夜になると、気温が下がって来る。
まだ夏は始まったばかり。
そしてここは、ソウルよりずっと北。
肌寒いけれど、頭を冷やすにはちょうどいい。
私は部屋の外で、回廊の縁側に腰掛けて、旅籠の庭をぼんやり見ていた。
どうしてだろう。
何故ソンジンを見ていると、あの人を思い出すの。
何故ソンジンの脈診をした時、あんなに動揺したの。
私にとっては、あの人しかいない。
全てを懸けて幸せにしたい人は、あの人しかいない。
ソンジンに対する気持ちとは全然違う。
それは、はっきりと分かってる。
ソンジンも武人だから?
それとも先生との約束を守ろうとする、あの姿勢が、あの人に重なるから?
どれも当たっているようで、でも的外れな気もする。
胸の中で、何かが引っかかって、ちくちくする。
「ウンス」
呼ばれる声に私が振り向くと、部屋の扉を静かに開けて、ソンジンが顔を覗かせる。
「眠れぬか」
そう言って部屋の扉の枠に手をつき、私に向かって少し首を傾げる。
「大丈夫か」
こうして座ってその目線からソンジンを見ると、本当に背の高い男だと改めて思う。
あの人みたいに。
そしてその声を聞いていると、今日は静かに眠ってしまいそうで怖い。
あの人の夢を見ずに。
私は頭を振ると、思い切り両方の掌で、自分の両方の頬をばちんと叩いた。
考えなくても良い事、考えなきゃいけない事。
まずは、手紙を仕上げて。フィルムケースに入れて。
次に、あの石を探しに行く。
ケースを、あの石の下に入れて。
そのまま天門まで行って、開くのを待つ。
今度こそ、あの人のところに戻るために。
「どうした」
いきなり頬を叩いた私に驚いたのか、ソンジンが私に手を伸ばしかけて、思い出したようにその手を宙で止めた。
良かった、触られたらまた叫ぶところだった。
ソンジンはそのまま私の隣に来ることもなく、部屋の扉を開け放し、そこに座り込んだ。
「そなたが逢いたいのは、愛しい男か」
私はソンジンに背を向けたまま、庭を見て頷く。
「ならば、高麗に戻らなくて良いのか」
そのソンジンの問いに、私は迷う。
本当の事を話していいのだろうか。
冬の薬房で初めて会ってからここまで一緒にいて、ソンジンを疑う理由は今まで一つも見つからない。
私は体を半分ずらして、ソンジンの方に向き直った。
「信じてもらえないと思う」
ソンジンが私のその言葉を聞いて、眉を顰める。
「何故」
「余りに、突拍子もない話だから」
「何が」
「私がこれから言う事が」
ソンジンは、咽喉の奥で音を立てる。
「ウンスが突拍子もないのは、もう知っている」
私は深呼吸して、ソンジンの目を見た。
「私のあの人は、高麗にいる。
ただし今の高麗じゃなく、天門の向こうの高麗に」

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今日のクリック ありがとうございます。
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今日は三つ四つアップされてますね♪
( ´∀`)
私共はとってもとっても嬉しいのです
が…
今朝がたもトップ作品は未明にあげてらしたし…
疲れを出さないで下さいね(丿 ̄ο ̄)丿
主さんはサービス精神が旺盛…いや…もはや犠牲的の域に達してないか…
心配になるほどです。(´-ω-`)
つたない私のコメントにも丁寧にお返事いただいたりして
(ノд<)
追っかけ回す私共が一番いけないのでしょうが…
どうか無理なさらないで下さい(*´・ω-)bね
でも…(´・ω・`)直ぐ投稿チェック入れる私をどぅか許して(笑)
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いよいよ少しづつ天門が開くそのときが近づいて来ました。
ソンジンが何者か、分かるときももう、目の前。
ずっと謎だった彼は本当誰なのか。また覗きに来まぁす(`・ω・´)ゞ
あ、祝言~今日やっと終了しました♥よかったら是非(●´ω`●)
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重なる部分があるけれど事情を話すことで違うということがきちんと認識できるはずね。そしてソンジンならば疑わずに受け入れてくれそうです。
今は彼しか頼れない。頼りたいわけではないけれど仕方がない。ヨンも許してくれるはず。
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う~~~ん。なのです。
掌の上の私は、毎回“う~~~ん”と噛み砕き、これからどうなるのか想像を巡らせ…。
ソンジンは実は天門をくぐったことがあるのかな?とか。
ここのところ色々考えてしまって、勝手にブルーモードに突入していました。
さらんさんのお話の続きは気になるし、早く知りたいし読みたい。
だけど、読み進める=いつかくる最終回に近付いていると思うと、悲しくなって(我ながらあほみたいだな~)
そんなブルーモードの最中に、一服処が出来上がり、ヨンが常にウンスを膝に座らせているとの甘々なお話が(*´Д`*)
お陰様で少し浮上してきました。
いつまでも掌の上にいたいみゅうでした。
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さらん様、こんばんは❤︎
やっぱり、ソンジンはヨンとしか思えない。
100年先の、ウンスのヨンでは無いけれど、絶対に無関係じゃ無い。
イムジャとは呼ばないけれど、仕草が眼差しが、ヨンと重なって落ち着かない。
ごめんなさい。また勝手な妄想が…。
こうして今夜も、さらん様の仕掛けた罠にどっぷりとはまってしまう私です❤︎
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100年前のお話し、とっても気になってました。さすがでございます!毎回毎回楽しみにしてます。次回が気になるぅ~♫
ソンジン氏はきっとせつないことになるんでしょうねぇ…
致し方ありませんが。
見守らせて頂きます!
それにしても背景の調査力に脱帽です!素晴らしいです!仕事もあるでしょうにいつ調べてはるんですか⁈
お身体壊さない様にお願いしますね、無理なさらないで下さいませ。
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それが、今後に影響するのかな?
それとも、信じて協力してくれるのか?
やはり、ソンジンの声は、ヨンに似ているんでしょう。
そして、大きな体躯に雰囲気。。。
そう言ったものが、ウンスを混乱させているのかもしれない。
それと脈、ヨンと同じ様な感覚だったのかしら?
ヨンと何か関わりがあるのかな?
今日は、「Carry On」ひたすらウンスを愛する、ヨンの心情の様な歌詞です(*゚.゚)ゞ
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それにしても、ソンジンって何者?
種明かしありますよね?
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>みやびさんさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
これはすべて私の身内の「書きたい欲」の所業です。
書かないと、駄目なんですきっとw
廃人道、極まれり!(`・ω・´)キリッ☆
犠牲的精神は、読み手のみやびさんさまや
皆様です。
こんな拙い話をここまで可愛がって頂けて。
あ、ちなみに本編は、もう8月とかに書きあげてあるのを
順番にUPしているだけなので、全然問題なしですw
今、カテゴリーに入っている分は、随時更新でない限り
全て完成済です。なので、全てわかっている手品を
種明かししている気分が、なくもないのですが。
ご心配をおかけして、却って申し訳ありません❤❤
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>ののさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
夏です。
ヨンとの距離が一歩一歩近づき、
それと共にソンジンとの別れも近づいています。
ウンスオンニ、気づいているのかいないのか。
祝言、わーい❤
ぜひ覗きに❤ | 壁 |д・)/ ヤッパリ マダショウシンモノ
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>あみいさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
この後、ああ。緊張します。
いや、誇張でなく、私の筆力がなく、
一言でも過不足があれば、伝わらないところがいろいろと。
ううう、緊張します。
あと1/3です。もうしばしお付き合いを・・・
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>みゅうさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
美優様に、そんな風に思って頂けること、
本当に本当に。
私も、大切なみゅうさまや皆様、そして
手放したくないお話ができました。
だから、大丈夫です。最終話はいずれ必ず
UPしなければいけませんが、
もしかしたら、来年も再来年もこの調子で
すっと書いているかもですから❤
そのうちに、信義の再放送やら、ミノ氏の新作やら
いろいろ楽しいことがあるはずですから。
最近は、ヨン愛が高じて、ミノ氏も愛おしく
思えるようになった私です。
(しかし、どう見てもタメには見えませんが)
もし、もし万が一、信義以上に心震わすお話に出逢えたら
それで二次並行で書くかもしれませんがw
だから、今は吾亦紅二、そして、これから続く
イムジャカポーのお話に、
全力で、挑みますとも!(`・ω・´)ゞ
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>夢夢さん
こんばんは❤コメありがとうございます。
罠だわな、と回文ではないですが回文もどきを
呟く、深夜の私ですwww
今回は、いろいろあって、ソンジンのモデルも決めず
皆様にも自由に妄想をお願いしている次第ですが。
ううん、とても興味深いコメがたくさん。
ここから、私の筆力がかなり試されますが
ううう、緊張です。うぃんぱち君のキーを叩く
指も震えて、タイポで変な変換になること多々w
在り得ない程に馬鹿文が画面表示され
たまに驚きます( ゚-゚)( ゚ロ゚)(( ロ゚)゚((( ロ)~゚ ゚
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>doraさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
ソンジンは、かなーり切ない、でも彼にとっては
最高の終わりになる、かもしれません。
ならないかも、しれませんがw
見守って頂ければ、嬉しいです。
最初は、鍼も経絡もモンゴルもブッ飛ばしてたのですが
そうすると、ものすごーく嘘くさくなってしまって
ウンスが何をしているのか、ヨンに何をしたいのか
その為に何をしたか、全く見えずに
ただ帰りたがっている駄々っ子になってしまい(゚ー゚;
一気に、ガッツリ修正したのでした。
おかげで、まさにシンイな医療小説になるところでしたがw
本当に、私いつ調べているんでしょう(え
あ、仕事が暇なときは、頭の中で妄想はしています。
良い言葉が浮かぶと、ポストイットにメモメモ
φ(.. ) ワスレルナー!
そんな平日を過ごしていますww
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>mayuさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
Carry onは、ドラマ内でメヒとのシーンで
BGMに流れて+和訳が載っていたせいか
どうも、思い出すのは、あの赤月隊姿の
メヒと、ヨンなのです・・・・°・(ノД`)・°・
ああ、思い出しても泣けます。
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>ichigoさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
では、これだけネタバレで。
ソンジンが誰か、種明かしはありませぬ。
本当にすみません m(_ _ )m
ただし、私に書き切る筆力があれば
ああ!と必ず思って頂けるシーンがあります。
それまでしばし、お付き合い頂ければ。
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本家の3巻が中々出て来ない中、こちらのブログが
本家以上に内容が良くて、時に切なく時にワクワクしながら読ませて頂いております。
楽しみを有り難うございます☺。
タイトルもいいですね。
吾も恋うという名の地味なお花。
でも、一目見たら忘れられない花です。
私も、かつて長期入院していた時に知りました。
それを教えて下さった方はもういませんが。
思い出の花です。
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>チビママさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
想い出のお話を、ありがとうございます。
胸がいっぱいになりました。
我も恋う、
そんな風に、読んで頂ければ。
本家のお話とは、当然比べるべくもありませんが・・・
少しでもあのヨンの声が届けば、嬉しいです❤