【 소개팅 ソゲッティン 】
歩哨の並ぶ回廊、兵舎の吹抜けの影、鍛錬場の隅。
視線を投げれば直立不動に直り、何事もないかのよう正面を見て姿勢を正す男らの気配。
気に喰わんと鼻頭に皺を寄せ、それでも確たる証拠がない以上は何も言わず通り過ぎる。
だが眸に余る。浮足立ったその気配が。
*****
坤成殿の廊下、行き交う皇庭、王妃媽媽の御部屋前。
目の前を過ぎる私に深く頭を下げ、前を過ぎた途端に再び漣のように交わされる小声。
その桃のように染まった頬。
女人ばかりを集めた武閣氏で、余りに厳し過ぎる隊則は時として気骨を削ぎかねぬ。
平時には多少の四方山話も許そう。
それでも第一義は任務。任務あっての武閣氏だ。剣を持つ手が疎かになるでは困る。
*****
背後には力強く茂り始めた新緑を抱く木々。その向こうには広々と広がる皐月空。
石の腰壁に凭れ、春風を深く吸い込む。悩ましい一件がなくばさぞ快いだろうに。
いや、逆か。この一件がなくばこうして足を止め、春を楽しむ事もなかった。
朝陽の降る回廊の端。周囲の喧騒から逃れて今一度、呼び出した相手と向かい合う。
「おかしい」
俺の声に先方も不満げに鼻を鳴らして頷いた。
「迂達赤もか」
此方だけではないのだろうか。
先方も胡散臭げに眉間に縦皺を寄せ、険しい顔で押し黙る。
「武閣氏もか」
「言葉の端々から察するに」
「・・・何だ」
俺に一歩先んじて対処しているのは、一日の長か年の甲か。
突けば藪蛇になりそうで、飛び出そうな軽口を押さえ込む。
黙り込んだ俺を良いことに、先方は苦い口調で吐き捨てる。
「ソゲッティンとは何だ」
「・・・何だと」
「ソゲッティン、らしい」
「そげってぃん」
「怪しいと思わぬか」
聞いた事もない言葉。
そんなものの出処は高麗広しと言えど、一箇所以外には思い当たらない。
「絡んでるな」
「まあ・・・あの医仙に限り、妙な奸計などではない事は判っておる」
「当然だろう」
幾ら浮足立っているとは言え、政や王様に関わる大事なら迂達赤の奴らが俺に黙っている筈がない。
それ以前に、どれ程突拍子もないとはいえ、あの方が俺達を裏切り寝首を掻く真似をする訳がない。
そげってぃん。
先ずは突き止めねばならぬだろう。素直に吐くかは別として。
「判れば教えてくれ」
「お前もな。何れにせよ近衛がこのように浮足立っていては、他軍他営に示しがつかぬ」
「ああ」
互いに頷き、左右へ分かれる回廊隅。
同じ近衛を率いる立場、まして互いに気心の知れた叔母甥として、俺は先方を信頼していた。
口は悪く手は早く、しかし己の選んだ主君の為には命を懸けると。
規律を乱す者は例え己の腹心であろうと右腕であろうと看過せず、相手の心根を正すと。
まさか武閣氏隊長、王妃媽媽付尚宮長が、叔母上であるチェ尚宮があのような決断を下すなど。
その時の俺は夢にも思わなかった。
*****
「おい、聞いたか」
近頃の迂達赤の兵舎隅には、鎧を着込んだ鼠が隠れ住む。
寄ると触ると鼻面を突き合わせ、此方に隠れ囁き交わす。
天井裏。壁の穴。声を頼りに覗き込めば、尾だけが見える。
掴まえようにも警戒心が強く、あっという間に逃げていく。
暫し見て見ぬ振りをする。
警戒心が緩み囮の餌に喰らいつくまで。
暢気に餌を齧り始めた処で、一網打尽にしてやる為に。
「ああ。聞いた。ソゲッティンだろう」
「何しろ他言無用だそうだ」
「そうだってな」
「余計な敵は増やさんに限る。内密に」
叔母上から予め聞いておいて助かった。
囁き交わす奴らの声には、確かにその天界語が必ず混ざっている。
そげってぃん。それが一体何を意味するのか。
敵を増やさぬ。一体何の争いを始める積りか。
医仙である方が迂達赤と武閣氏を率い一戦交えるとは到底思えん。
天界の医の術はともかく、戦には素人だろう。
何故こんな下らん瑣末事に耳を欹て振り回されねばいかんのか。
腹立たしい思いで大きな音、兵舎の土床の埃を立て踏み込む俺に
「あ、隊長!」
「お帰りなさい、隊長!」
「お疲れ様です!!」
そう言って居合わせる奴らがそれぞれ頭を下げる。
その列に迎えられつつ、下げた頭の中に探す人影。
人一倍の背丈と、槍で鍛えた上げた肩の線を見つけ
「来い」
それだけ言ってその肩を叩き、振り返らずに吹抜けの階を上がる。
肩を叩かれた男は
「はい、隊長!」
と声を上げるとこの背を追い、一足飛びで階を従いて来た。

独り者ぞろいの迂達赤たちと武閣氏のお姉さま達の合コンをウンスが内緒で企画。
それがひそひそ口コミで広がって、密かに盛り上がる王宮内をお願いしたいです。
それがバレて、チェ尚宮に大目玉をくらうウンス。
でも、内心は喜んでるチェ尚宮。
なんて、ウンスのおせっかいに振り回される王宮内なんてどうしでしょうか?
浮き足立った迂達赤に激怒するヨンとか、理由を考えて悶々とするヨンとか、予想がついて、いたたまれないヨンとかとか、そんな裏話も是非。
(にゃんこさま)
皆さまのぽちっとが励みです。
お楽しみ頂けたときは、押して頂けたら嬉しいです。
にほんブログ村
今日もクリックありがとうございます。

SECRET: 0
PASS:
春だし…
出会いの春だし…
みんな お年頃だし。
浮かれることもあり。
張り合いが出るかもだし♥
( ´艸`)
SECRET: 0
PASS:
切り番ヨン…で、偶然
春真っ盛りに当たられたお話!
迂達赤の若い男性兵士と、
武閣氏の可愛い女性たちの…
ウンスらしいですよ。
楽しみ♪
SECRET: 0
PASS:
またウンスの暴走が
始まりましたねーー
でも楽しい暴走ですよね❤
ヨンと叔母様。
どう動くのかな?(笑)