2016 再開祭 | 待雪草・序

 

 

【 待雪草 】

 

 

凍り付いた雪道で、鞋が幾度も横滑りする。
転ぶ訳にはいかないと足許を踏みしめて、背中のハナ殿をもう一度しっかりと揺すり上げる。
「ハナ殿。もう少し、頑張って」

ハナ殿は声も返せないか、それでも背中でしっかり頷いてくれる。
そして荒縄で括りつけた背、掛けた俺の上衣の中から、この胸に垂らした両手をせめてもの意思表示のように握り締めた。
「大丈夫。大丈夫。すぐですよ」

寒さの中、泣きそうに情けなく震える声に、背負うハナ殿の熱で熱くなっている頭が、ゆっくりと縦に幾度か揺れた。

 

*****

 

「隊長」
チョモがそんなに緊張した声を掛けるのは珍しい。
兵舎の吹抜けに屯する俺達の横をまっすぐ通り抜け、奴は生木の段の上で大護軍と並んだ隊長のところまで進んで頭を下げた。

大護軍と共に春からの鍛錬の予定を話し合っていた隊長もチョモの様子に驚いたのか、眉をひそめて
「どうした」
と、小声で訊いた。

珍しい事もある。チョモは迂達赤の中でも一、二を争う几帳面だ。
その男がいくら迂達赤内とはいえ、大護軍と隊長が話し込んでいる間に割り込むなんて。
隊長もきっと同じ事を考えたのだろう。瞬時大護軍を視線を交わし、二人で黙ってチョモの言葉を待っている。
「あの・・・儀賓大監の御宅から、隊長に急使が」

奴の一言に吹抜けに集う俺達は耳慣れないそのお名前に、全員互いの顔を見合わせた。

 

「隊長様」
儀賓大監の御宅からの急使。
一体何事かと迂達赤大門まで駆け付けた雪の中、待っていたのは既に顔見知りの門番だった。

確かに女人に来られては困る。
しかし急使と聞いて、正直ハナ殿か、もしくはキョンヒ様ご自身がおいでになったかのと焦った。
門番の姿にようやく安堵の息を吐き、切れた息を整えながら
「何か」

そう尋ねた俺に、門番は懐から一枚の書状を差し出した。
「敬姫様からでございます」

それを凍える指先で開いてざっと目を通し、思わず息を呑んで目前に立つ門番の男へと視線を戻す。
委細は既に知っているのだろう。男はその目を受けて頷き返すと、言い辛そうに呟いた。
「山に入ったまま、ハナが戻って来ておりません」

 

 

 

 

トクマンくんファンとしてはやっとでてきたトクマンの恋話。
ハナどのと遭難してしまい、しかもハナどのがケガとか熱がでちゃったり、ドラマとしては
ベタですが、初々しい胸キュンも読みたいです~
ハナどのがトクマンくんを意識するかどうかはさらん様の思うように、お願いします
(ほりんさま)

 

 

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3 件のコメント

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    もう最初からきゅんきゅんしてしまいました!
    トクマンくんにおんぶされるなんて、うらやまし過ぎるっ
    このシチュエーション良過ぎます~
    本当にありがとうございます!
    ここからで申し訳ないのですが、花男の続き読ませて頂けて嬉しかったです
    ジャンディ無事見つかって良かった~
    ジュンピョかジフか、というとジュンピョ派なんですが、これまた展開が楽しみ!
    またいつか続きを読める日を楽しみにしてます(^-^)

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