吾亦紅 | 10

 

 

山の中腹まで上った野原で、私は薬草を摘む。
ソンジンは私の横で、ゆったりと立っている。

摘み場を移動するたび、静かについてくる。

「ウンス」
草摘みを始めて暫くして、ソンジンが私を呼ぶ。
「ウンス」
無視していれば、止まりそうもない。
私は諦めて腰を上げた。
「なに」

立ち上がってそう問うとソンジンは困惑したように
「まだ怒ってるか」
って聞いた。当り前じゃないの。私は思い切り頷く。

「だいたい、あなたいくつよ。私の方が絶対年上よね。年上に対する尊敬とかはないの?
呼び捨てにされるっていうのもいや。
触ったのはもういい、今回だけは目をつむる。
だけど呼び方だけは、どうにかならないの?」

ソンジンはそれを聞いて眉を掻く。
「年長か」
そして私の顔を、じっと見つめる。
「・・・そうか、そうだな」
もう一度、そうだな、と口の中で呟きながら、不得要領だといった顔で顎を撫でる。

「若く見えるとでも言いたい?お世辞は結構よ」
私が言ってやると
「・・・」
ソンジンは黙りこみ、そのまま私の顔をただ眺める。
これ以上の答えは望まない。
私はソンジンに構わず、またしゃがみこむ。

薬草、毒草の見立も、先生にずいぶん教わった。
蓬、土筆、蒲公英、黄芩になるコガネバナの根、吾亦紅の根。

いつかあの人を助けられるかもしれない、大切な宝物。
覚えなきゃ。知っておかなきゃ。

「・・・動くな」

突然ソンジンに言われ、私は驚いて手を止める。
「何よ」
ソンジンは人差し指を口に当て、長刀ではなく懐の短刀を抜き、次の瞬間私の真横の叢にそれを突き立てる。

私が身を竦めるとそのまま短刀を持ち上げて、私の目の前に突き出した。
毒々しい色をした蛇が一匹、頭を刺されて刃先にぶら下がっている。

「続けろ」

短刀の先から蛇をつまんで遠くの叢に放りながら、ソンジンが静かに言った。

 

 

 

 

楽しんで頂けた時はポチっと頂けたら嬉しいです。
今日のクリック ありがとうございます。

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村

 

 

14 件のコメント

  • SECRET: 0
    PASS:
    何だか、優しい人ですね。ウンスはまだプリプリしてますが(´ε`;)ゞ
    この方は本当に誰なんでしょう?
    100年前だからヨンのいる時代にはもういない方ですが、気になりますね~(≧▽≦)
    また覗きに参ります(*´∀`)♪

  • SECRET: 0
    PASS:
    ヨンにもウンスとは呼ばれたことが無いだけになぜあなたがそう呼ぶのよ!という気持ちですよね。「私に構わないで」オーラを出してもこの人も守ってやれと言われたら忠実に遂行する。無愛想だけど冷たいわけではない。誰かさんに似ている~。
    ウンスはヨンしか見ていないし考えていないけど、この男性は・・・
    長い間ウンスを読めていなかったのでとても嬉しいです。ありがとうございます。(って第10話でこれを書く私は変ですみません)

  • SECRET: 0
    PASS:
    「ウンス」、と呼んでいいのはいいのはヨンだけ。
    そう呼んで欲しい人も、ヨンだけ。
    でも、今は時空の彼方へ離されてしまった。
    傍にいない苛立が、「ウンス」と呼ぶソンジンに向けられているのだろう。
    「ウンス」という言葉にヨンを思い、どれだけ辛い思いをしているのか。
    しかし、護衛としての腕は良いようね。しっかり護ってくれてる。ちょっとだけ、許してあげようよ。

  • SECRET: 0
    PASS:
    我慢できない(>_<)
    気になる!!
    ソンジンの言動がヨンすぎて。
    ヨンではないヨンに似たこの人は何故ここにいるのでしょう…。
    気になって仕方ないからまたしばらく読むのをやめてまとめてじっくり読もうか迷います……。
    でもきっと堪えきれずに読みに来ちゃうと思います。
    さらんさんの掌で転がされてる感満載の最近の私です。
    タス(´;ω;`)ケテwww

  • SECRET: 0
    PASS:
    >モモさん
    こんにちは❤コメありがとうございます。
    この辺りから、モモさまや皆様に委ねる
    ウンスの気持ちが増えてくると思います。
    ただ、一つだけお約束するのは
    ウンスオンニは、他の男性には絶対に揺らがない事。
    ヨンが、他の女人に揺らがないと同じだけ。
    読む方を悲しくさせないと、誓います。
    信じて頂ければ嬉しいです。

  • SECRET: 0
    PASS:
    >ののさん
    こんにちは❤コメありがとうございます。
    誰なのでしょう。
    もう、脳内変換でお好みの方をお選びいただければ
    何よりも幸せですww
    確かに、100年後生きていらっしゃれば
    不老不死か!となります故Σ(・ω・ノ)ノ!
    それではホラーになってしまいます。
    私も、また覗きに伺います❤❤

  • SECRET: 0
    PASS:
    >あみいさん
    こんにちは❤コメありがとうございます。
    私も久々に描くウンスオンニ、げっぷが出るほど
    堪能しながら、書き書きしております(〃∇〃)
    最初、本編で煩い人だ!と思っていたのが
    今となっては遙か昔。
    現在のウンスオンニは、時に痛々しく純粋で
    時にちゃっかり可愛らしく、
    そして時に相変わらず天然でw
    楽しくて、仕方ありません。
    ソンジンの謎を含め、もう少しお付き合い頂ければ嬉しいです❤

  • SECRET: 0
    PASS:
    >mayuさん
    こんにちは❤コメありがとうございます。
    そうですよーオンニ、許してあげようよ・・・
    でないとストレスと高血圧で倒れるよー
    ヽ(;´Д`)ノ
    と、他人ごとのように言ってみます。
    腕はいいですね、確かに。そうでなければ
    先生も、護衛にはつけぬでしょう。
    ウンス、と呼ぶあのソンジン。
    その声を、mayuさまや皆様は、誰の声で想像するのか
    興味は尽きませぬ・・・

  • SECRET: 0
    PASS:
    >みゅうさん
    こんにちは❤コメありがとうございます。
    そこまでお気持ちを乱してしまい
    本当に申し訳ありません。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
    今、お約束できるのは、ウンスオンニは
    他の男性には絶対に惑わないという事
    そして、このお話が悲しい終わり方には
    絶対にならないという事、だけなのです。
    ゴメン(´;ω;`)ナサイwww

  • SECRET: 0
    PASS:
    安心しました(≧∇≦)
    コメントしたくても、不安で出来なかった私です(ーー;)
    ウンスの気持ちが、ヨン以外に揺らぐことは無いと言うさらんさんの言葉に安堵し、やっとコメントしました♪( ´▽`)
    2人の想いの強さ、改めて身にしみます!
    ソンジン、可哀想だけど…見守って…
    続き楽しみにしてます♪( ´▽`)

  • SECRET: 0
    PASS:
    >ルカさん
    こんにちは❤コメありがとうございます。
    ルカさまにも皆様にもご心配を頂き・・・
    本当に、ウンスとヨン❤幸せ者カポーです。
    重ねて言います。
    ウンスが他の男に揺らぐことは、決してないです。
    ただ、とても切ないかもしれません。
    決して、悲しい終わり方にはしません。
    信じて、もう少しだけお付き合い頂けると
    とても嬉しいです。

  • SECRET: 0
    PASS:
    さらん様、こんばんは❤︎
    女の独り歩きは、とても危険。
    特に、ウンスは、何処に居ても、何をしてても目立つので。
    ソンジンが、この時代に居てくれて、本当に良かった(*^_^*)
    いろいろ気になる存在では有りますが、ウンスの話し相手が出来て、ホッとしています。
    たとえそれが憎まれ口であったとしても、言葉の通じる相手が側に居てくれるのは、心強い事ですから❤︎

  • SECRET: 0
    PASS:
    >夢夢さん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    ほっとして頂ければ、嬉しいです❤
    高麗では目立ったウンスですが、当時の元は
    遊牧民族の遠征と侵略、国交などで、
    かなり多民族が入り混じっていたようなので
    あまり目立っていないと良いのですが(;^_^A
    地方ですから、目立つでしょうね・・・
    ソンジン、ここはひとつ話し相手として
    頑張って頂きたいものです!

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です