2016 再開祭 | 三角草・序

 

 

【 三角草 】

 

 

「チャンヒヤー」
おどけた声で部屋の扉から、作って来た指人形だけを出す。
「チャンヒに会いに来たんだよ、今日はいい子にしてたかな?」

明るい日差しの中で、手にはめた指人形を動かしてみる。部屋の中から聞こえて来る楽しそうな笑い声。
「ウンス先生」

・・・まあ、バレてるわよね。でも今日はあくまで、この指人形キャラで押し通すわよ。
「ウンスなんて知らないよ。僕がチャンヒに会いに来たんだよ」
「こんにちは。来てくれてありがとう」

チャンヒは楽しそうに笑って、指人形にそう言ってくれる。
うん。チャンヒに付き合ってもらってる感じもなくはないわ。
でも笑って欲しくて、もうちょっとだけお付き合いしてもらう。

ミトン型の手袋に簡単な服を着せて、目鼻と髪をくっつけただけの簡単なものだけど、どうやら興味は持ってもらえたみたい。
部屋の中から、チャンヒは楽しそうに聞いた。
「初めまして。私はチャンヒです。あなたのお名前は」

部屋の中は見えない。
でもきっとあの子のことだから、きちんと布団の上に体を起こして頭を下げてるに違いない。
お名前?やだ。考えてなかった。

「うーん。僕はチャンヒの友達だからチャンヒに付けて欲しいな。どんな名前が似合うかな?」
「ううん、ええと・・・」
真剣に考え込んでいそうな部屋からの気配。
そして明るい声が答える。
「アンボク!」

アンボク。安復、かな?そうならちょっと辛い。いつもガマン強くて、絶対に弱音は吐かない子だから。
「アンボク、いい名前だね!じゃあこれから、僕たちは友達だ」
そんな気持ちを押し殺して、チャンヒの声に返事をする。
「うん!」

言ってくれる明るい声に背中を押されて、ようやく私の顔にも笑顔が浮かぶ。
その笑顔が消えないうちに、私は急いで部屋の扉からぴょこんと顔を出して奥を覗き込んだ。

 

*****

 

「天女!」
マンボ姐さんが叫びながらうちまで走って来たのは3か月前。
雪が降ってる縁側であなたと一緒に庭を見ていた私は、あわててあなたの膝から飛び降りた。
あなたは不満そうにノドの奥で低い声で唸ると、渋々って顔で空になった膝を叩いて、縁側で立ち上がる。
マンボ姐さんの対応に玄関に出たはずのタウンさんが、コムさんと姐さんと一緒に大急ぎで廊下を走って来る。
コムさんの大きな腕の中に軽々と抱かれた、小学校低学年くらいの小さな女の子。
その瞬間、私はこの人と顔を見合わせる。
「治療道具を」

あなたはそれだけ言って、ベッドルームへ廊下を急ぐ。
そして3人とすれ違う瞬間に
「一先ず居間に」
って、誰にともなくそれだけ言った。

 

 

 

 

ある日ウンスは、侍医からも
「治療法が無い」と言われた
幼い患者を診察する。

聡明で健気なその小さな患者に接し、
以前助けることのできなかった慶昌君を
思い出すウンス。

診察した結果、カテーテルや器具があれば、
設備や薬があれば、すぐに治せる病いと
判じたウンス。
あと少し遅く生まれてきたら、
助かっていたかもしれないのに…。

その悔しさを思わず侍医と
ヨンに漏らしてしまったところ
患者の家族が偶然、立ち聞きして…。
折しも偶然、天門に小さな穴が開く。
未来に行けるか、過去に飛ばされるか
大きな賭けでもあるが、
両親、本人、ウンス達それぞれが
大いに悩んだ結果、
ハングル語のカルテを持たせ、
幼い患者一人を、未来に託すことにする。

結果は…?

同じ別れでも、どこかで元気に笑っていて
くれるだろう…と思えるものなら、
そこに希望が持てるような気がします。(muuさま)

 

 

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2 件のコメント

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    さらんさま♡
    楽しみにしていたマイリク、筆を進めていただき、ありがとうございます。
    これまでのお話も 全てが素晴らしく、毎日ワクワクしながら拝読させていただいてましたが、この回もさらんさんがどんな風に腕をふるわれるのか、ドッキドキです。
    寒さ厳しい日が続きますので、どうかご自愛されつつ お話を生み出してくださいね。

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