2016 再開祭 | 소개팅ソゲッティン・結 後篇

 

 

回廊で擦れ違う武閣氏は、頬を染めて頭を下げる。
そしてこの方はその立ち姿に手を振ると
「約束通り、2日後ね?」
「時間も前に言った通りで大丈夫?」

そんな風に声を掛ける。武閣氏らは横の俺を気に掛け、声を返せずその視線で此方を指している。

「ああ大丈夫。もう隊長は知ってるから、今からチェ尚宮様にお願いに行くの」
この方の諦め半分の声音を聞いてようやく心から嬉し気な笑みを浮かべ、武閣氏は一斉に頷いた。

「他の皆にも伝えます」
「皆楽しみに指折り数えております」
武人とはいえ女の身。途端にこの一角が華やかな気配に包まれる。

「御存知という事は・・・」
その武閣氏の一人が遠慮がちに、俺ではなくこの方へと尋ねた。
「もしや、隊長もご参加ですか」

その声に鳶色の瞳が懇願するように俺を見上げる。
出るなと言う事か。それとも出ろと言う意味か。
何れにしろ心は決まっている。
この方の返答を待つ前に、大きく頷いて見せる。
「ああ」

その返答に回廊の一角はまるで花でも咲いたよう今日一番の華やかさに包まれる。
そしてその中誰より鮮やかに咲くはずの俺の黄色い花が、萎れるよう頭を垂れた。

 

*****

 

「医仙」
坤成殿への廊下前。
いち早く俺達に目を止めた叔母上チェ尚宮が一声呼んで、扉の逆に立つ武閣氏へ目で合図を送る。
その目を受けた武閣氏は無言で頷き一歩左へ、それに合わせ他の者が半歩ずつ立ち位置を変える。

チェ尚宮はまだ武閣氏隊長の顔で俺達へと近寄ると
「此方へ」
そう言うが早いか無言で回廊を突き進む。

瞬時戸惑うように鳶色の瞳が頼りなげに俺を見上げる。
大丈夫だと頷き返し、俺は足早にその背の後に従った。

大丈夫だ。例え叔母上とはいえ取って喰いまではすまい。
そしてもしも騒動になるなら、俺が必ず矢面に立つ。
心配せずにこの背の後で、あなたは黙って待っていれば良いから。

肚を決めて追う背後、長閑な春の陽は心裡も知らず、三つの影を柔らかく石の床に映す。

 

「どういうお積りですか、医仙!」
つい先日も向き合った回廊隅。
たった数日で新緑は勢いを増し、頭上を覆うほど空へと枝を伸ばしていた。

濃い緑の香り。それを運ぶ風の温かさ。
この方が横に居ると全てが立ち上がり眸に、心に訴える。
生きている。これほど強く生きている。
その中の叔母上、いやチェ尚宮の厳しい叱責の声に、この方を背に一歩前に出る。

「責めるのは筋違い」
「・・・隊長」
「この方は我等より上位の方。チェ尚宮とはいえ無礼は許されぬ」
「ふん、成程な。そう来るか」

チェ尚宮は苦く笑うと、次にこの方でなく俺に照準を定めたようだった。
それで良い。俺にかかって来い。

「しかし医仙のお考えが、皇宮内を乱した事には変わりない」
「乱してなどおらぬ」
「・・・過日はそうした話だったと記憶するが」
「医仙が持ち掛けたのは任務の話ではない。役目を終えた兵らが皇宮外で何をしようと自由」
「ほう。で、医仙は奴らと皇宮外で何をされるのか」
「そげってぃんを」
「だからそれが一体何かと」
「合コ・・・みんなで仲良くなりましょうって集まりです、叔母様」

黙っていれば良いものを。
春兎が穴から顔を出すよう俺の背から顔を覗かせ、この方が正面の叔母上を見た。
「仲良く・・・」

叔母上は面喰ったように、この方と俺の顔を比べ見る。
「市井で酒が入って騒ぎを起こせば、我々だけの問題では済まぬ」
「俺が同席を」
「おぬ・・・迂達赤隊長が、同席」

さすがの叔母上、いやチェ尚宮も声を失い俺を凝視する。
「どういう風の吹き回しだ」
「さすれば奴らも騒ぎを起こさん」
「それは・・・まあ、確かにそうだろうが」

此処まで言えば黙り込むかと思ったが敵も然る者、一筋縄ではいかん。
チェ尚宮は眦を決し、明らかに俺でなく背に庇うこの方を透かし見て声を飛ばす。

「では、そなたが全て責を負うのだな」
「ああ」
「其処で新しい女子を探す心積りか。良い事だ」
「・・・何」
「そういうものなのだろう。ソゲッティンとかいう会は」
「馬鹿な!!」

思わず大きな声が出る。ふざけるな、言うに事欠いて。
叔母上でも許せぬ事がある。
この方が同席のこの場で、その耳に何を吹き込む気だ。
他の女だ、新しい女だと。
そんな女が探せるなら疾うに探している。
典医寺で未練たらしく座り込んだりせず。

「そうなの?やっぱりそうなの?!」
見た事か、背に庇ったはずのこの方から次の一手が飛んで来る。
振り向き釈明すべきか、それとも目前の敵を先に片付けるべきか。

「おかしいと思った、急にソゲッティングに参加するなんて言い出すんだもの。
やっぱり言った通りじゃない、怒ってるんでしょ?それならハッキリそう言えばいいのに!」
「医仙」
「まあ良いでしょう。迂達赤隊長が全て責を負うと申す以上、一度きりなら見過ごします」
「叔母上!」
「武閣氏をお願い致します、医仙。ついでにこの者に善き相手を。
崔家の後継です。いい加減そろそろ身を固めてもらわねば、御先祖に申し訳が立ちません」

叔母上は何食わぬ顔で言い放つと、俺達を振り返る事なく脇を通り過ぎこの場を後にする。
擦れ違いざまの横顔が、見た事もないほど愉し気だったのは錯覚か。

回廊隅に残されたのは茫然とその背を見送る俺と、怒りに任せ髪を逆立てる山猫のような、短い息を繰り返す方。

一体この怒りをどう納めるべきかと、俺はその息を聞いていた。

 

 

 

 

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5 件のコメント

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    あ~ぁ、言っちゃった。
    ヨンも、そげってぃん に参加するって。
    ウンス……、ガクッ…………
    ウンスの頭には、ヨンが加わるって計算外よね。
    ヨンが、他の…、女の子と…………ダメダメ!
    でも、武閣氏さん、♪♪♪みたいよ。

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    今晩は、ヨンの前に、ズラリと並ぶかもね。キレイ所がヨンは、鼻の下のばすのか?その時ウンスは、見て見ぬ振りするのかなぁ?複雑な想い !?ウンス頑張れ気を引き締めて 。いいねが、押せません。ごめんなさい。

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    ウンスの心が身体に風が吹き込んでる!
    墓穴ほってるウンス…(゜m゜;)
    私まで落ち込んでしまった…
    助けてヨンア(/≧◇≦\)

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