけを咎めているわけじゃないし
( ´艸`) うふふ
お付き合いするのも大事だし…
異国ですよ なんだか
刺激をもらえそうな気がしますわよ
医仙にも…ですが 何分
怖い人がそばに居るしね(笑)
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先にとのアドバイスで、「碧河」読み返してきました。
碧の目の女人。
ウンスのように、チャン先生の知らない世界の扉を、目の前で開いてくれる女人?
なのですね。
うん、うん、二人のこの先、どうなるのかな。
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ヨンとチャン侍医
この二人のやり取り好きです(笑)
ウンスさんは
他人の恋路には敏感だけど
自分たちの事には???なのね(^^;