【 宿世結び】
「ヨンア」
庭に溢れる緑。照らす梅雨の晴れ間の陽射し。
空気はもう夏程に暑い。
「コムさんも」
声と共に小さな顔が居間の扉の向こうから覗く。
細い腕の手招きに呼ばれ、 最後の薪を割る。
高い音を立て太い薪が割れたのを確かめ、緑の庭、薬木の茂みへ眸を投げる。
その先でコムも不思議そうに目を開き、此方を見つめて首を傾げた。
*****
「あっついでしょ。熱中症予防」
コムと共に縁側に寄ると、待っていたあなたが茶碗を二つ差し出した。
「今日は涼茶。これも一緒にね」
細い指先が、椀の脇の小鉢に盛られた淡い橙の陳皮を示す。
茶碗の中の濃緑の茶は、庭の緑より一段と黒い。
それを見たコムが困ったように微笑み
「ウンス様、俺は」
そう辞退するのに、この方はふざけて怒った顔を作る。
「ダメですよコムさん。薬だと思って、グイっと!」
その声に頷きコムを眸で促して、それぞれの手に茶碗を受ける。
良薬口に苦し。
心で呟き一息に煽り、俺達は続いて小皿の陳皮を指先に摘まみ上げると口へ放り込んだ。
「ああ、ここにいらしたのですね」
涼し気な声に振り向くと、庭先の緑の中をタウンが足早に抜けて来る。
「タウナ」
声の調子にこの眉根が寄る。
心配そうな声。普段の優しい声の中に滲む苦さ。
「・・・ヨンア?大丈夫?」
コムの声音には気付かずとも俺の変化にだけは人一倍敏感なあなたが、縁側から手を伸ばし、この指先を緩く握り締めた。
男二人の苦い顔に、縁側まで寄ったタウンは困ったよう眉を下げる。
「何があった」
「大護軍」
「言え」
寄ったタウンにではなくコムに向けた声に小さく首を振り、その髭面で優しく笑う。
「何でもないです、ヨンさん」
其処まで聞いて何を察したか。
この方は突然縁側で立つと、沓を突掛け跳ねるように庭へ降りた。
「ヨンア、お水が欲しい」
「・・・イムジャ」
「井戸まで付き合ってくれる?」
言い放つと返事も聞かず、この手を引いて緑の庭を歩き始める。
「イムジャ」
「何かあったの?コムさんとタウンさん」
「判らぬから確かめようと」
「じゃあ、先に少し話させてあげよう?2人で話せば、きっとその後には言ってくれるわ」
この方の心配りに驚いて、庭先を引かれるまま肩越しに確かめる。
縁側の先、確かにタウンはコムへ近付き静かに声を交わしている。
そのタウンの肩に、コムがでかい手を乗せるのが見える。
「旦那さま?」
聞き慣れん呼び方に驚いて顔を戻すと、緑を映した瞳が三日月になって見上げている。
「2人っきりの時は、妻だけ見てくれないと」
何処まで本気か。拗ねたような声に小さく笑んで
「・・・はい」
握られる指を緩やかに解き、小さな手を掌へ納めて包み直す。
手は引かれるよりも、引く方が落ち着く。
時間稼ぎに始まった逢瀬。
その手を引いて、鮮やかな初夏の庭を歩き始める。

リクエストはヨンとウンスの新婚の頃の
お話をお願いします。 (じゅんくーさま)
SECRET: 0
PASS:
新婚さんか…
自分たちの邸ならば
遠慮はいらない 離れてるなんて
もったいないわぁ
タウンとコム 何でしょう?
まぁ タウンのことが 心配なのね。
夫婦ならなおさら 互いのことが心配よね♥
SECRET: 0
PASS:
こんにちは!
いつも楽しく読ませていただいてます。
今日、お話を読み進めて最後に自分の名前が
あったのでびっくり\(◎o◎)/!
リクエストに応えていただいてありがとうございます。
ヨンとウンスのお互いを想い合ってる感じが
すごく好きなのです。
さらんさんの素敵な文章でどんな風に展開していくのか
いつも以上に楽しみにしております。
時節柄ご自愛くださいね。
SECRET: 0
PASS:
さらんさん❤
嬉しいです~~(^-^)
ヨンとウンス。コムとタウン。
この二組の夫婦のお話が
本当に好きなんですよ❤
【宿世結び】
この二組の夫婦も、宿世によって
出会えたのかなぁ~?
お話の続きが楽しみです(^^)
SECRET: 0
PASS:
さらんさん、こんにちは♪
ウンス、自分の事以外だと察しがいいのにね。
ウンスに先導を取られて落ち着かない感じ~!
旦那様、普段言われない言葉に驚きと照れが感じますね( ´艸`)
そりゃー手は惹かれるより引きたいでしょうね*(\´∀`\)*: