威風堂々 | 10

 

 

慌ただしく階下が騒めく。
来たな。

あ奴の私室へ、吹抜脇の階を駆け上がる。
待っておれ。

部屋の扉が勢い良く開く。

部屋内のあ奴を、真直ぐに見る。

「よう」
声を掛けると何故か叔母上は気が抜けたような顔で、見据えていたこの顔からふいと目を逸らした。
何なのだ。あの方も、叔母上も。
「何の用で呼び出した」
「あの方の事でな」

問うた声に返すと、叔母上が怪訝そうに此方へと目を戻す。
「・・・医仙が、どうされたのだ」
「急くな。座ってくれ」

この声に叔母上は勢い良く三和土へと腰を下す。
何も言っておらんうちから、何故それ程荒れている。
「叔母上」
「何だ」
「あの方は、最近どうだ」
「・・・・・・・・・・・・」

やけに長い沈黙の後、叔母上が改めて問う。
「どうとは」
何をこれ程、警戒している。
「叔母上から見てどうだ。元気そうか、媽媽のご回診の折」
「お元気だ。で」
「嘘を」

嘘を吐いている、恐らく俺の為だ。聞いてやってくれ。
そう続けようとした声を遮り、蓋をするような声がする。
「嘘であるわけがない」

僅かに早すぎる返答に思わず眉が寄る。
「・・・叔母上」

あの方の気鬱を軽くする話し相手を頼むつもりが、どうやら藪を突いて蛇を出したか。
嘘を吐いているのはあの方だけではないらしい。
「正直に、言ってくれ」
俺の為の嘘に、叔母上までが絡んでいるなら。
そんなにまでして、用意周到に隠し通そうとする何か。

女だてらに長く皇宮に身を置き、皇宮の事情は隅々に至るまで、その情報網に疑いようも無い。
皇宮にチェ尚宮ありと謳われ、頭の切れる事は俺も認める。
冷静沈着に事を進め、人を見る目も動かす声もある。

その叔母上が俺に見透かされる程に、こうして焦る事。
「俺が何をした」
「ヨンア」
あの方が嘘を吐き、叔母上がそれを庇う。
俺が話相手を求める前から既に二人が結託していたなら、話の筋は全く違ってくるではないか。

何だ、この二人がこれほど隠し通そうとするなら。
俺にそんな重大な何かがあるものか。
下手をしたなら、叔母上まで俺に気を遣うはずがない。
飛んできて頭を叩かれるのがせいぜいだ。

三和土に腰掛ける叔母上の横にゆっくりと座り込み、敢えて其方は見ずに膝の上の掌、指で膝小僧を叩く。
その指に叔母上の視線が当たるのを横目で充分感じつつ。

普段の叔母上であれば、そこまで注視はせん。
何かに勘づかれたのではないかと、思うからこそ見る。
此方に気付かれて困る事。二人が其処まで不安に思う事。
「・・・まさか」

俺の低い呟きに、叔母上が目を当てる。
その叔母上へと眸を当て、ゆっくりと口にする。

「あの方に、他の男など」

その瞬間。
横の叔母上の速手が力任せに思い切りこの頭を叩いた。

 

 

 

 

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2 件のコメント

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    さらんさん、頭脳明晰で冷静沈着なコモでも、甥のこと、甥の大事な嫁のこととなると、嘘がつけなくなるのですね…^_^;
    でも、だからこそウンスも、親代わりのように頼れるのですよね❤
    蛋白な物言いの二人ですが、ひと言ひと言がどれも素敵です。
    それにしても、誰かほかに男ができたなんて…(ノ゚ο゚)ノ。
    頭をはられても仕方ありませんね(→o←)ゞ
    でも、こういうシーン大好きです。ありがとうございます❤
    さらんさん、初日のセトリご覧になりましたか?
    私はいよいよ明日! 明日、初びっべんです(#^.^#)

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    男性あるある?それともチェヨンあるある?
    俗に言う、保存と上書き保存の差?
    ウンスが口に出さない分、根が深いかも。
    間に入ったしまった叔母上、お気の毒です。

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