※ ラヴシーン、ありです。
イメージを大事にされる方には、お勧めしません。
Rではありませんが、未成年の方にもお勧めしません。
ご了承の方は、続きをどうぞ。
==============================
彼女は唇を噛んでしばらく目を伏せた後、意を決したように、睨みつける俺に目を合わせた。
「ごめんね、馬鹿な質問をしたわ。でも聞いて。私にも理由があるのよ」
「いかなる理由だ」
彼女は少し迷った様子で、唇を小さく舐めたあと、そっと続けた。
「だって・・・凄く上手になってるから、触れ方が。
前は手をつないでも、あんな風に優しく撫でたりはしなかった。
だから、誰かに手解きを受けたとしか・・・」
出し抜けの告白に、彼は思わず鼻白む。
・・・何だと。
「上手、に」
頭に血が上って散らかった考えを纏める為、彼女の言葉を鸚鵡返しにした。
彼女はこくりと頷いた。
「触れ方、が・・・」
彼女がもう一度頷く。
言葉尻で声が震えてしまう。
その震えを未だ怒りが続いていると勘違いしたか、彼女は俺の様子を無言で見つめて頷いた。
「何故それを先に。言われれば答えたものを」
俺は思わず相当に険しい顔をしたらしい。
彼女は泣き出しそうに、その眉を下げた。
「疑ったと思われても仕方ないけど、心配だったんだもの!遠距離恋愛したことないし!
でもどう聞いて良いか分からないし」
心配されたことは判った。
しかし聞き捨てならぬ事も言われた。
四年前の俺には、配慮がなかったのか?
「四年前の俺は、触れ方が下手だったのですか」
彼女は慌てて首を振った。
「そうじゃなくて、何かが違った。4年前とは、絶対に違ったの。
だから誰かと、って、疑って、嫉妬した。聞き方を間違えたのは、許して?ん?」
俺とて色事にはまるで疎いが、それでもこの方に伝えたかった。
あなたへの募る気持ちがこの身を動かしているのだと。
触れ方が四年前と違うのは、四年分の想いが積み重なっているのだから当然だ。
この方が俺の触れ方をそう感じるのは、この方の中にも離れていた間の想いが積み重なっているからだろう。
しかし逢って早々に、こんな下らぬ諍いとは。
俗に言う、痴話喧嘩というやつではないか。
・・・はあ。
深い嘆息と共に思わず腕の力が抜けた。
この方に圧し掛かりそうな体を辛うじて支え、押し留める。
「・・・それでも」
俺は首を振って言った。
「それでも、あなただけを慕っております」
そう伝えると、この方の唇に軽く口をつけた。
そして一度離し
「凄く」
そう言うと、もう少し深く一度。
「上手ですか」
彼女が耳まで赤く染まる。その紅い耳朶にも口付けて。
「触れ方、とか」
そう耳の中に声を落とす。
「誰かの手解きを、受けたようですか」
小さな掌が俺の唇を押して遠ざけようとする。
笑いながらそれを避け、その手首の血脈の真上を己の唇で探り当てて吸うと、白い肌に赤い花が浮かび上がる。
この方がはぁ、と息を吐く。
そして自分の吐いた息に驚いたように唇を噛む。
「そんなに噛んでは」
噛みしめた唇の上からもう一度、唇を重ねて開かせる。
「ちょ、駄目」
細い首を振りながら、唇の合わせ目から吐息で俺の口の中に訴える。
「外に」
ようやく腕の檻を外し、その瞳を奥まで覗き込む。
彼女はしばし潤んだ瞳で俺を睨みつけた後、両手を握り、小さな拳で鎧の胸を叩き始めた。
此度の癇癪には、十分合点がゆく。
暫ししたいようにさせたが、鎧の鋲や小札の縁取りで傷つかぬよう、頃合いを見て懐に彼女を抱え込む。
「おやめ下さい」
「変態!!ねえ、そういう趣味なの?ちょっと露出の気がある?衆人環視とか?一歩間違えれば警察のお世話になるわよ。
あのまま続けてたら、絶対に外の2人には、二度と顔を合わせられないとこだったのよ!」
彼女が腕の中から小声で言い募る。
判るような、判らぬような。
要するに睦事の際は、周囲に人がおらぬのが良いという事か。
「無人なら良いわけですね」
念の為、彼女に言質を取ろうと確かめた。
開京で居所に戻れば、少しは人目も避けられよう。
これほど帰京を恋しく、帰宅を待ち遠しく思うたのは、正真正銘生まれて初めてだ。

楽しんで頂けた時はポチっと頂けたら嬉しいです。
今日のクリック ありがとうございます。
SECRET: 0
PASS:
ウンスは、1年前のヨンとの記憶に左右されていたのね。
ヨンにとっては4年、掴もうとして掴めない夢の中のウンス。
そんな遣る瀬無い思いが、愛しさとして溢れ、優しく壊れ物でも扱う様に、そして自分の元に居る事を再確認する様に触れたのでしょう。
それだけヨンの4年の想いが詰まっているんだもの、以前と違って当たり前ね。
それを疑われては怒るわよ。
私の中のヨンは、こんなウンス一筋のヨンです( ´艸`)
SECRET: 0
PASS:
>mayuさん
いろいろ見えてくるものがありますか?
それなら、本当に嬉しいです。
あの日までのヨンの思いが重なるのが、
わたしの、あの向日葵です。
そして向日葵までの日々が、ここで現在までに
公開されている、お話たち。
ここまでの道、長かった!
でも向日葵まで、残すところこの【雪割草】と
あと一篇。
やっと、やっとです。
SECRET: 0
PASS:
さすがにヨンも怒っている時はウンスに対して丁寧語じゃなくなるのですね。
ウンスの説明を聞いて再び丁寧語に戻っていくところが、ヨンの戸惑いや怒りが解けていく感じが表れているようでツボです。
こういうところにハマってしまう。
SECRET: 0
PASS:
>まるまるさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
おお、読んで下さってるのですね(〃∇〃)
そうですね、他の話でもそんなところが
多いかもですw
ここまで進んで、他のお話を読み重ねると
だいーぶネタばれも、多くなっているやも!
そこもお楽しみ頂ければ、嬉しいです(●´ω`●)ゞ
SECRET: 0
PASS:
ヨンがウンスのことを文章の中で彼女と呼ぶのが新鮮。
この方、もいいけど、彼女、はヨンが若い感じがしますね。