「こんばんは、いらっしゃいませ」
華やかなホテルのロビーの雰囲気。まだ夜早い時間のざわめき。
ディナーに向かう人。バーに行く人。デートや待ち合わせ。
パーティに出席するようなドレスアップの人たち。
仕事帰りのスーツ姿で、仲間同士談笑する人たち。
まぶしい照明の中、そんな人たちが行き来する。
この人は私の隣でしっかりと立ったまま、周りを警戒してる。
そしてロビーの人たちがすれ違いざま振り向きながら、この人を見つめて通り過ぎていく。
フロントのカウンター越し、係の女性が私を見て営業スマイルで出迎えてくれる。
そして横に立ち、紙袋を肩から下げたあなたを見て本物の笑顔を浮かべた後。
こっちへ戻した視線は、明らかにちょっと冷たくなってた。
「空室は」
「ございます。ご予定は」
「ひとまず2泊。もしかしたら延びるかも」
お姉さんの笑った形の口元が、ぴくっと引きつった。
「どのようなタイプを御希望ですか」
「出来る限り上の階で、奉恩寺が見える部屋をお願いします。
あと、出来ればお風呂の大きい部屋で」
この人に、せめてのんびりしてほしい。
そう思ってお願いするともう完全に笑ってない目で、お姉さんは私を見て
「・・・かしこまりました。少々お待ちください」
それだけ言ってデスクの向こうで、手元のパソコンのキーボードを操作した。
フロントのお姉さんの返事を待ちながら、改めて横のこの人を見る。
確かに顔立ちは整ってる。身長も高いし、スタイルも良い。
だけどそれだけなら、ここにいる他の男性たちにだっている。
何がこれほど、人目を引くんだろう。
姿勢がいい。まるで矯正してるみたいに背筋がまっすぐ伸びてる。
だけどそれだけじゃない。
たとえばここに有名な俳優やアイドルを集めて並べても、多分この人は目立つ。
きっと目を引く。
時間を超えてここにいるこの人が背負ってるものは、少し違うから。
人の命を背負う人。生きて行こうと進む人。
ただ流されて、何となく起きて仕事に行ってるわけじゃない。
帰りに一杯飲んで、のんびり帰って来てシャワーを浴びてベッドにもぐり込む。
そんな風に毎日を過ごしてたら、絶対に手に入れられない強さ。
残る悲しさを知っているから、奪わないように努力する優しさ。
迂達赤や手裏房や、今回会ったみんなを見てても分かる。
口下手で人付き合いもうまくないこの人を、どうしてあれほど無条件に信じてついて行くのか。
この人のリーダーシップ、カリスマ性、人間性。
それを感じるから、引きつけられる。
だけどそれだけじゃなく、人間のどこかに残る本能が呼び掛ける。
そうじゃなきゃ、これほど他人までが振り返る理由が分からない。
ホモサピエンスが誕生して、集団で生きる事を選んだ瞬間、DNAに刻まれた群れとしてのルール。
より強い個体に従い、力のある個体をボスと認めるルール。
負ければ潔く服従の姿勢を取るルール。
群れが機能して、安全に生きて行くために。そして。
そこまで考えて、顔を赤らめる。
動物の雌なら、ううん、植物だって同じ。
種としてより優勢な遺伝子を残す、これもどうしようもない本能。
だからどんな集団でも、ボスが群れの雌を独り占めする。
そして高麗でも21世紀でも、女性は本能で振り返ってるんだと思う。
そうよね・・・それは、医師としては理屈は分かるのよ。
この人が見境なく自分の遺伝子を残そうって本能に従わない人で、本当に良かった。
「イムジャ」
低い呼び声に気付いて顔を上げると、横から黒い瞳が降って来る。
「気分でも」
「え?」
「顔が赤い」
顔を寄せたあなたに、大きな手の平でほっぺを包まれる
手の平が次に額に当てられて、そして首をそっと撫でる。
「熱はない」
この人はいつもの私の真似をしてるだけ。私には分かってる。
だけど21世紀のホテルのフロントで。
その瞬間にフロントのお姉さんが無機質な声で
「お客様、お部屋が決まりました」
そう言って作り笑いで、フロントにカードキーを滑らせる。
“ふざけんじゃないわよ。こっちは夜勤なのに良い男と目の前でいちゃいちゃして!”
きれいなメイク顔に、口で言うより大きくハッキリ書いてあって怖いってば。
「び」
「は?」
フロントのお姉さんは、そう言って私をじろりと睨んだ。
「ビジネス、センターの使用時間は、何時まで」
「・・・午後10時までとなります」
お姉さんは最後に、呆れたように肩をすくめて溜息を吐いた。

SECRET: 0
PASS:
そりゃね ただでさえ
美男美女カップル…
目の前で そんなこと(イチャついたわけじゃないけど…)
こちとら 勤務中だぜ イラっ
ಠ_ಠ
ま、 はやく お部屋に行こう!
SECRET: 0
PASS:
さらんさん、おはヨンございます◡̈♥︎
これ程整った容姿ですし、なんだろうヨンの内から出るものなのね。
リーダーシップやカリスマ性や人間性、フムフムと納得してしまいました。強さと優しさ、そして哀しさを知ってる人、誰もが惹かれますよね。
フロントのお姉さん、羨ましいというより妬みだねww
こんないい男連れてたら女は嫉妬するかも~!
本当にヨンが種ばらまくような人ではなく妻としては安心できますね!
ウンスしか見えてないから*(\´∀`\)*: フロントのお姉さんも目に入ってないかもw
ヨンがその気で周りの女が放って置かなかったら隠し子が相当数いそう..w
SECRET: 0
PASS:
さらんさま
私たち、信義廃人乙女が、ヨンに嵌まるのは、雌としての本能・・・❤
まちがいないと思います。本能だから、仕方ないのですね。
今、21世紀のホテルのフロントで、ウンスの心配をするヨンの映像が、脳内でエンドレスに上映されています。ポチの画像がステキ過ぎます・・・
あぁ、今日も1日頑張れそうです❤
SECRET: 0
PASS:
ひとまず2泊、もしかしたら延びるかも
できるだけ上の階で、大きいお風呂のある部屋へ・・
確かに、ウンスと一緒に立つヨンを目前にしたフロントの女性には、いくらフロントとは言え、そんなことを言われると、心の中で・・嫉妬・・してしまうだろうな。誰でもだけれど・・
そんな時でも、普通にウンスを気遣い、大きな手のひらでウンスの両頬を挟み・・確かに、確かに
あのヨンがしているところを見たら、誰でも羨ましい。(今、私の頭のスイッチがヨン=ミノに。なぜかシティハンターの、そんな場面に。スミマセン)
ビジネス、センター?
今から出かけるの?
早く、大きいお風呂で休もう!
SECRET: 0
PASS:
何処にいても いい男は目立つのね~
ましてや目の前で いちゃいちゃされたら
怒りたくもなるわ!
でもいい男は そんなこと気にもしない
いいわ いいわ!
それがウンスの旦那さま
ウンス以外は女じゃなく ただの雌ね( ´艸`)
SECRET: 0
PASS:
おはようございます!
このお話がとにかく楽しくて仕方ありませんo(^_^)o
二人の心をよぎる想いが細やかに丁寧に描かれていて。。さらんさん!素敵です‼︎
ウンスのヨン評。。
うん!うん!そうなのよね。韓流スターなんで足元にも及ばない(^^;;
人って、その立ち姿からその人の生き方やよって立つところが見えることがありますよね。
ヨンは特別な人!唯一無二の人!
「凛」という言葉をよく使ってしまうんですが、ヨンのためだけにとっておきたいなぁと思いました。
仕事に向かう車中、ソウルのホテルでヨンに遭遇した瞬間を思い描いては、うっとりしております。
SECRET: 0
PASS:
沢山の我欲に包まれた現代人と
真っ直ぐな心を持つ高麗の武士ヨン!
その醸し出す雰囲気に、見とれるフロントのお姉さんの気持ち。
良く分かります(^^)
こんな男性に愛されてるウンスが
羨ましい~❤
SECRET: 0
PASS:
ちょっと年下のイケメンを連れた綺麗な女性、
目の前で2人の世界を魅せつけられて(2人はそんなつもりなくても)イラッとしてしまったのかな(笑)
見た目がカッコ良いだけじゃなく、生きる姿勢も背負う物も、現代の若者と違うし、そういうモノがオーラとして出ているんでしょうね^^
姿勢って大事ですよね。スッキリ見えるし。
独身の頃、主人は私の事を姿勢が良くて好印象に思ったらしいのですが、結婚してから一度も良いと思った事が無い、騙されたと今では言われます(^▽^;)
私も意識してそうしていた訳じゃないけど、外ではシャキっとしていたのかも。主人以外にも言われた事あるので。
あっ、ヨンの話だったのに、私事になり失礼しました(。-人-。)