「赤ちゃんが欲しいんです」
漢方医院で先生を前に切り出すと、私の椅子の横に立ったままのあなたと、目の前の先生が同時に声を失った。
しばらくの無言の後に先生が、次にあなたをじっと見る。
「旦那さんも、同じご意見ですか?」
「・・・・・・は」
その質問にあなたはどうにか、ぎこちなく頷いた。
「まあ、お一人ではできませんから。旦那さんと一緒に治療という事になりますが」
「どんな治療ですか?」
「薬湯と、後は鍼ですね。しばらく通って頂くかと」
「薬湯は何を飲みますか?」
「まずは四診を」
体調は。暑さ寒さは強いか。食欲は。偏食はあるか。アレルギーは。
そんな質問に答えながら、目や爪や口の中を見せて。
「ふむ、宜しいでしょう」
先生は私の脈を見た後に、同じようにあなたに椅子に座るよう促す。
同じような質問の後、
「旦那さんの脈も、見せて下さい」
その声にあなたが黙って腕を差し出す。
先生は同じようにあなたの脈も読んだ後に、ようやくにっこり笑う。
「奥さんは血虚気味ですね。当帰芍薬散が良いかと。
旦那さんには腎や血に問題はないので、敢えてするなら鍼治療ですね。
お二人とも何か内服薬や、他の漢方薬を飲んでいますか」
「薬は今、一切飲んでないです。鍼ですか?!」
「ええ。苦手ですか?」
「好きです。得意じゃないけど知りたいです!教えて下さい!!」
私の勢いに驚くみたいに、向かい合う先生はちょっと身を引いた。
「旦那さんなら大赫、築賓。気血水とも大層充実しているので、実際にはほとんど必要ないかもしれません。
とても現代人とは思えない、しっかりした脈です。自然に任せてもすぐに子宝には恵まれると思いますが」
先生がそう言うのにドキッとしながら頷く。現代人とは思えないって・・・
まあ確かに現代人ではないけど。 真実を知ったら先生も驚きよね。
医学誌に寄稿しても良いと思うわ。
あの高麗の大将軍、チェ・ヨンの脈を取りましたって。
「奥さんは横骨、太谿、曲骨、気海。 旦那さん、奥さん共に良いのは三陰交と命門ですね。
あとは耳ツボ。これはお互いに気軽に出来ますし、スキンシップにも有効ですから。
帰りに耳ツボの表をお渡ししましょう」
「お願いします!!あと」
「はい」
「今のツボ、覚えられないので全部書いて教えて下さい!!」
前のめりで勢い良くねだる私に、完全に体を引いた先生が頷いた。
*****
「ああ良かった。やっぱり行っておくべきよね」
韓方医院を出た私の横で、あなたが呆れたみたいに青い空を見上げて息を吐いた。
「何かおっしゃるなら、先に教えて欲しい」
「え?」
「口裏合わせに骨が折れます」
「そりゃ、そうだけど・・・」
「突然医官の前で、子が欲しいなど」
「ああ、だってそれを調べるのがここに来た目的じゃない?収穫はあったわ。少なくともツボ表がもらえたし」
「点穴は如何でしたか」
「ツボはねえ、高麗の時とあんまり変わらない。逆に言えば、600年前にもう鍼灸治療はほぼ完成してたって事よね。すごいわー」
ほんとに感心する。こうして現代で治療を受けると改めて思う。
あの頃のチャン先生も、そして100年前の劉先生も、今のキム先生も、そして21世紀の韓方の先生も。
言ってる事にブレがないのよね。基本は一緒。
もちろんツボのとらえ方とか、鍼の打ち方とかにはそれぞれ個性や秘訣があるんだろうけど。
「次は」
明るい街を歩きながら、あなたが私を見る。
「産後調理院ね。ひとまず下見をしたいの。近くに何件かあるから」
「はい」
「あ」
歩き出して、私はあなたを見上げて言った。
「先に言っとく。次の場所では私もう妊娠してるから、よろしくね?」
「・・・は?」
「だって、あなたが最初に教えたじゃない」
笑いながら伝えると、訳が分からない様子であなたが首を傾げた。
私は絶対忘れないわよ、あんな怖い思いしたんだから。
「嘘も方便って」

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さらんさん、おはヨンございます❤️
随分前向きでそして図々しい患者と思われてるかしら*(\´∀`\)*:
でもこれが真の目的だからね!王様と王妃様、そして今後の自分たちの為にも覚えて帰らなきゃいけない事は沢山ね❤️
ヨンも突然子がなんて言われてドキッとしたかな~
でも考えてない訳ではない癖に(●⁰౪⁰●)
次は産後調理院かぁ~
偽妊婦をしっかり支える旦那様を好演しないとね♪
嘘も方便で(๑•̀ㅂ•́)و✧
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嘘も方便…
確かに 死ぬほどこわい目に…
ついに 御返しか?
お腹の子のお父さん設定(灬ºωº灬)♡
死ぬほどではないにしろ
ヨンには… ちょっとテレテレ~かな
(๑´ლ`๑)フフ♡
またまた 視線を釘付けね。
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さらんさん
ありがとうございます!
もう毎日楽しくて楽しくて(^_^)
もし二人で天界に行ったらが、あったらいいなと思ってましたので、想像以上に膨らむお話に嬉し~いです!
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現代人ではないくらいに問題の無い体なのですね(当然ですけれど)。さすがヨンの逞しい体。鍼灸治療は、600年前の高麗も、さらに遡った100年前の劉先生も、そして、現代も、変わらないというのは今の私にも嬉しい情報です(妊活ではなく、体調管理!歳ですから・・)。産後調理院では「妊娠中に良い食事は」と聞いてくるのかなぁ。
ヨンの戸惑う顔が浮かびますよ(笑)
そうです。ヨンに言われたので、あの日、王様の前で嘘を言い、罪にとわれて兵に引っ張られた辛い思いは、ウンスにとって忘れられませんよね。
キチョルの屋敷で、ヨンがウンスに囁いた 「嘘も方便」
今回は、二人、どんな栄養指導をうけるのかな。
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もうすっかり、こっちまでヨンと現代デート気分です(о´∀`о)
るんるんるーんで 1日スタート!
素敵なお題と さらんさんの脳内に感謝でございます!!
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そうそう嘘も方便よね
子供が欲しいの次は 子ができた
先に教えて貰っても ヨンは
ついていけてない感じね(^◇^;)
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「赤ちゃんが欲しいんです」なんて
突然言われたら、ヨンだってビックリしますよね(*_*)
先生の現代人とは思えない。に笑ってしまいました。
本当の事を知ったら卒倒されるかもですね(笑)
「すぐに子宝に恵まれる」
先生のお墨付きをもらった二人。
高麗に戻ったら頑張ってください❤