今こんなに近くにいるだけで満足できないのはワガママ。
次の世では誰より先にあなたに逢いたいと思うのは贅沢。
幸せすぎて、なのに淋しくて。
一緒にいるのに離れる事を考えるなんてバカみたいって分かってるけど抑えきれなくて。
涙をごまかすために空を見上げる。
分かってるよって言うように、あなたの優しい瞳が頷いた。
そしてもう一度懐に手を差し込むと、次に引っ張り出した手のひらは握り拳になっていた。
「・・・・・・なあに?」
「当てて下さい」
「何か、入ってるの?」
「はい」
「もしかして、私への贈り物?花束だけじゃないの?」
「はい」
「見せて見せて!」
握り拳を両手で握り締めて揺らすと、あなたは私の顔を確かめてから小さく呟いた。
「泣いた烏が」
「え?」
「いえ」
安心したように息を吐いて、さり気なく私の目許を大好きな指がそっと拭った後に握り拳をゆっくり開く。
キャンドルの光の中、あなたの大きな手のひらに乗ってるのは白いシルクの小さな巾着袋。
「もらっていいの?開けてもいい?」
「勿論です」
その袋を受け取って、巾着の口を結んでいるピンクの結び紐をほどく。
袋の中に入っていたのは、金色のチェーン。
あの時巴巽村であなたが結婚指輪を通すために作ったチェーンと同じデザインで、それより少し細いチェーンが入っている。
「・・・これ」
「おっしゃっていたでしょう。典医寺で治療の際に指の輪は外すと」
そう言われて思い出す。 確かにちょっと前に、あなたに言った事がある。
典医寺で手術がある時なんかには、衛生上結婚指輪を外すこと。
失くさないようにしないとね。
そう言った私に、あなたはうんうん頷いてたっけ。
「外す時はこれに」
「覚えててくれたの?」
「はい」
「巴巽村で作ってくれたの?」
「通う余裕は無かったので、手裏房経由で鍛冶に頼みました」
「わざわざ頼んでくれたの?!」
「はい」
お揃いになったのも嬉しいけど、何気ない話を覚えててくれたのが何よりも嬉しい。
「ありがとう、本当に」
きれいなチェーンを袋から取り出して、あなたの手のひらへさらりと落とす。
手へ落ちる金色の光に、あなたは困った顔で私を見た。
「・・・気に入りませんか」
「え?」
「鎖を」
「ちょっと、やだ違う!返したんじゃないわよ?」
私は慌てて首を振って、下してた髪をうなじからすくって持ち上げる。
そしてあなたに背中を向けて、肩越しに視線だけでお願いする。
「つけて?」
「は」
「チェ・・・鎖、つけてくれる?」
あなたは黙ったまま器用に金のチェーンの掛金を外すと、腕を回してチェーンを首につけてくれる。
肌寒い川岸で背中に感じるあなたの気配。
首筋に感じるあなたの大きな手の温もり。
チェーンをつけた後、上げてた私の髪を戻して整える指の優しさ。
そのまま後ろから腕を回して抱きしめてくれる、広い胸の安心感。
「ヨンア」
「はい」
「愛してる」
「・・・はい」
「プレ・・・贈り物、くれたからじゃないわよ?」
念のために伝えると、あなたは楽しそうに笑って頷いた。
「はい」
もしもあなたが別の日に生まれていたら。別の星の下、別の運命の下に生まれていたら。
それでも私はきっとあなたと出逢う。
遠回りして、すれ違って、命懸けで決めて、やっぱりこうして愛する。
「ヨンア」
「はい」
「みんなのところに戻ろうか?」
その声に少しすねたみたいに、後ろから私の肩にあなたの顎が乗る。
「暫し」
「じゃあ、もうちょっとだけ」
黙ったまま、2人で川音に耳を澄ませる。
東の空からいつの間にか、大きな月が上がっている。
「寒くは」
「ううん。月がきれい」
「はい」
月に、川音に、この景色の中に足跡を残すわ。
どれだけ時代が変わっても、世界が変わっても変わらないものに。
いつも思い出して。晴れた夏の夜に月を見上げたら。
私を思い出して。どこかで川の流れの音を聞いたら。
あなたをこんなに愛してる私が、あなたの中に残す足跡を思い出して。
抱きしめてくれる腕の暖かさを私が絶対忘れないように、抱きしめた腕の中の私の事を思い出してね。
「来年からは」
あなたは肩に顎を乗せたまま、耳元で囁いた。
「俺達のみで、静かに祝いましょう」
「うん」
幸せな気持ちで頷いてから思い出す。媽媽との約束。
「・・・ヨンア?」
「はい」
「それ、ダメかも」
「は」
「来年は、媽媽が内輪だけでパーティしてくれるって・・・」
勝手な事後通告の私の言い分に、乗ってた顎が肩から落ちる。
そこにおでこを乗せたあなたの、長い深い溜息が1つ聞こえた。

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さらんさん❤
何故に貴女はこんなにも
素敵なお話を紡げるのですか(^^)
ドラマのヨンとウンスの
イメージを壊さない
さらんさんのお話を
心から愛してます❤
ありがとうございます❤
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あら しあわせね~
ちょっとしたことを 覚えててくれる
男の人って… ステキ♥
お金かければいいってものじゃないわ~
気持よ 気持ち 心が伝われば
素敵な 贈り物です
そそ、大事な人に 鎖かけてあげてね 返したんじゃないわよ~ ( ´艸`)
いつかな? ゆっくり二人だけで お祝いできるのは
(*^▽^*)