【 迫られた選択・1 】
隊長への伝言を副隊長に言付かり、伝えに急ぐその道中の山で、陽はすっかり翳り落ちた。
辺りにはただ闇が広がるばかり。それで幸運だった。
でなければそのまま奴らに向かい、 全速で騎乗したまま、突っ込んでいたかもしれん。
俺は暗い山の中、木の隙間より揺れる灯に気付き、手綱を引いて馬の足を止めた。
そっと鞍馬より滑り下りる。
そのまま息を殺して馬を牽き、近くの林に身を潜める。
よく慣れた俺の馬も、そっとした足取りでそれに従う。
木陰より透かし見れば、火を焚いた数十人の兵が道を塞ぐよう、少し離れたところに集まっている。
俺を急使に出す際の、副隊長の言葉が蘇る。
“このままでは隊長は、反逆者にされかねん。
王も疑い始めた。とにかく急ぎ、皇宮へとお戻り願うと”
その瞬間。
背後に感じた気配に俺は腰の太刀を引き抜くと同時に振り返り、後ろの気配の喉元に迷わずその刃を突きつけた。
「わ、わ、わ、わ」
その気配、俺の真後ろに寄っていたのは一人の男だった。
声の割には慌てた様子でもなく、俺の太刀の前、己の喉元を手で庇いながら声を上げる。
背負った弓。ざんばらに降ろした髪。
獣の皮でこさえた革袋を下げているところを見れば、狩りを生業としている者か。
「敵じゃない」
気配を殺し真後ろまで近寄って置きながらか。
その言葉を鼻で笑い飛ばし、彼奴を睨み付ける。
「俺を知ってて言っているのか」
敵でないというならば、俺の身元を知っている可能性は高い。
隊長のところへ辿り着く前に、下らぬ足止めを喰らうわけには行かん。
男の目が素早く俺の身に着ける装備を見て取る。
「その出で立ち、迂達赤とお見受けする」
「山奥の狩人に、迂達赤が分かるのか」
真実か、はったりか。男は俺を見て更に声を顰めた。
「チェ・ヨン隊長を迎えに行くのか」
その瞬間、俺は無言のまま更に男に一歩詰める。隊長の名を口にするとは。
「何者だ」
返答次第ではこの場で斬り捨てねばならん。
「チェ・ヨン隊長を見つけだし、 お連れせよと命を受けた者」
改めてその弓を見る。 簡素な急拵えの素人の弓ではない。
そこに光る弓束に施された細工が、この男がただの山奥の狩人ではない事を物語っている。
俺はひとつ大きく息を吐き、太刀を納めた。
「江華島は、大変な騒ぎです」
二人連れとなった山中。
あの兵たちを躱すために山道の奥を踏み分けながら、男が俺に伝える。
「チェ・ヨンが慶昌君を連れだした、王位簒奪の慶昌君の擁立を図る逆賊は百名以上、いやもっといる、そんなもんで」
「馬鹿げた話だ!」
「何もご存じない。江華島で官軍に密告があった。それで奴らは既に知ってたんです。
チェ・ヨン隊長がいつここに来て、 慶昌君と共にいつ動くのか。全てを事前に」
その言葉に、頭ががんがんと鳴る。俺は息を呑んで男に訊いた。
「その官軍への密告は、いつあった」
まさか、まさか最初からか。
「昨日の昼だそうです。すでに今日は、 全軍待機の命が下ってました」
揺れる足許を、俺は踏みしめる。
隊長は、嵌められた。
******
「あの男を信じるべきではなかったのです。何度もそう申し上げたではありませんか。
奇轍が何を申したかは存じ上げませんが、王様、賢明な判断をお下しになって頂きたいのです」
灯りの揺れる康安殿の私室で、チョ・イルシンが滔々と捲し立てる。
そう言い募る姿を尻目に、一つのことしか頭に浮かばぬ。
「チェ・ヨンは所詮奇轍の手の者。
でなくば医仙を連れ、慶昌君の元へ走り、幾多の逆賊の援護を受け、幽閉先から逃亡するなど。
奇轍の庇護なく単独では到底成し得ませぬ、王様」
誰の何の声も、この耳も、心も打たぬ。響かぬ。
チェ・ヨンよ、お主は余を裏切ったのか。誠にそうであるのか。
******
「江華島より次々知らせが」
坤成殿の薄物の仕切りの向こうで王様の筆頭内官、アン・ドチが頭を下げる。
妾にそのような事を聞かせ、どうせよと申すのか。
この身を賭し、無辜の武閣氏を幾人も傷つけた奇轍邸への外出すら、形式ばかりの迂達赤の迎えの使いを寄越しただけで、王様は無視したというのに。
「事態はいよいよ深刻です、媽媽」
チェ・ヨン、必ず生きて戻れ。そなたの王妃の命である。
さもなくば妾は・・・これ以上どうして差し上げれば良い。
始まりました。 小説 2巻の続きより。DVDは7話目の初めでした。
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こんばんは!さらん様。
名場面の数々、わかります!
DVDを観ていてもなかなか先に進めませんよね(笑)
私にとってこの辺りすごく好きなシーンが多いのですが、ドラマ本編の中でもここが一番キツイ所でもあります。
多分ヨンの声、すごく悲しくなるのでしょうね(;_;)
でもどうしても乗り越えていかなければ‥ですね。
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いよいよ 本編ですね
俺はチュソクですね
私はテジャンの次にチュソクが好きなんです…うれしいです
ドラマはサラッといくので さらんさんに う
~~~んと 掘り下げていただきたく 笑
楽しみです
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さらん様、こんばんは❤︎
いきなりのチュソク。
泣きそうです(T . T)
この場面の少し前、ウンスがヨンに、
「どっちが味方?」
「さあ……?」
「じゃあ、逃げましょ‼︎」
ウンスの、その言葉に、ヨンの顔がパアッと明るくなり、キラキラした眼で、ふたりの逃げ道を指し示したのですが、あの顔が忘れられないのです\(//∇//)\
チュソクが訪ねるまでに、テマナには魔の手が伸び、ヨンには、暫しの心安らかな眠りが……。
さらん様流にどう表現していただけるのか、本当に楽しみです❤︎
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ちょうど二巻の再々読終わりました。いよいよ三巻の始まり!待ってましたー
チュソクはテジャンに会えるのか。王様は信じてくれるのか。王妃様の胸中はいかに。なによりテジャン、キョンチャングンさまを連れてこの先どうするのでしょうか。テジャンに策ありやなしや。うー 目が離せない! ワクワクです。p(^_^)q
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一度、自分の見た信義をおいといて、ばらばらにして、さらんバージョンを読み取るのは、ジグソーパズルをしているようです。ここでこう感じたのは、次のシーンにつながる、そこで初めてピースをおいて絵が完成していくんだろうな。そういう風に感じています。 改めて7話を見て、この辺りは、言葉が足りない時期ですよね。まだ信頼関係ができてないし、離れているから、状況がわからない。映像を見ているものには、状況がわかるのですが、登場人物には、わかっていないのだから、その立場になって考えなければならないんだなあと思いました。(ここが今回の最大の発見ですね、気づくのが遅いけど) あらすじ読むのって、難しいです。
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おはようございます
いよいよ、三巻の始まりですね。
久しぶりのチュソク~。なんだかうれしい。
これから、どんな世界が広がっていくか、楽しみです。
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>わいやーさん
こんにちは❤コメありがとうございますここから、既にUPされている部分を除いて
ザクザク行く予定なのですが、今回どうしても
書きたいキャラは、2人。
一人は徳興君なのですが、もうひとりが
あまりにさらりと流された方ゆえ・・・
思い出してね、的な部分で、書きます。
辛い声も多いと思いますが、でも今幸せですから♡
それを信じて、書きたいなと。
そうです。乗り越えれば、きっと良いことが( ´艸`)
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>ゆきんこさん
こんにちは❤コメありがとうございます
チュソカ~~!
もう、前回ここでチュソクを書いたのは
迂達赤の蒼天だったので、
今回元気なチュソクを書いて、嬉しさ爆!
でも、さっそく みあなだ です(´・ω・`)
迂達赤、掘ります。私も大好きですから♡
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>夢夢さん
こんにちは❤コメありがとうございます
私もそこ、書きたかったのです!
でも、もう2巻に格納されている・・・っっ!
飽くまで三乃巻と銘打ち、出てないとこからね、と
決めていたので、ショボン(´・ω・`)でした。
可愛いですよね、あの一瞬のヨンの顔!
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>ポチッとなさん
こんにちは❤コメありがとうございます
こんな感じで、始まりました!
ヨン、正に本能の男の頃です。
今の、紅白牌を用いて作戦を立て、
戦場を駆け抜けて兵に檄を飛ばす大護軍とはあまりの違いに、
ええええ、でもありますが。
それでも成長している中で、以前のヨンがちらほらり?
ああ、ほんとに楽しんで頂けたら、何より嬉しいです❤
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>チェヨン1さん
こんにちは❤コメありがとうございます
そうなのです。私の中ではすでに阿吽の呼吸の
王様と王妃媽媽、でも最初はこうでした。
そして忠に生き、義に散ったチュソクとトルベ、
こんな風に、隊長を慕い、信じ、その背を追って来ました。
紅蓮で、やたら皆が背を追うと連呼していますが
それはこの下敷きがあったんだ、と残したかった
今となってはヨンのお膝が定位置のウンスですが
最初の頃は、こんなでした。懐かしいです。
そしてこれから出てくる2人の今後のキーパーソンは、
こんな風に絡んでいた、と先に思い出して頂きたかった。
ましてそこに、歴史をベースにしたさらん解釈を加えて見たかった、と
随分と、欲を張りました。
でも、最高に楽しいです。
そしてチェヨンさまにも皆さまにも、楽しんで頂けたら
最高に、嬉しいです( ´艸`)
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>ままちゃんさん
こんにちは❤コメありがとうございます
始まりました❤もう一度始めたこの勢い、
此度は、最後まで乗り切り、そしてその最後が
紅蓮を始め、今までのさらん話と齟齬なくリンクしていれば
最高に嬉しいな、と思います❤
わくわくですヾ(@°▽°@)ノ