2016 再開祭 | 薺・序

 

 

【 薺 】

 

 

何故女人の声とは、ひそめる程気に掛かるのだろう。
いつも賑やか過ぎる方々だから、尚の事気に掛かる。

連日の寒の、ようやく少し緩んだ昼。

庭に溢れる冬日が窓から射し込み、それに照らされるお二人の姿は、和やかな春景色そのものに見える。
まるで早春の陽だまりに咲く小さな春告花のように。

女人同士光の中で額を突き合わせ笑い合い、こちらに聞こえぬ小声を囁き交わす。
その様子は孵りたての黄色い羽の雛が、巣箱の隅で身を寄せ合う姿にも似ている。
窓の外に深々と積もった雪の面が、その光を受けて眩しい。
目を細めると何を勘違いしたのか、横から暗い溜息が聞こえた。

「そんな目で見るな。此方が照れる」
「・・・いえ、決してそういうつもりではなく」
その声に今までこそこそと囁き合っていたお二人が御顔を上げ、こちらをじっと見る。
黒い瞳と茶色い目に晒されて、身の置き所なく縮こまる。

「うわぁ、いいなあ!さすが婚約時期よねえ」
何か弁明を。
そう思って口を開く前に女人のお一人が両手を頬に当てると、大袈裟な程の声を上げた。
御主人の勘違いも甚だしいが、奥方様の思い違いはその上を行く。
さすが天の方だ。そう思いながらも口には出せん。
ただ首を振る。決してそんなつもりで目を細めた訳ではないのだ。

「そうなのか」
黒く丸い瞳が、その医仙の御顔を不安そうに見る。
「そうですよー、婚約時期が男性がいっちばん!」
医仙は思い切り、一番、の処に力を入れる。

「いっっっちばん、優しい時です。うーーんと楽しんで下さいね」
「そうなのか・・・では婚儀を挙げると、変わってしまうのか」
「イ・・・医仙」

無言で端座したまま女人二人の話の終わりを待っていた大護軍が、困ったように医仙を宥める。
「誤解を招く言い方は」
「もちろん、うちの旦那様は違うわよ?別に男性全員とは言ってないじゃない」
「ですから・・・」

そうだ、大護軍にはぜひ加勢して頂きたい。
今の医仙の仰り方では、まるで俺は婚儀を挙げたら変わってしまうとでも言わんばかりではないか。
「チュンソクも、変わってしまうのか」
そうなのだ。この姫は医仙のお言葉なら、大概のことはこうして信じてしまわれる。
何しろ周りには銀主公主以外に婚儀を挙げた方がおられないのだ。姉とも慕う乳姉妹、ハナ殿ですら今回は助言は出来ない。

「チュンソク」
「・・・はい」
見た事か。今の医仙のお言葉に、キョンヒ様の顔が途端に曇った。

「変わらないでね」
「・・・はい、キョンヒ様・・・」
言われるまでもなく変わるつもりはないから、肩も頭も視線も落として、俺はそれ以上何も言えずに頷いた。
そして大護軍は今一度重い息を吐くと、黙って小さく顎を振った。

 

 

 

 

チュンソクとキョンヒ様のお話をお願いしたいです。
婚儀を控えてキョンヒ様が「ウンスのようにブーケトスをしたい」と言い出した。
お願いを叶えて差し上げたいけど、どーしていいかわからないチュンソクが
ヨンとウンスに相談する・・・と言うようなチュンソクとキョンヒ様の婚儀裏話。

キョンヒ様のお願いがブーケトスじゃなくてもいいんです。
私じゃ、それくらいしか思いつかなかっただけなので・・・
さらんさんワールドにして下されば嬉しいです。(ばぁ猫さま)

 

 

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2 件のコメント

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    今晩は。
    いつも楽しみに読ませて頂いております。
    昨日までのお話で、テウに会えたウンス、両親に会うのは無理でしょうか?
    是非とも会って、ウンスとヨンの重荷を取ってあげたい。出来ることなら孫にまで会わせてあげたいです。いつか…

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