【 瑠璃唐草 】
目の前に並ぶ尚宮オンニの列。
その先頭の向かって左端、ひと際厳しい顔の叔母様が私をじっと見てから、ゆっくり口を開いた。
「・・・医仙」
「は、はい」
叔母様は宮中では絶対に、そしてプライベートでもよっぽどのことがなければ、私の名前を呼ばない。
いつも通り少し堅苦しく呼ばれて、思わず少し緊張して、私は唾を飲み込んで頷いた。
「本日より私ども尚宮が、医仙の御教育に当たります」
「はぃぃ?!」
叔母様の一言に尚宮オンニの列が、一斉に揃って深々と礼をする。
そして響き渡る私の異論の叫び声は、見事なまでに無視された。
*****
「叔母様?あの」
「チェ尚宮です、医仙」
「チェ尚宮の叔母様、あの」
叔母様ははぁぁぁ、と深ーく長ーい溜息を吐くと、顔を上げて私を見つめ返した。
典医寺のテーブルの向こう、他に2人の尚宮オンニが同席する部屋の中。
朝から始まった勉強会は、窓からの陽が高くなっても終わる気配は全くなかった。
いったんぞろぞろとやって来た他の尚宮オンニは、今後の顔見せだったんだろう。
挨拶が終わると、叔母様たち3人を残して部屋を出て行った。
そんな中まずは一番お話しやすい叔母様を呼んだものの、どこから聞けばいいのか。
そんな迷いがその先の言葉を詰まらせる。
叔母様は私を見て、先を促すように尋ねた。
「何でしょう、医仙」
「何で突然、こんな勉強会の開催を」
「畏れ多くも、王妃媽媽の思し召しです」
そのお名前に他の尚宮オンニは頭を下げたままで聞き入り、そして私は意味が分からずに首をかしげる。
「どうして媽媽が」
「それでございます、医仙」
「え?」
叔母様はきちんと背筋を伸ばすと
「宜しいですか、医仙。現在宮中には王妃媽媽と上監媽媽、つまり王様がいらっしゃいます。
何方の媽媽をおっしゃられているのか、正しくお伝えください」
「だって、今まで一度もそんな」
「それは医仙が、王妃媽媽の御体のみご拝診されていたからです」
「これからもそうでしょう?だって王様にはキム侍医が」
「おっしゃるとおりです。例え医仙とはいえ、玉体を拝診するのはまず御医と、宮中法度で決まっております」
「じゃあ何で今さら、王妃媽媽とか・・・」
チェ尚宮の叔母様は、私の質問に悔し気にきりりと奥歯を噛んだ。
「それでは得心のいかぬ方々が居られるようですので。僭越ですが王妃媽媽も、此度はそれを御憂慮あそばされるご様子」
「うーーん」
最高敬語で舌を噛みそうな叔母様の言い回しに、思わず唸る。
「つまり私の言動が問題っぽいわけですか?媽媽・・・王妃媽媽に、何かご迷惑になりそうとか?」
「決してそういうわけではございません」
「じゃあ、あの人の?」
宮中は本当にTVの歴史ドラマみたいな序列社会があって、目上の人には軽々しく口もきけないし、もちろん気軽に呼び捨てなんて絶対にできない。
だけどあの人は出逢った時には迂達赤の隊長だったし、再会した時にはもっと偉くなってた。
歴史を覚えてるから、今よりもまた昇進するのは分かってはいるけど。
どうにもこうにも私にとっては愛する相手があのチェ・ヨン将軍って事だけですら、実感がわかないんだもの。
「医仙」
そんな戸惑う私は、叔母様に厳しい口調で呼ばれてしまう。
「は、はい」
「その “あの人” という呼び方から、まずはお改めください」
叔母様は眉間に一本深い縦ジワを刻んで、無情に首を振った。
「えぇぇ?!」
「現在は迂達赤中正大夫大護軍崔瑩、が正式名称となります」
「う、迂達赤、何ですって?」
「・・・追々慣れて頂ければ結構です・・・」
出来の悪い生徒に呆れた叔母様は、もう一度溜息を吐くとこっちに向かって身を乗り出した。
「”あの人”に恥をかかせたくなくば、石に齧りついても付け焼刃でも、一先ず必死で学んで頂きます。御覚悟を、医仙」

おばさま厳選の厳しい尚宮さま軍団が
ウンスさんに・普通の奥方指南・したらどうなるでしょう編お願いいたします!
あまり厳しいと、大護軍に返り討ちされるかも?
画像認証44・・・です。小文字打てるかな(汗)
ヨン番下さい♪♪(kinsi-ginsiさま)
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うわ~
漢字が苦手だと 書いて覚えるとかできないし
キツイかも
この調子じゃ
おしゃべりウンスも 無口になちゃいそう
トホホ… 頑張って
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ウンスさん、頑張れ!
ため息だけで心配したヨンが駆けつけて来そうです
時空を超えて、毎日、高麗にエールを送ります。
さらんさまに心より感謝申し上げます!
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