2014-15 リクエスト ｜ 雨雫・1

【 雨雫 】

寝屋の明け方。

窓より差す光が色を持つ前、そして温みが戻る前。
薄明るい夜と朝の間に迷い込んだこの方はまた雨雫に暮れ、そして隠そうとする。

ただこの心の傷を思い出させぬために。
ただこの心に影を落とさぬためだけに。

******

「参りましょう」
差し出すこの手を握り締める温かく細い指にどう応えれば良いか教えてくれ。

「うん」
この眸を見詰めて笑い返す真直ぐな瞳に、何が映っているのか答えてほしい。

その姿を見失えば、声を聞けなくなれば、笑顔を見られねば。
共に居らねば生きては行けぬとあの時言った、慾の深さ故か。
それが今あなたを夜と朝の間の寝屋で、声を殺して泣かせているのか。

あなたのところに戻ってきたことに、これっぽっちも後悔はない。
あなたのところに戻れなければ、永遠に空に向かって問いかけた。
そこにいる？
二度と返らない声を頼りに、二度と見えない背中を追って、永遠に闇の中を彷徨い歩いて。

「参りましょう」
その声が聞こえるだけで。
「うん」
この声が届くだけで。
それだけでいい、他に何もいらない。
その声を聞くために、そしていつでも一番近くで答えるために、私は戻ってきた。
2人で生きていきたかったから。

だから離さないで。ずっとここにいて。
愛してる、その気持ちは変わらないから。
何かを犠牲にしたなんて思いたくない。
あなたと天秤に掛けるものなんてない。
心は全部、あなただけに傾いてたから。

ただひとつだけを除いて。私はぎゅうっと目を瞑る。

望むのならば、何でも差し出そう。心だろうと、命だろうと。
欲しいのならばそう言ってくれ、喜んで差し出してやるから。
怖いのはそんな風に黙ったあなたが、きつく目を閉じる事だ。
両の瞳をきつく閉じてしまえば、心の裡を読むしかない事だ。

愛おしすぎれば想像は悪い方へとばかり向かう。
辛いのか、飽きたか、顔を見るのすら嫌なのか。

敵の肚を探り続け外すことすら稀になったが、あなたの心の裡だけは探って当たった例がない。
冷静になれば繙けるものを、冷静になれた例がない。
己らしからぬその失態にただいつも唇を噛むだけだ。
あなたを見誤り読み誤れば尚更泣かせる、それが怖い。
明け方にその頬に降る、静かな雨雫など見たくない。

あなたの事が大切すぎて、その目をまっすぐ見て今の気持ちを伝えるなんてできない。
あなたは失ったものが多すぎる、私を追いかけるために。
ねえ、どうやってそれを埋めてあげればいいの？

あなたの同僚、あなたの部下、あなたの名声、あなたの立場。
私のせいでめちゃくちゃになったことがたくさんある。
でもそれを伝えれば思い出させてしまう。辛かった時のことをたくさんたくさん。

あなたに失わせたものは、大きすぎるのに。

そして私に1つだけ残ってしまった痛み。
どうしようもない事だからあなたに言えない。言いたくないの。

ごめんね。ごめんね、騙すつもりなんてない。
ただ正直言うには今はまだ、心が痛すぎるの。

新リク話【 雨雫 】 開始です。

154. 諦めず
『ヨンの涙』をリクエストします。

天界を恋しく想い、独り涙するウンスがいます。
どんなに隠しても、ヨンに気付かれてしまいます。
そこで二人改めてそれぞれの天界への想いを話し合います。
相手を思うばかりに涙する二人…
そのあとは勿論、二人の絆は更に強く…ですかね(^-^)v

さらん様のヨンは本当に男前です。
だからこそ、泣きのシーンをお願いします！
そして私も泣かせて下さい！（ユーちゃんさま）

リクありがとうございます❤
何が驚いたって、このリク話シリーズだけで既に
100以上書いてたことなのですΣ(ﾟдﾟ;)
100overにして、ヨンの裏嘆、いえ、堂々と男泣き？
暫しお付き合い頂ければ嬉しいです。

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