威風堂々 | 22

 

 

御義父上。御義母上。
御挨拶が遅れました。本当に申し訳ありません。

某、本貫鉄原崔家瑩と申します。

何をお伝えすべきか迷いました。
御二人からウンス殿を引き離した己が何をお伝えできるか。

御義父上。
きっと目の中に入れても痛くないお嬢様だったのでしょう。
御義母上。
きっと誰より慈しみ、この方をお育て下さったのでしょう。

そんな御二人の許からこの方を引き離したのは、他ならぬこの己です。

それでもウンス殿は、共に居ると言って下さいました。
大切な御両親から、住み慣れた天の都から攫った己にそう言って、戻って来て下さいました。

御立腹でしょう。悲しまれているでしょう。
己が此処で帰りを待ったからこそ、御二人の御気持ちもその御心の痛みも、判るような気がいたします。

それでも離せません。どうかお許しください。

この方を離せません。御二人が待つと、こうして知っていても。

御詫びのしようもありません。
天罰が下るならば己が全て 甘んじて受けます。
命と引換にとおっしゃるならば、喜んで差し出します。
但しこの方が此処を去った後に。

この方が生きていらっしゃる限り、死ぬ訳には参りません。
共に居て下さる限り、己の全てで護ります。
絶対にこの方を一人きりにするわけにはいかないのです。

何故ならこの方が、こんな己を探して呼び続けて下さる。

二度と悲しい声で呼ばせるわけにはいきません。
迷い子のように彷徨わせるわけにはいきません。

そこにいる?

あの声で、呼ばせるわけにはいかないのです。

判って下さいと、お願いするしかありません。
どれ程厚顔無恥なお願いか、重々承知の上で。

兵である己の為に、この方に苦労を掛けます。
けれど御両親に誓います。
決してこの方を離しません。
持てる力の限りで護り抜きます。

この方の心も体も、決して傷つけません。
傷つける者はこの名に懸け、決して赦しません。
御二人に誓えるのはそれしかありません。

この方を叱らないで下さい。お叱りならば己が受けます。
償えとおっしゃるならば、どのような方法ででも償います。

ですから、遠い天界から、どうぞこの方を見守って下さい。
この方が御二人を恋しがる時、どうぞ御声を掛けて下さい。
夢の中、この方の前にその御姿を見せてやって下さい。
己にはどうしてやる事も出来ません。
この方が望んで下さる限り、傍にいる事しか出来ません。

それでも望んで下さる限り、命を懸けて傍におります。
どこにも行かず、脇目も振らず、ただ手を握ります。
この方を護れるなら、喜んで鬼になります。

どうか、二人の婚儀をお許し下さい。
生涯を共にする事を、お許し下さい。

「・・・あ」

背後で小さな声がする。この眸がふと上がり、空を見上げるのと同時に。

地に膝をついたまま見上げた、晴れたままの蒼穹。
透明な日差しに輝きながら、絹糸のような雨が落ちて来る。

「狐雨」

この方の嬉し気な声に頷く。
俺の頭が上がったのに安心したか、この方は静かに俺へと歩み寄って来る。

一歩、また一歩。

花の香が近くなる。

一歩、また一歩。

愛しい息遣いが寄る。

そして最後の一歩。

この背が温かくなり、細い両腕が後ろから首へ回される。

 

 

 

 

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7 件のコメント

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    さらんさま、涙ぼろぼろで読みました。
    今も鼻水が止まりません(失礼)
    来世は男の人にこんな挨拶してもらえるような女人に
    なりたいです。
    心に染みました。
    ありがとうございます^^

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    ヨンの想いが、凄くて読みながら涙がでました
    なんて凄い想いなんだろう、何にも左右されず真っ直ぐな想いが、どうかウンスの御両親に届きますように・・・

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    ヨンのご両親へのご挨拶、お詫び、誓いに泣けました。
    二次小説読んでて、初めてです。
    今朝のお話を読んで、その後仕事に行くまでの間、また録画シンイ観てしまいました!
    やっぱりさらんさんのヨン最高です!

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    ヨンの精一杯 
    御挨拶、御詫び、誓い。
    涙が出てくる
    それを 聞く ウンスも
    両親に向けて 同じように 呟いてるんでしょう
    背中のぬくもりが 幸せを感じさせるわ
    狐雨… 虎が結婚するのね。(゚ーÅ)

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    サラン…さん、いつも、ドラマの続きそのもののような男らしいヨンを描いてくださり、ありがとうございます。確かサラン…さんは、ウンスと運命的な出逢いをしたときのチェヨンと同い年だったような・・。そのような年代でいらっしゃるのに、深く壮大で、豊かな心情を表現したお話を書いてくださることに感動しています。今日のヨン・・、泣けます!どこまでも誠実で!!ヨンの心は、きっとウンスのご両親に届きます!歴史では、ヨンの戦いはまだまだ続きます。でも、祠の前でウンスを大切にすると誓ったのですから、二人の幸せがずっと続くと信じています。サラン…さんも、体に気を付けてお過ごしくださいね。

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    さらんさん、とてもとても素敵なお話をありがとうございます。
    こんな風にきちんと、誠意のある挨拶をしてくれる人が娘の相手だということをウンスの両親が知ったら、きっと一も二もなく、二人の結婚を賛成してくれるに違いありません。
    さらんさん、私は最近思うのです。
    「正しいこと」が一番強いのだと。
    ヨンは 素直に自分の非を認め、その上できちんと筋を正そうとしていて…、その真っ直ぐな姿勢は何ものにも替え難く、ほかから何を言われても折れない強さがあるのだろうなあと…。
    さらんさん、この後はいよいよ婚儀ですか?
    待ちに待ったんですよ~!という感激はもちろん有りつつ、その一方で、まだまだ ちょっとした“もどかしさ”も味わっていたいような気がして。複雑です(@_@;)。
    さて、夕方から小雨が降ってきましたね。
    ヨンとウンスを祝福する 優しい雨…。
    といっても、お風邪には気をつけてくださいね。

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