「大護軍が眠り始める前の日、敵と出くわしました。市中の倉を焼き討ちしようとしてるのを俺たちが見つけて。
そこでせり合いになったんです。相手は統率が取れてなくて、揉み合いになって」
テマンが震える声で話し始めると、その時の事を思い出したのかトクマン君も横から口を挟んだ。
「大護軍から向かって来ない限りは斬るなと言われていたので、俺達もなるべく斬らないようにしてたんです。
倉の中で大勢でぶつかり合ってるところで、床に倒れ込んだ敵にテマンが足を取られて」
テマンはトクマン君の声にその時の事を思い出したのか、無言で悔しそうに頷いた。
トクマン君はそんなテマンに気を使うように、小さな声で話を続ける。
「態勢が崩れて、そこに他の敵が突っ込んで来ました。テマンを助けようとした大護軍とぶつかって。
あの大護軍の肩の痣はその拍子に出来たんです。傷は、テマンが抜いていた手刀が掠って」
「それならよかったー」
わざとのんきに上げた私の声に、テマンが真赤な目で私を見た。
「で、でも、俺のせいで」
「せいって?刀が掠って寝ちゃうならみんな今頃ぐうぐうよ。テマンが敵に切られたら、一番悲しいのはあの人でしょ?
それにただぶつかっただけで、アク・・・事故みたいなものだもの。
心配したのは肩を切った刃物に毒が付いてたら、って思ったの。その毒の影響で寝てるなら怖かったけど」
その声にキム先生も太鼓判を押すように頷いた。
「毒物は出ておりません。大護軍がこんな風に眠り始めて、私も最初に疑いましたから」
毒のプロのキム先生まで言うなら確かよね。これでもう1つ、不確定な不安要素が消える。
「テマナ、2人でぶつかった時転んだりしなかった?頭や首を、どこかに強く打たなかった?」
「ありえません、大護軍が戦場で転ぶなんて。俺も大護軍の肩にはぶつかったけど、頭や首にはぶつかってません」
「敵とのその衝突は、どうやって終わったの?」
「全員捕縛し、保勝軍の軍衛に引き渡しました」
チュンソク隊長が頷いて、話の流れを引き取った。
「あの人は、その場から歩いて帰れた?」
「無論です。大護軍に万一の事でもあれば、絶対に誰かが直ぐに気づきます」
外傷はテマンとぶつかった傷。受傷時の状況は分かったけど・・・
「あんな風に眠り始めたのはいつ?」
「その焼き討ちを未遂に終えた日、この宿に戻ってからです」
「いきなり昏倒した?」
「いえ。夕餉を終え、保勝軍との合同の翌日の軍議の後寝所に。それまでは何も変わらず、いつも通りのご様子で」
それを頷いて聞いていたテマンが言葉を添える。
「夜じゅう部屋の外にいたけど、大護軍は何も変わらなかったし誰も来なかった。でも朝になっても起きなくて」
トクマン君もそのテマンと目を合わせて頷いた。
「宿の外にも中にも歩哨がいます。誰かが夜襲を掛ければすぐ分かります。昼間の揉め事の後で充分注意してました。
拍子抜けするくらい静かでした」
最後にキム先生が断言する。
「私も他の迂達赤の方々から言われて、チェ・ヨン殿の傷をそこで一度診ております。
その時点で既に出血は全くありませんでした。脈も変わらず、腕の動きや呂律や動作も異常はありませんでした」
4人とも見当もつかないって顔で首を捻るばかり。
「大護軍は医仙とお会いになる前、戦場でもっと酷い手疵を幾度も負っております。それでもこんなに眠り続ける事はなかった」
チュンソク隊長はそう言って、ベッドの上のこの人を見た。
その言葉にテマンもトクマン君も深く頷く。
「そうなのね」
「以前のように、ただ寝扱けておられるなら安心なのですが」
「寝太郎時代みたいに?3日間ぶっ続けで寝て、起きたら3日分のご飯を食べて・・・」
「ええ。ただ、医仙とお会いになってからの大護軍は一切そんな様子はなかった」
「うん」
確かにあの頃、迂達赤のみんなに聞いた。
俺たちの大護軍は3日間寝続けます。そして起きたら3日分の飯を食います。
それを聞いた時はナルコレプシーまで疑ったけど、その場合には夜寝て、昼間一旦覚醒した状態で眠気に襲われるのが一般的。
数日間眠り続けるならクライン・レビン症候群もあるけど、予兆なんてなかった。
第一私と出会って過眠が収まったなら、当時の症状は中枢性の過眠症より、精神的なストレスでの逃避行動だった気もするし。
そして今回みたいな状況で、私が帰りを待ってるって知ってるなら、この人なら意地でも起きて戻って来てくれるはず。
あらゆる可能性を仮定しては立証できず、結局理由が分からない。
無言の私の視線を追って、みんなの心配そうな視線がベッドの上のあなたに注がれる。
ねえヨンア。どうしたの?どうして起きてくれないの?

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なぜかしら
なぜ起きてくれないの?
夢で ウンスと会ってるからかしら?
夢より 本物のウンスの方がいいのにね。
おねぼうさん おきてくださーい