2016 再開祭 | 嘉禎・42

 

 

「やだ、2人ともどうしたの?」

やっと懐かしい開京に到着して、ようやくみんなに会えたのに。
あなたは微妙な苦笑いを浮かべて、静かにグイグイ飲んでるし。
チュンソク隊長はそんなこの人の様子に溜息ばかりついてるし。
「・・・いえ」

あなたは盃を握ったまま、こっちに顔を向けてちょっと笑った。
「思い出しておりました」
「天界の焼酎?」

あ、絶対違うわ。聞いた瞬間の顔を見れば分かる。
あなたは言われて初めて思い出したみたいに、目を丸くしてる。

「天の国にも焼酎があるのかよ、旦那」
感心したみたいに、シウル君とチホ君がテーブルに乗り出す。
「ああ」
「味も同じなのか」
「・・・いや」
「何だよ、そんな良いとこに行ったのかよー!心配したんだぞ、どんなとこなんだかさっぱり判んねえし」

チホ君がようやく安心したみたいに、手に持ってた槍をどん、と大きな音をたてて床についた。
「黙ってさ、水臭えだろ。声かけてくれりゃ俺が一緒に行ったのに」
それに頷いたシウル君が怒ったように、迂達赤のみんなを見渡した。

「だいたいみんな薄情だろ。いっくら天女が一緒だからって、誰かついてこうって思わなかったのかよ、旦那に」
その声に、テマンがきっと顔を上げる。
「俺達だって知ったのは大護軍がで、出掛けてからだったんだ!知ってたら必ずついてった!」

トクマン君が頷くと、顔を赤くして唾を飛ばす。
「勝手に動けば、結局大護軍が責められるんだ。そんな事出来る訳ないだろう!
どれだけ悔しい思いで待ってたと思ってる!」

手裏房のみんなの言い分も、迂達赤のみんなの言い分も分かる。
そうよね、きっと先にばれてたら必ずみんなそう言った。
タウンさんもコムさんもきっと同じ。国境隊のみんなも、そして門の横の官軍のみんなも。
本心では仕事を放ってでも、ついて来たかったに違いない。

この人が止めたから、この人が責められるから来られなかった。
この人がそれぞれに託した場所があるから、守ろうって心に決めて、この人を信じて待ってくれた。

だからあなたは死んじゃダメ。イ・ソンゲに殺されたりしちゃダメ。私の為じゃなくても良いから。
あなたを信じてる人たちの為に。誰よりあなた自身の為に。
私も一緒にいる。あなたを幸せにしたいから。笑って欲しいから。

みんなが大騒ぎしてる真ん中、困ったみたいに顔をしかめてるあなたはきっともう、その重さをよく知ってるはずだから。

「・・・お前ら」
どんどん逸れてく話に呆れるみたいに、あなたが小さく首を振る。
「留守中、延々とそれか」
「いえ」

チュンソク隊長が小さく笑って首を振る。
「無事に帰って下さったから罵りあっています。今まで暗い顔を突き合わせて、帰りの報せを待っていましたから」
「・・・そうか」
あなたは諦めたみたいに笑って、もう一度盃をぐっと干した。
「そうだよ旦那、飲め飲め」

シウル君がごまかすみたいに言って、空の盃に焼酎をたっぷり注ぐ。
「うまい焼酎、久し振りだろ。天の国とは味も違うなら」
「確かにな」
あなたはそう言って首を振る。そうよね、確かにだいぶ違う。
21世紀では全部機械醸造、ほとんど希釈方式だものね。

テーブルに肘をついて、手元の素焼きの大きな盃を鼻先に上げる。
こうして嗅いでも、香りだって全然違うわ。
未来の焼酎は砂糖や人工添加物も入ってる。今とは全然味も、それに飲み方も違う。
何しろこの時代メクチュはないから
「・・・ああ!!」

突然叫んだ私に、横のあなたが素早く盃を置いて剣を握る。
チュンソク隊長が立ちあがる。テマンもトクマン君も素早く周囲を見渡す。
チホ君が槍を握って、シウル君が背中に手を回す。
叔母様が向かいの私の顔を鋭く見つめる。

ちょうどつまみを運んで来てくれたマンボ姐さんも
「どうしたんだい、天女」
慌ててつまみの大きなお皿をテーブルに置いて、私の顔を覗き込む。

「ポ」
「ぽ」
私の声をそう繰り返すあなたを、じいっと見つめ返す。
「ポ、クダンジュ!」
「・・・は?」

私の叫び声に黒い瞳がすうっと細くなる。
「すっかり忘れてた!ヨンアに飲ませたかった!ポクダンジュ!」
「爆弾・・・酒」
「あのね、ビールのジョッキに焼酎を」
「・・・酒の話ですか・・・」

呆れたように呟いて、あなたは握ってた剣から静かに手を離す。
力を抜いたあなたを見て、チュンソク隊長が座り直す。
テマンとトクマン君が息を吐いて、目が穏やかになる。
チホ君が槍をゆったり抱え直す。シウル君は背中の矢から指を引く。
そして叔母上は今まで見た中で一番呆れた顔で、私じゃなくて横のあなたに首を振った。

 

 

 

 

7 件のコメント

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    みんな心配してたんだね~
    そして やっぱり ちょっとは
    天界に興味があったかな?
    でもさ 高麗に居るのが一番なのかも
    こうして 二人が戻ってきたし
    知らなくっていいこともあるし~
    また もとの生活に戻ろうかねぇ
    ウンス ヨンに爆弾酒飲ませたかったの?
    ( ´艸`)
    やっぱり 変わらない 天女ですな。

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    ヨンとウンスを取り巻く家族。
    こういう雰囲気が大好きです(*^^*)
    血の繋がりだけじゃない家族です❤
    ウンスの叫び声に、ヨンや皆の反応!
    やっぱり高麗ですね~~(^^)

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    みんな、ヨンとウンスを心配してくれていた。
    当然よね。いつ戻ってきてくれるのか、全くわからないのだもの。ウンスが、一人で天門をくぐり、帰ってきたのは、高麗時間では4年後だったもの。二人が行くことを知れば、一緒に行きたいと思うはず。または、ヨンの責任にならないように、必死に待っているはず。
    こうして和やかに、仲間と、あれこれ言い合うことができるなんて、幸せなのよね。
    帰ってきたんだな・・と、今、ヨンとウンスは心からほっとしていることでしょう。

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    さらんさん、こんばんは❤️
    そりゃーみんな着いて行きたかったてすよね~
    でもヨンならそんなことさせないだろうけど。
    みんながいるから留守を任せられたんだと思いますしね♪
    ウンス、爆弾酒ですかww
    大声で周囲に警戒させながら思い出す仕草が目に浮かぶようo(*´ヮ`*)ow

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    天界へついて行こうか...
    冗談か、本心か、昔は、迷いの中で言ったヨンです
    チェ尚宮さま、叔母としては心配だったかも知れません!
    でも、ウンスさんを見てると、なんだか安心するやら呆れるやら?
    高麗の家族に身守られていたら、爆弾酒も大丈夫よ(笑)
    さらんさまとヨンに料理されて
    トクマン君は、すでに酒の肴で膾(済)です♪

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    無事にもどれて良かった♡
    そして、いつもの風景にほっとしました(^^)
    ドキドキと、わくわくと、お話の楽しさに引き込まれて、楽しくて嬉しかった(//∇//)
    続きも楽しみです(~▽~@)♪♪♪

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