比翼連理 | 45

 

 

「あの、ええと」

王妃の部屋の中、立ち尽くしたままで一通り部屋中の顔を見渡し、ウンスは救いを求めるようにチェ・ヨンへ目を遣った。
どうにかしてやりたくとも今は手も足も出ぬと、ヨンは焦る想いでウンスの瞳を見返した。

あなたは昨日、王妃媽媽に何を話した。何処まで話した。
あなたの体面を保ったまま切り抜けるには、俺はどう動けば良い。

返す返すも己の迂闊さ、この軽率さが骨身に沁みる。
このような衆人環視の只中に俺のあの方を置き、一歩も動けず木偶の坊のよう此処に突立ったままで居るなど。

絶対に外す。必ずだ。王妃媽媽のお部屋を出た暁には真先に外す。

ウンスをあれ程困らせた顔で立ち尽くさせる指輪など身に着けるのは金輪際御免だと、ヨンは歯噛みした。
「ええと・・・お呼びですか、媽媽?」
ウンスは頼みの綱のヨンの顔が強張るのを見ながら、王妃に向かいまずは尋ねてみた。

何が起こったわけ?なあに、真っ昼間っからこの大集団?
あの人は王様の横で無表情に立ってるし、王様と媽媽の正面では見たことないアジョシが、にこにこ笑ってお辞儀してるし。
扉の横には珍しくチュンソク隊長もいるし、叔母様は何を考えてるか全然読めない表情で、黙って頭を下げてるし。

 

武閣氏のオンニが典医寺に走って来て
「媽媽がお呼びです。お急ぎ坤成殿へ」
そう聞いた時には、心臓が痛くなるくらい緊張したのよ。
もしかして媽媽に何かあったんじゃないかって。 だから慌ててそのオンニに
「何で?媽媽に何かあったの?どこか悪いの?どうしたの?」
って掴みかかって聞いたのに、オンニは曖昧に頷いたまま
「いえ、ご体調の事ではなく」
首を振ってそれ以上、何も教えてくれないんだもの。
取りあえず慌ててオペ道具一式と鍼だけ持って、走って来たのに。

部屋に飛び込んでみたら媽媽は王様と仲良く並んでいらっしゃる。
どう見ても普段よりよっぽどお顔の色もいいし、お肌だってつやつやしてるし。
何かいいことがあったのは、脈診しなくたってすぐに分かる。
それはいいのよ。媽媽がお幸せそうで嬉しい。それは本心から思う。
だけ、あの人の強張った顔は、すごく気に掛かる。
なのに肝心のあの人はこっちをまともに見てもくれないし。

「突然申し訳ありませぬ、医仙」
媽媽が私の質問に、晴れ晴れとした笑顔でそう返して下さる。
「いいんです、全然いいんです。急患もいないし、構わないです・・・・・・けど、これ、何の集まりですか?」

そうよ、まずそれを知らなきゃどうしようもないもの。
私の声がほんとに不審そうに聞こえたんだと思う。
媽媽はふふ、と声を上げて笑って、その白い手でご自分の目の前の椅子を、静かに示しておっしゃった。

「どうぞ、お掛け下さい」
「あ、はい」
そのお声に、私は慌てて示された椅子に腰掛ける。
テーブルの、王様の横に立つあの人の斜め向かい。
私の横に立ってたアジョシが、座った私に向かってもう一度頭を深く下げてから、自分も席につく。私の横の椅子に。

「医仙」
テーブルの向かいから、王様がそう言ってにっこり笑う。
「急の呼び出しで、驚かれたであろう」
「ええ、それは。媽媽も王様も、お体が悪いわけではないんですよね?」
「全く問題はない。体の事でお呼びしたのではないのだ」
「それならよかったです」

私がようやく安心して頷くと、王様の向こうに立ってるあなたの眉間に小さく皺が寄るのをしっかり見つけちゃったわ。
何よ。何でそんなに怒った顔してるの?
そう目で言ってみるけど、あなたは黒い眸でじぃっと私を見るだけだし。
ああもうほんと、いつものおしゃべりな目はどこなの?
何で肝心な時に、そんな無表情な目になっちゃうのよ!

「指輪を、見せて頂きたいのだ」
「・・・はい?」

あの人にすっかり気を取られてた私は王様の御言葉に思わず驚いて、大きな声でそう聞き返した。
そのまま王様の向こうのあの人を見ると、小さく顎を振るのが見える。
話しちゃ、ダメなの?
私が目でそう問いかけると、あの人の顎が小さく頷く。

ダメって事よね。でも、どうしよう。私昨日、媽媽に言っちゃってる。
見せちゃってる。あなたとのお揃いの婚約指輪、兼 結婚指輪が嬉しくて。

調子に乗って、言っちゃったわ。

指輪ゲット作戦。自分のこの口から、確かにそう言っちゃってるじゃない!

 

 

 

 

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5 件のコメント

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    あぁ( ̄▽ ̄;)どうするの?ウンス。
    チェヨンの体面は?
    この先が気になる〰!
    ラブラブモードもいいけど、ハラハラニヤニヤもいいですよね♪

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    あっという間の1年だったように思います 最初からずっと話に惹きこまれて さらんさんのヨンとウンス…信義の世界にのめりこんでいます それは今も変わらず 毎日の楽しみになっています 
    これからもさらんさんが書き終えるまでずっと読ませていただきますね 
    暑い時期お体に気を付けてくださいね
    コメント掲載お返事はいいですから ゆっくり休んでくださいね

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    ウンスちゃん、???ですよね。
    チェヨン君、ちょー不機嫌だし。
    でも、王妃様に指輪ゲット作戦とか言っちゃってるし。
    どうするの?ウンスちゃん。

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    さらんさん、仕事から戻り、着替えもそこそこに拝読させて頂きました。
    ウンス、ドキドキですね。
    軽率だったと言われたら、まあ その通りなのでしょうけれど、その明るさがまた彼女の長所でもあるわけで…。
    どうにか良い方向でおさめて頂きたいですし、きっとさらんさんでしたら、「ほお、そうなったか!」と胸がすくような展開をお見せ下さると思っています。
    さらんさん、日々、精力的に更新頂いていて、とても嬉しいです。が、睡眠時間は足りていますか?
    筆の速いさらんさんですから、目にも止まらぬスピードで文字を起こしていらっしゃると思いますが、くれぐれもお体を大切にされてくださいね。

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