「見て下さい、ユン刑事」
教授は今撮影し終わったばかりの赤外線カメラの画面データを、ユン刑事の目の前に次々と見せていく。
「赤外線カメラで見れば判る。内部に空洞はない。石ですから外気の影響を受けにくい。
全て均一に青色でしょう。中に空洞があればその部分は必ず温度変化がある。
このように均一な熱伝導はしません」
「なるほど、こうして見ると非常に判りやすいですね」
「基礎中の基礎です。もっと正確で詳細な分析をご希望ならば、移動可能な工業用X線装置や、蛍光X線分析装置も用意します」
「教授は鎧や刀にもお詳しいですか」
「・・・は?」
教授が面食らうのも無理はない。横で聞いていた私もそうだし。
石仏の次は鎧に刀?教授じゃないけど、関連性が全く見えない。
「武器防具の素材や意匠の時代的変遷には一般的な知識しかありません。私の専門は」
「それでも、私よりはお詳しいですよね」
「推測は出来ません。ユン刑事がどれ程の知識をお持ちなのか知りませんから」
「えー、私はTVの時代劇の衣装から、何時代なのか当てる事すらできないのですが」
「TVの衣装は見栄えを大切にしているだけで、歴史的検証などほぼ為されていません」
これって、水掛け論なんじゃ・・・?
そう思いながら聞き耳を立てる私と、露骨に苦い表情の教授に向かって、ユン刑事は言った。
「御二人にお付き合い頂きたい場所があります」
*****
どこまで連れていかれるのかと思ったら、ユン刑事は奉恩寺の目の前の道路を挟んだ反対側の、COEXの中に入って行った。
どこかに立ち寄る訳でもなく、明るかったCOEXのロビーから奥へ奥へ。暗い方へ、静かな方へ。
お客さんはいつの間にか1人もいなくなって、いかにも通用口、バックスペースって感じの方向へ。
そして廊下の突き当り、警備室と書かれたプレートの掛かったドアをノックする。
すぐに中からスーツを着込んだ男性がそれを開け、ユン刑事に向かって頭を下げた。
「刑事さん」
「毎回申し訳ありません。例の画像を見せてもらえますか」
「もちろんです、どうぞ」
そのドアから室内に入ると、そこには大きなTVモニターの並ぶ一面の壁。殺風景なデスクと棚。
部屋の隅にはごちゃごちゃと、ヘルメットや警棒や、セキュリティグッズらしき物の詰め込まれたボックス。
物珍しさに室内を見渡す私と違って、教授は無言でユン刑事をじっと見ている。
その視線を受け止めて、ユン刑事は場を和ませるように笑った。
「オリジナルの画像がここにあるので。署に来て頂く前に、まずはご覧頂ければと思いまして」
「一体何をでしょう」
「教授、論より証拠です」
ユン刑事はそれ以上有無を言わせず、壁一面のモニターに画像を映した。
セキュリティカメラの映像だろう。COEX内のいろいろな場所が多彩なアングルで映っている。
何かの展示会だったらしい。
展示ブースらしきところに並べられた機械に見入る人たちや、館内を歩いて行く買い物客らしき人たちが映っている。
「ここからです」
もう慣れているのか、ユン刑事は手元のダイアルを操作しながら画像を早送りし、あるところで画像を切り替えた。
今までモニターに映っていたいろいろな角度からの映像が、全てワンショットに切り替わる。
COEXの正面玄関らしい。出入りする人の波。
そこに外からまっすぐ入って来る異形の姿。
私は思わず振り向いて横の教授の顔を見た。
そして教授は相変わらずこっちを見る事なく、壁のモニターだけを食い入るように見つめている。
長髪を後ろで一つに縛った、鎧姿の背の高い男。
その手には確かに鞘に収まったままの剣を握っている。
「教授」
「お静かに、ソン・ジウさん」
次のショットはどこかの会議室らしい。
出入り口のドアに入って行く鎧姿。
そして数分後、そのドアから室内へと急ぎ足で駆けこんで行く数名のスーツ姿の男性たち。
直後にその男性たちに囲まれるように部屋を出て来る鎧の男。
抵抗する様子もなく、悠々とカメラのアングルから消える姿。
また画像が切り替わる。今度は展示ブースらしい。
様々な商品の並んだブース、書かれた文字から読むに、メディカル系の展示会。
さっきの鎧姿の男がアングル外からフレームインして来る。
映っていたのはセールスマンらしき男性と話している、白いパンツスーツの髪の長い女性。
その女性の横で止まった鎧の男は数秒後にいきなり剣を抜く。
そして近寄ってきた別の男性の、スーツの襟元を
「首を、切った?んですか、あれ?」
教授にお静かに、と言われたことも忘れていた。
思わず漏れた私の声に、教授もユン刑事もスーツ姿の男性も同時に一斉に頷いた。

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お早う御座います、思い出すわねぇ。テレビを、その場で、ウンスが、手術するのよね。そして担がれて行くのよ‼最悪な、出合いでした!後々が、幸せですがね。
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さらん様、お早うございます。
お忙しい中、こうして更新して下さり
本当に嬉しいです。
今、又さらん様のお話を最初から(これで何度目?)
遡って読ませて頂いています。
丁度、一昨日「輪廻」を読み終えたところです。
この中で出てくるテウの先輩ユン刑事が
又こちらのお話に登場ですネ!?
ユン刑事の名前を見たら又、テウの登場を
待っている私です。
とても聡明で仕事が出来る男性!
素敵です、矢張り、チェ・ヨンの生まれ変わり。
テウにも、ウンスの様な女性が現れるのでしょうか?
幸せになって貰いたいです。
さてさて、ソン・ジウと教授は今後どう解明して
行くのか?ドキドキしながら、楽しみにしています。
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鎧の男と パンツスーツの髪の長い女…
画像を見ただけじゃ
なんじゃろな?
刑事さんは 女性が ユ・ウンスと知ってる
問題は 鎧の男…
だ、誰だ?