2016 再開祭 | 眠りの森・序

 

 

【 眠りの森 】

 

 

泣かないでくれ。

今は、あなたの涙を拭いてやる事が出来ない。

泣かないでくれ。

あなたを感じているのに、瞼が鉛の如く重い。

泣かないでくれ。

両眸が再び開くまでの、ほんの僅かの間だけ。

長く待たせたりはしない。其処に居ると判る。
温かい指も、震える呼び声も、その花の香も。

約束する。あなたを絶対に、独りにはしない。
必ずすぐに起きるから、どうか笑って待っていてくれ。

 

*****

 

私はこの部屋を知らない。でも絶対見覚えがある。

白く霞んでいるのは、大きな窓から入る光のせい?
そんなに明るいのに、部屋の中に温度を感じない。

私がそれに何の不思議も感じてないのはどうして?

暑くもなく寒くもない、ただ窓の外が明るい部屋。
殺風景な部屋の中央の床の上、まるで誰かが忘れた人形みたいに、長い手足を放り出している影がぽつんとあった。

静かにその影に近寄って、床に膝をついて、顔を確かめる。

その瞬間に呼吸が止まる。

脳が動き始める前に、勝手に涙があふれて来る。

長い手足を放り出して、捨てられたマネキンみたいに床に転がる影。
確かめたその顔を、何回も何回もこの手で撫でる。

涙は雨のように、その静かに閉じた瞼に落ちた。
大切な体を抱き締めて、落ちていた頭を胸に抱いて、何回も何回もその大切な人の額にキスをする。

どうかお願い目を開けて。もう一度あの声で私を呼んで。

ヨンア。

私はこの光景を知っている。

─── ウンスさま。

ヨンア。

あの時とは違う。考えて。どこが違う?考えて。

「ウンスさま。ウンスさま!」

ひとりきりの冷たい寝台の上に飛び起きる。飛び起きた勢いで乱れた髪が、濡れた頬に貼り付いた。
ぼうっとした頭で一つわかること。貼り付いた髪が気持ち悪い。顔が濡れるくらいの大量の寝汗が。

「ウンスさま、申し訳ありません、失礼いたします!!」

まるで冷水のシャワーでも浴びたみたいに、冷や汗でびっしょり濡れたパジャマの背中。
脈拍を計るまでもない。心拍数が上がってるのが分かる。
過呼吸を起こさないのが不思議なくらい、短い息が切れる。
震える手で口を押さえて、その中に何度も呼吸を繰り返す。
落ち着いて。落ち着いて。大丈夫。

寝室の扉を開けて部屋に入って中の私を確かめてから、深々と頭を下げるタウンさんのこわばった顔。
分からない。分かるのは、とても嫌な夢を見ていたってこと。
夢のはず。だってタウンさんが開け放った扉の外はまだ暗い。

日の出の前、東の空がやっと薄い紫に変わり始めた時間。
さっきまでの知らない、でも見覚えのある部屋は明るかった。

殺風景な部屋の床の上に、人形みたいに横たわっていたのは。

「ウンスさま」
「・・・タウンさん?」

あり得ない事ばかりが起きている。どこまでが夢?どこまでが現実?
境界線が分からずに、呆然としたままタウンさんを呼んでみる。
そこにタウンさんがいるのは現実?それともまだ夢の中?

いくらあの人が留守だって、タウンさんが許可も得ずに勝手に寝室に入って来ることなんてなかった。ただの一度も。
いつものタウンさんなら気づいてくれる。私の様子が変だって。
ううん。それ以前に私が起きて返事するまで、絶対にこんな風に勝手に押し入ったりしない。絶対に。
「お着替えをお手伝いします。急いでお出掛けの御準備を」
「・・・おで、かけ」
「失礼いたします」
タウンさんはまっすぐ寝台の横まで歩いて来ると、そのまま床に膝をついて、ぎゅっと私の手を握った。

そして冷や汗にも気付いたんだろう。すぐに懐から手拭いを取り出して、私のおでこを拭いてくれる。
「ウンスさま」

拭きながら呼んでくれるタウンさんの声。現実よね? 拭いてくれてる感触がある。
きっと現実。そうに違いない。 悪い夢はもうさめたはず。

なのに何でこんなに現実感のない事ばかり起きてるの?
どうしてタウンさんはおでこを拭きながら、こんな至近距離の私から視線をそらしてるの?
どうして悪い夢を見てた私と同じくらい、タウンさんの手も震えてるの?

「大護軍が、お怪我をされました」

今までに聞いた中で一番現実感のないタウンさんの声に、私の呼吸はもう一度止まる。

 

 


戦場に向かったヨン
離れ離れで過ごす夜にウンスはヨンが致命傷を負う夢を見る(シンイの中で回想シーンに出てきたもう一人のウンスがお告げをする)
いてもたってもいられずに戦場のヨンの元へ
そこには致命傷とはいかずとも軽症負ったヨンの姿が
傷は深くないのに意識がなかなか戻らないヨン
そんなヨンに再び生を分け与える様なキスをしてヨンは目を覚ます
周りでその様子を見ていたウダルチは心配な気持ちとは裏腹に二人の見てはいけない姿にドキドキ❤️
後日、目を覚ましたヨンにまたまた空気の読めないトクマンにその様子を伝えたら 怒ったヨンにボコられる
トクマンくんごめん..(majuさま)

 

 

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4 件のコメント

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    あらら 嫌な目覚めね
    心配だわー
    ウンスを呼びに来るぐらいだから
    良くないこと… 
    いつものタウンさんなら
    大丈夫って 落ち着かせてくれるけど
    トーンが… イヤー (TωT)

  • SECRET: 0
    PASS:
    あのトックグンが仕掛けた罠の回の夢のシーンですかね
    あの時みたいな夢なら嫌でたまらない
    しかもそれが正夢になるとは
    ほら戦場までいくのさえ行かせたくないでしょ
    ヨン!起きなさい!ウンスを1人にしたら何するかわかんないよ(結局そこ)

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