2016 再開祭 | 玉散氷刃・序

 

 

【 玉散氷刃 】

 

 

春の陽が上がったばかりの窓の外、長閑な鳥の声が響いていた。
迂達赤隊長チュンソクは朝の鍛錬に備え、自室の中で鎧一揃えを着込む。

最後の背紐を結び終えると手近な椅子に腰を下ろし、その座面の端に踵を乗せて軍沓の具合を整える。

そうしながらチュンソクは、窓越しの春景色に眼を細めた。
良く晴れている。今日もまた長い一日が始まる。
沓の具合が良くなければ、直に擦れて血が滲む。
チェ・ヨンの鍛錬を受けるには、身支度一つにも気を遣う。

長年の習慣で身に着いた一つ一つを熟しながら、ようやく全ての支度を満足いくまで整え終えた時。

力任せに開けられた観音扉が、壁に烈しく当たって跳ね返る。

普段ならチュンソクがどれ程耳を澄ましても、足音どころかその気配すら消しているチェ・ヨンの姿。
その男が大きな足音を立て、出迎えの為に慌てて椅子を立ったチュンソクの許まで真直ぐに寄る。

吹き上がる怒気が、近寄る男の周囲を陽炎のように揺らす。
チュンソクはその不穏な空気に息を呑み、近寄るチェ・ヨンへと慌てて頭を下げた。

長く住み慣れた迂達赤兵舎の己の部屋が、チェ・ヨンの機嫌一つでこれ程居心地の悪い場所になる。
チュンソクは落ち着かない心持で、目前のチェ・ヨンを凝視する。

互いの部屋を行き来するのに、扉を叩いて伺いなど立てない。
それは迂達赤兵舎に於いて今や半ば暗黙の慣習となっていた。

兵舎上階のチェ・ヨンの私室を訪う時ですら、特段の許可も了承も不要だった。
貴族子弟の隊員が多い迂達赤では、育ちの良さからそうした礼儀を重んじる者は多かった。
だがその中でも随一の良家出身であり、隊を束ねるチェ・ヨン自身が気にせぬのだから、隊員も倣う。
大雑把な家族のような気楽さが、やがてそれぞれの出自の身分差を超え迂達赤の結束を固めて行った。

しかしその垣の低さがこうした時は不便だと、チュンソクは思う。
いきなりこんな怒気を纏った様子で急襲のような来訪を受けても、深い怒りの理由の見当がつかない。

チュンソクは何につけ、要らぬ事まで考え込む質だと己でもよく判っていた。
チェ・ヨンの補佐を長い間恙なく勤め上げて来られたのも、その慎重さと几帳面さの賜物だった。

チェ・ヨンのような統率力や瞬発力には欠けるが、ともすれば独走に偏りがちなチェ・ヨンの脇を固め、隙を埋めて来た。
何方が欠けても今の迂達赤はない、隊を支える太い二本柱だ。
しかし主柱であるチェ・ヨンの何かを思い詰めた様相に、考える間もあらばこそ、珍しくチュンソクの口が勝手に動いた。
「何があったのです、大護軍」

そしてチェ・ヨンは怒りを押し殺した声で、いつものように短く言った。
「主力を集めろ、今すぐに」

 

 

 

 

【光るメスと白銀の鬼劒】
は、いかがでしょう?

戦いの聖女が煌めき、ウンスのメスが命を紡ぐ。
安堵する合間を闇が陰り、護るべき宝珠(ウンス)が奪われ、怒りと慟哭が駆け巡る、彼(ヨン)の身体に納めきれない怒りが、白銀の劒を呼び起こす。

どれほどに、大事な大切な宝珠の感謝と奇跡を、心に刻み、願いかけて聖女の奪還を…(^_-)

なんて、どうでしょう。(⌒‐⌒)

鬼劒を基本に、考えちゃいました。(;>_<;)
すこーし、ウンスもかっこ良くしたかったんです。
だって、現代女性です。もん。(kanataさま)

 

 

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2 件のコメント

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    登場から、ヨンの怒りが最高点に達しているみたいで、読む方も怖い。
    何事かな。
    ウンスの危機…が迫っているの?
    ヨンが怒るときは、ウンスに関わることが多いから。

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