「そうだったんだ、やっぱりね」
小さく烈しい息の下、この方が珍しく低い声で言った。
「矢張りとは」
「急に来るって言うんだもの、何かおかしいと思った!」
「それは」
「男なんてそんなものよ、キレイな人が参加するならすぐ心変わりして。守りたいだの何だの言ったって結局はそう!」
如何にもな物言いが癇に障る。其処らの男と同じように扱うな。
怒鳴り返そうとして鳶色の瞳が見る間に潤むのを見つけ、心の臓が跳ね上がる。
これは違う。こんな事の為に連れ立って来た訳ではない。
泣かせる為に言い出した訳ではない。口論する為に庇った訳でも。
「医仙」
「もういいっ!思ってるのは私だけだってよく分かった。支えも張りもすぐ見つかるわよ。さっきのオンニ達の喜び方見たでしょ?
あなたが来るって言っただけであんなに盛り上がってるんだから、私の心配なんて最初からいらなかったわよね!」
次々と矢のように飛んで来るその声を避けるのに精一杯で、此方が口を挟む余地すらない。
「・・・私ばっかり。私ばっかり!!」
「一体何を」
何故突然こんなにも。その心の変わり様が判らずに首を捻る。
回廊隅で幸いだ。皇宮のど真中でこの騒ぎになれば、互いに面目が立たぬ処だった。
「想ってるのは私ばっかり!毎朝キレイにしたいのも私ばっかり!支えられてるのも私ばっかり!!」
「・・・え」
「何も分からない。あなたは何も言ってくれない。だけど今日はハッキリしたわ。
行きたいのよね、ソゲッティングに。見つけたいのよね、ずっとあなたと一緒に仲良くいられる人を!」
「俺は」
言葉だけならいざ知らず、次には小さな拳が飛んで来る。
拳も良い。声の礫も。でも涙だけは駄目だ。それだけは。
「もう見つけております」
小さな拳が傷つかぬように。これ以上あなたを泣かせぬように。
敢えて胸にそれらを受けて頭を下げると、振り上げた拳の一手がぴたりと止んだ。
「もう見つけているので・・・」
こんなところで問う事ではない。そしてこの場で口にする事でも。
ただ嬉しい。あなたが涙ぐみながら教えてくれた心が嬉し過ぎて、どんな顔をして良いのか判らずに。
いつか訊く。
今ではなく、そしてこんな風に売り言葉に買い言葉の勢いではなく。
「お訊きします。いつか必ず」
「・・・何を?」
「大切な事を」
「だから大切って何を!!」
「もう少しだけ」
もう少しだけ刻が必要だ。長い長い遠廻りの途を辿った後だから。
泣き虫なあなたは真赤な目の縁に涙をいっぱいに溜めて俺を睨む。
睨んでいるうちは良い。それが零れたら今すぐ言ってしまうから。
「もう少しだけ」
「いいことでしょうね?最後にイヤなこと言われたら、私がいくら心が広くても」
心が広いが聞いて呆れる。
この方も自分でおっしゃって可笑しくなったのか、涙混じりに噴き出した。
「許さないんだから」
「・・・はい」
きっと佳き事だと信じたい。俺達二人にとって。
意地張りで泣き虫なこの方と、言葉の足りぬ俺と。
その為には先ず恋敵になりそうな奴らを排除せねばならん。
色を取り戻した景色の中で、もう一度この方に正面から向き合う。
泣かないで欲しい。次に俺が心から尋ねた時にも。
泣かずに笑顔を浮かべて、ただ一度頷いて欲しい。
「そげってぃんは」
「ここまで言ったのに。ほんとに来る気なのね」
「無論です。で」
肚に力を入れ直し、この方に向け問うてみる。
その則を流儀を御存じなのは、この方だけだ。
「邪魔者はぶちのめしても許されますか」
「・・・ちょっと、ねえ、何する気なの?」
物騒な俺の問いに、この方が顔を強張らせる。
「敵は早めに潰すに限るかと」
「て、敵って」
否と言われぬと言う事は応という事にしておこう。
歩き出した春の回廊、あなたが背から駆けて来る。
「ねえ、ちょっとほんとに。何するつもりなの?」
そう言って細い指が不安な様子でこの衣の背を引く。
それすら誰とも判らぬ他の男を案じているようで腹が立つ。
教える気はない。伝えれば、必ず止められるだろう。
「秘密です」
応えると背後から回り込み、あなたが眸の前に立ち塞がる。
幼子のように両手両足を広げて道を塞ぎ、真摯な瞳で俺を見据えて。
「まさか、ソゲッティングで暴れるつもりじゃないわよね?みんな楽しみにしてるんだから、そんなことしたら」
「迂達赤次第でしょう」
あなたもそげってぃんを隠していた。この程度の報復は許される。
そして全てを打ち明け尋ねる日、その時に心から詫びよう。
恋敵など御免だった、そうなるなら先に潰しておこうと思ったと。
一日でも一年でもなく、一生傍に。
そして誓って下さるなら、その約束であなたを優しく縛りたい。
何処にも逃げられぬように。二度と離れぬように。どの男の目にも映らぬように。
そうして一生縛っても、この方は笑って許して下さるだろうか。
春の景色に叶えたい夢を見ながら、俺達は回廊を戻って行った。
【 2016 再開祭 | 소개팅 ~ Fin ~ 】

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ずっと、車で、山道をくねくね走行していました。
春の終わり…と言うより、初夏の日差し。
緑がいっぱいです。
木陰で車外へ。
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周りの木々も草花も、♪ですよ。
顔を優しくなでる風は、
フワッとした新緑の香り…
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そう言ったドラマでのウンスのセリフと一生離しませんって言ったョンのセリフが目の前に浮かんできます。私も相当ドラマを見尽くしている気がする…(–;
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ソゲッティン…( ̄ー+ ̄)
続きがみたいハニです…てへっ!
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みんなを安心させてくださいまし(笑)