紅蓮・勢 | 23

 

 

「明日、行くんだ」
テマンが俺に向かいそう言って頭を下げた。
「判っておろうな」
その声に顔を上げ奴の目を見る。
「まだヨンアを護れるほどではない」

その声にテマンが頷く。
「わかってる」
「それならば良い。テマナ」
「なんだ」
「下腹に紙風船を入れてみろ」
「下腹に、紙風船」
「此処だ」
奴の丹田を掌で押さえ、場所を教える。

「此処に、小さな紙風船を入れてみろ」
奴が目を白黒させながら、それでも丹田に息が入るのを当てた掌の奥で感じる。
「息を吐け」
その呼吸を感じつつ、吐き切ったところで
「吸え」
そう言うと、深い息がゆっくり回ってくる。

「吐く時は、ここにある」
吸い切ったところで、掌で丹田を押さえて示し
「紙風船を萎ませるつもりで吐いてみろ」

丹田に力を集め、ゆっくりと呼吸が落ち着いてくる。
「もっと大きく膨らませろ」
テマンが頷きながら、静かに呼吸を繰り返す。
「もっと、もっとだ。お前の体を包むほど、大きな紙風船だ」
奴が楽し気に、調息を繰り返す。
まだ餓鬼か。風船遊びが楽しい年頃とはな。
それでも丹田に気が集まってくる。

「何時でも此処に息を入れろ。お前の体の中心は此処だ」
「わかった」
「紙風船を膨らませるよう。忘れるな」
「うん・・・なあ」

丹田から手を離すと、テマンが俺に目を当てた。
「何だ」
「戦から戻って来たら、また教えてくれるか」
「当然だ。まだ何も教えておらん」
「そうか」
「乗り掛かった舟と言うたろうが」
「・・・ありがとう、な」
テマンが照れくさそうにそう言って笑う。
「習得してから言え」
「じゃあ、行ってくる」
「ヨンアによろしくな」
「絶対に言う。伝える」
「ではな」

そう残し、奴に背を向けて歩き出す。
この背に向かいテマンが大きく叫んだ。
「ありがとうな、ヒドヒョン!」

ヒョンと呼びつつ、敬語を使わぬとはどういうことだ。
そこからヨンアに叩き直させねばならん。
いや、奴も俺に敬語など使わんな。
シウルもチホもだ。全くどいつもこいつも。
テマンの声に振り向かぬまま手を上げ、東屋の石段へと戻る。
しばらくは、ゆるりと昼寝の日々が戻るか。

「ヒドヒョン!!」
「何だよ、テマナは帰ったんだろ。 俺たちにも教えてくれよ、その息ってやつ」

石段に向かう俺に向かい騒がしい声を上げ、シウルとチホが駆け寄ってくる。
忘れていた。こいつらは残っている。
「なあ、なあヒョン」
「教えてくれよ、奴だけ特別扱いはずるいだろ」

そうじゃれついてくるこいつらの声。
昼寝の日々は、儚い夢だったか。
首を振りながら、俺は空を見上げた。

 

 

 

 

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6 件のコメント

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    いいなぁ~!いいなぁ~~~~!!
    ヒドは結構好きなキャラです( ´艸`)
    だからヒドが人とかかわる、人に懐かれる、
    人に頼られる(まぁ、ヨンアは最初からだろうけど)
    そういうのがすごくすごく嬉しいよо(ж>▽<)y ☆
    ヒドこそ今だけでも幸せに戸惑って欲しい!!
    そう願わずには・・・・(-^□^-)

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    さらんさん、今朝も素敵なお話をありがとうございます。
    思わず、ヒドヒョンに呟いてました。
    嬉しいくせに…。って。( ^ω^ )
    頼もしい後輩達が出てきて、それも自分に懐いてくれるのが、くすぐったいのでしょうね。
    ヨンとウンスの出会いをきっかけに、彼らをとりまくたくさんの人達が、新しい一歩を踏み出している様子を描いて頂けて、ワクワクドキドキです。
    おっと!
    仕事に行かねば!

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    >muuさん
    こんばんは❤超遅コメ返になり、申し訳ありませんでした…
    きっと嬉しいと思います。
    昏い井戸の中にいたからこそ、光の眩しさも温かさも
    誰より知っているヒドです。
    ただ、眩しすぎて暖か過ぎて、驚いているのだと。
    頑固さと石頭は、次男とそっくり(爆
    ヨンで頂き、ありがとうございました❤

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    >victoryさん
    こんばんは❤超遅コメ返になり、申し訳ありませんでした…
    ヒドヒョンはもう、初オリジナルキャラでありおまけにあんな設定だったので、
    victoryさまや皆さまに、普通に受け入れて頂けると
    ある意味ヨンより嬉しいです・・・
    ヨンの場合、受け入れられなければそもそもこのページに
    お立ち寄りではないと思われww
    良かった良かった、ほんとにヒドヒョンにお気持ちを頂く度
    毎回そう思う私ですw
    ヨンで頂き、ありがとうございました❤

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    >くるくるしなもんさん
    こんばんは❤超遅コメ返になり、申し訳ありませんでした…
    あ、ヒドヒョンはもう、完全な個人主義です(爆
    身内だからです、それもヨンの身内、そして【迷迭香】で
    それをヒドヒョンに感じさせたテマンだからこそ。
    申し訳ないけれど、トクマンくんでは無理だったと思います( p_q)
    ヨンで頂き、ありがとうございました❤

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