信義【三乃巻】~壱~ 迫られた選択・9

 

 

 

迂達赤兵舎の門より、徳成府院君奇轍の弟キ・ウォンが、私兵を引き連れ堂々と立ち入る。

王様の最近衛であるこの迂達赤を、蹂躙せんと待ち構えている。
それでも王様の最後の信頼を失った迂達赤には 何をすることも出来ん。

少し前には確かに隊長もいたその庭の 青々とした草。
それを馬が、私兵たちが、名目を携え嬉しげに踏み荒らすのを、唇を噛み見つめることしか。

先刻の宣任殿での騒動。
階を下り俺の前に立たれた王様は、俺に向かい静かにおっしゃった。

「まことに、隊長と通じていたのか」
「王様!」
膝をついた俺が頭を深く垂れお呼びすると

「もう良い!!」
王様は一言だけ、烈しく吐き捨てた。

「迂達赤は直ちに装備を解き、全員兵舎へ戻れ。謹慎である。今直ぐに」

それだけおっしゃり、宣任殿を出ようと、王様のお使いになる入退扉へ戻りかける。
その背に向かい
「王様、しかし王様の守りが!」
俺がお伝えすると、王様は足を止めた。

「守りなど」
振り返り口の端を歪めて、王様はおっしゃった。
「考えるなら、最初から起こすまい。起こすということは、考えておらぬのだ。
一先ずは詮議する。まことにそうしたことがあったのか、なかったのか。
それまでは迂達赤全員、沙汰を待て。良いな」

そう残し、王様は付き従う内官を連れ、静かに殿舎を退出された。

キ・ウォンの一団とその私兵が、兵舎の中に平然と踏み込み、指揮官さながらに
「逆賊チェ・ヨンの手下ども、 直、悪行は暴かれよう。
潔白だと思うものはこの兵舎に留まり自重していろ。
もし反逆の気配を見せようものなら迂達赤兵舎は火の海になると、覚悟しておけ」

最後には立派に脅しまでかけ俺達を嘲笑うその姿を、黙って睨むことしか 今の俺達にはできん。

奴らが言いたいことのみ言って迂達赤兵舎を出ていくと同時に、兵たちが俺の周囲に集まって来る。

「どういう事ですか!」
と、トルベが。
「隊長は獄に入ったのですか?」
と、トクマンが。

兵舎の中重い空気が垂れこめる。
隊長が謀反など天地が返っても在り得ん。
逆賊になるような面倒を負うなど、考えられん。

しかし逆賊と言うからには、隊長は慶昌君媽媽と医仙を連れ、既に媽媽の謫居先より出ている。

そのような事を隊長がされるはずがないと思っていたことが起きている。
何があった。そして後を追わせたチュソクは、どのようにして隊長と合流するのだ。
そもそも合流できたのか、まだなのか。

隊長はこの騒動を聞きつければ、どう判じ、どう動く。

面倒くさがりなあの隊長が慶昌君媽媽を連れ、更なる面倒に首を突っ込むとすれば。
それは、よほどの危機が迫った証。

そして王様の命が下った直後、突然現れた奇轍の手下たち。
考えろ。何と言って迂達赤の奴らにこの状況を説明してやれば良い。
どのようにしてこの散らばった、 折れそうな迂達赤としての誇りと士気を再び取り戻せば良い。

隊長ならばこんな時にどうする。

分からん。
混乱した頭で俺はきつく固く目を瞑った。

 

 

 

 

チュンソク、悩みの刻。

昨日の話が大量かつ長すぎて本当に申し訳ありません・・・
なるべく小説に近い感じで読んで頂きたく、かなり大量UPで進むかもしれません。
さすがにあれほど大量+長い一話は控えようと思いますが・・・
大丈夫、と思われれば、ポチ頂けると嬉しいです。


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14 件のコメント

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    イヤイヤ‥大量であろうが、長かろうが、短かろうが、しっかり読んで受け止めてまいります故に何らお気遣いなく(^_^)/~~
    ただ‥このまま行くと、悲しい慶昌君様との別れが‥避けては通れぬのですよね(ノ_・、)
    今から泣きそうなんですけど‥
    一度書いたコメが消えた?同じコメントが行ってたらごめんなさいm(_ _)m

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    分からん。混乱した頭で、俺はきつく固く、目を瞑った。…… チュンソクが副隊長から隊長になれなかったのは、こういうところですね。(チュンソクに失礼ですが) でも隊長を信じて、その状況を考えるのはさすがです。今はチュソクを行かせたのがばれて、あわわですが。結果はああなるから、やっぱり、この人以外に副隊長は務まりません。大量の更新、全然OKです。結構忘れてることもあったりで、納得しながら、読んでます。この頃のヨンの髪型が好きなので、若いできあがってないヨンを振り返るのは、いいですねえ。あのダークなヨンがウンスによって、徐々に変化していくのもいいです。

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    さらん様、こんにちは❤
    迂達赤にとって、しばらく不安で辛い時間が続きます。
    ヨン不在の迂達赤に降りかかった陰謀。
    チュンソクの困惑と悩みは尽きません。
    どんなに面倒くさがりで、いい加減に見えようと、真実はその真逆。
    統率力に長け、策士でも有り、腕が立つ。
    超頭が良くて、超イケメンな、そんな隊長の背が見えなくなれば、チュンソクでなくても何をすれば良いのか見当も付かないですよね。
    そして、チュンソクの悩みなど比べものにならないほどの苦しみがヨンを襲うのです。
    あ~想像しただけで泣きそう(ToT)/~~~

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    ウダルチ達が跪いた後に、王様から謹慎を命じられましたか。もう王妃様のお顔も見ずに御殿に移られたのでしょうね。
    プジャン、ウダルチ達に何も答えられません。状況もわからない。私兵達に武器も押さえられてしまった。ウダルチ達の暴走を止めて、アタマを冷やせ。
    拳を握って耐えるんだ。プジャン!
    請う続き(^^)

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    こんにちは!さらん様。
    大量UP&長いお話、全く問題ないですよ。
    ドラマ本編に沿ったお話なので、
    大丈夫ですよ!
    さらん様さえよろしければ、このままの
    ペースで続けて下さいませ。
    キ・ウォン出てきましたね~
    私結構あのキャラ好きでした。
    あの声すごく特徴ありますよね。
    兄の権力を笠に着て、偉そうにしている割には小心者で‥ウンスの「レッドクロス」にビビっていましたよね(笑)あっさり殺されて少し可哀想でした。
    最近のさらん様、大変ポチ画像にハマっておられるご様子。
    毎回楽しみにしておりますよ♬

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    >えみりんさん
    こんばんは❤コメありがとうございます
    もう基本はDVD筋なので、慶昌君媽媽も
    チャン御医も、トルベも・・・
    今まで避けてた部分を、全てクリアにしたうえで
    紅蓮以降に戻りたいと思っております(ノ_-。)
    本当なら書きたく無いなーと思ったり、未だに
    するのですが。
    いえいえ、コメこれが初めてでした。
    消えたのに、また書いて頂けて嬉しいです(*v.v)。

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    >チェヨン1さん
    こんばんは❤コメありがとうございます
    チュンソクは、私の中では「考えすぎNO1」
    いらないから!そこもっとシンプルに!という
    そういうとこまで目が、気が回るだけにw
    この頃のヨンは、本当に過渡期な感じがします。
    人間らしさとか、男の気構えとか。
    それを濃縮エキス化したのが、うちのヨンです(爆
    髪、結構マイナーチェンジしましたよね。
    最初のエクステ多用ウエーブから、最後のお髭のあの短髪まで・・・
    髪形にも注意しながら見てみます❤

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    >夢夢さん
    こんばんは❤コメありがとうございます
    そうなのです。考えなしの面倒くさがりに見えるのは
    単に生気がなかったからでは、と今になると思ったり。
    実際はそんなダラ男じゃない、と、以前ミノ氏が
    どこかのインタビューで語っていたような(〃∇〃)
    そうですね、この後のヨンの痛みはもう・・・
    ただ、これを通り抜けてまた一つ大きくなる漢。
    痛みも受け止めてくれーと、祈りつつ。

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    >のりちゃんさん
    こんばんは❤コメありがとうございます
    そう言って頂けると嬉しいです❤
    是非また、覗いてみて下さいませ(*v.v)。

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    >ポチッとなさん
    こんばんは❤コメありがとうございます
    迂達赤は王命で動く部隊、というのがあるので
    たとえ奇轍がどれだけ干渉してこようと、
    あの一味の総意だけで、閉じ込めたりはできないと
    そう思い、この部分はぽちっと付け足しですw
    副隊長、悩みの刻、でもこの後ヨンもチュソクも
    みーんな悩みます!副隊長、君だけだはない!と
    思わず喝を入れてみたり、しております(*v.v)。

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    >わいやーさん
    こんばんは❤コメありがとうございます
    ありましたね、レッドクロス(w
    まあ兄貴のF/U/*/Kと同レベルといえば同レベルw
    DNAは争えませぬ≧(´▽`)≦
    そうなのです、今ポチ画にも悩んでおりまして
    最近画像づくりが楽しくて仕方なく。
    もう、或日、迂達赤バージョンやらなにやら、
    いっそ心機一転、全部張り替えちゃおうかなーとか
    むくむくと、考えております❤
    お楽しみ頂ければ嬉しいです(*v.v)。

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    留守を預かるチュンソクの悩みは尽きる事がなさそうですね。
    しっかりとヨンの不在中のウダルチの結束をまとめ上げるのがプジャンの役目。頑張って~と応援したくなります。
    この先、しばらく辛い事が続きますね。考えるだけで、涙が出そうです。

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    >ままちゃんさん
    おはようございます❤コメありがとうございます
    そうなんですよね・・・ここから8話、中盤くらいまでは
    どんより重い感じと緊張感で、書くのもかなり。
    チュソクが暴れ、ヨンが湖に落ち、王様が身を決めるころより
    急にお話が動きだすのが、書いてて良く判ります。
    もうしばし・・・(´・ω・`)

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