真実なのか。
この方の紡ぐ悍ましいこの言葉は、本当にこの先起きるのか。
俺が地を駆け護る高麗に、王様という龍が天翔け治める高麗に、俺の愛しいこの方が笑う高麗に、真実起きる事なのだろうか。
王妃媽媽が亡くなる。
シンドンが送る愛人が側妃となり、その妃は王様の御子と謀って シンドンの子を産み、次の王とする。
「王妃媽媽を亡くして王様はお心が壊れるの。悲しすぎて政治に見向きもしなくなって、シンドンに政治を任せるようになる」
この方の悲しい声は続く。
己の耳を塞ぎたくとも、眸を逸らしたくとも赦されん。
王様がこの国を譲り渡す。何処の誰とも分からん僧に。
それ程に壊れてしまわれるか。諦めてしまわれるのか。
耳から胸へ溜まる毒は、やがてこの血に乗り体を巡る。
指先から己を冒し、じわじわと全身を蝕んでいく。
「どういう事です」
「シンドンは最初は清廉政治を目指すはず。でも与えられた権力が大きすぎて、どんどん傲慢になっていく。
最終的には お心の壊れた王様に少年を送って、身の回りの世話をさせるようになる。
何故って女性を送って万一子供が出来たら、その子が次の王様になるから。自分の地位が奪われるから」
吐き気がする。
「・・・真実ですか」
「真実かは分からない。でも先の世界ではそう言われてるわ」
「ならば斬ります」
「ヨンア、あの人が未来のシンドンかどうかは分からないのよ」
「しかしそうかも知れん」
「でも違ったら?関係ない人を、かも知れないって可能性だけで無実かも知れない人を斬るの?」
「イムジャ」
「それでこの後は、お坊さんは一切寄せ付けない?それで未来が回避できるかどうかも分からないのよ!」
「イムジャ!」
「だから今できるのは、媽媽をお産で亡くさないことなのよ!私はあなたと、王様と媽媽を助けたいの。助けたいの!!」
この方は寝台の敷布に爪を立て、此方へ体を倒して叫ぶ。
判っている。この方は助けたい。
王妃媽媽を助ける事は王様を、そして御二人を助ける事で俺の定めが変えられると信じて。
互いに気持ちのまま、こうして怒鳴り合うだけでは解決はせん。
言う通りだ。全ての僧を皇宮から、高麗から追放すれば良いか。
斬り捨てれば済むか。そんな事が出来る訳が無い。
ならば何が出来るのか。王妃媽媽を亡くさぬ事。王様の御心を護る事。
シンドンという男に付け入らせる隙を、決して生まぬ事。
「もしも、王妃媽媽が御懐妊せねば」
「ご出産で亡くなることはないでしょうね。でも言える? あの時あれほど悲しんだ王様と媽媽に、お子様は持つなって?
分からないのよ!もし難産で亡くなることはなくても、それで歴史が変わるのか、それとも」
この方は其処まで言って息を継ぎ、俺の眸を覗き込む。
それとも、何か他の理由で身罷られるのか。
必死に頭を纏め、どうにかその大切な声を追う。
何処かに無いか。何かこの状況を変える契機は無いのか。
「王妃媽媽の御体を御守りする」
「それが第一だわ。まだ時間はある。私もそれまでに、出来る限り勉強しておくから」
「王様の御心を御守りする」
「もしも媽媽に何かあればね。媽媽がお元気なら王様も大丈夫よ」
「還俗した元僧に注意する」
「忘れないでね。シンドンって名前だけは絶対確かだから」
「その男の推挙する側妃は、絶対に置かぬ」
「そうね、それも大切だと思う」
「他にはありますか」
「シンドンに関しては、ないと思う。思い出したら必ず教える」
これ以上知る必要が無いなら、あとは動くのみ。
この方の言葉に頷いて、瞬きを忘れた鳶色の瞳を見る。
「判りました。イムジャ」
「・・・うん」
「幾度となくお伝えした。天界の話をするなと。万一洩れればあなた自身が危ないと」
「分かってる」
「此度の事は、今迄と全く違う」
「分かってる!」
「約束して下さい。俺以外には」
「分かってる。言ったりしないし・・・言えないわ、あなた以外に」
その声に嘘はない。この方はこうして一人抱えていた。
王様と王妃媽媽の先を知り、そして変えようと。
遍照が出て来ねばこの話も先送りになっていただろう。
そしてあなたは一人走り、黙ったままで心を痛め、 夜に隠れて泣きながら朝には笑っていたのだろう。
何が出来る。俺のこの方が心から笑う高麗を作るには。
寒く昏い夜の後、もう一度明るい朝を迎えるには。
その朝の陽の中で、もう一度あなたに出逢うには。
繋いだまま震える小さな手を握り締め、必死に笑うあなたを抱き締める。
これで知った。そして大丈夫だと言ってやる為なら何でもする。
抱えているものが重いなら、秘密ごとあなたを背負う。
あなたはいつか望んだ通りこの背で休んでいれば良い。
その細い腕を力一杯回し、落ちぬようおぶさっていろ。
固く抱き締めた腕の中。
小さく笑い、ようやくあなたが息をつく。

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これで やっとウンスが話せなかった
王様、王妃様のこと
ヨンに話せてスッキリしたかしら
そうなのよね
そうなるかわからないんだもの
できることを するしかないのよね。
がんばれ~ ヨン、ウンス~
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さらんさん♥
今宵もお話を拝読させて頂き
ありがとうございます(#^^#)。
自分以外の誰一人、先のことを知る者が
いない高麗で、重大な出来事を胸の内に
抱えているウンス…。
私なら気が滅入ってしまうか、
自分の気のせいかもしれない…と
記憶にフタをしたくなります、きっと。
シンドンというMonsterが生まれるのか。
生まれたとしても 彼の中の魔物を
封じ込めれることができるのか…。
王妃媽媽は懐妊するのか…。
そして、無事に出産できるのか…。
史実とは異なりますが、2014-15年の
リクエストで さらんさんがお書き下さった
「龍の咆哮」のようになればいいな…と
秘かに願っているファンのお嬢様や
お姉さま方も多いのでは…|д゚)。
さらんさん♥
週末の夜、ゆっくり過ごせてらっしゃいますか?
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ウンス、やっと未来の心配事を
ヨンに伝える事ができましたね。
二人で分かち合えば恐いもの無しですよね!
此れからヨンが、どう動くのか?
ドキドキが止まりません(^^;
さらんさん❤
何度でもお願いします(苦笑)
歴史を変えてくださいませ~~
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うわぁーどうなるのこの先‼︎
さらん姉さんドキドキが止まりません。
早く次が読みたいです。
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このシリーズが始まってからドキドキがとまりませんでしたが、ヨンが秘密ごと背負うと言ってくれて、これで、これから先どんな事が起きても
二人で乗り越えて行ける!
ヨン!頼んだよ!
ウンスを不安の中に一人にしないでね!
手を離さないで心を守ってね!
さらんさん!いつもステキな話しをありがとう!
BIGBANGに元気をいっぱい貰って来ましたか?