向日葵 | 16

 

 

予想を超えた早さで勅旨を携えた早馬が戻ったのは、翌日の昼前だった。
「大護軍!馬が戻ります!!」

兵営の大門の横の大木の樹上で周囲を見張っていたテマンが戻ってきた馬にいち早く気付き、ヨンに知らせんと慌てて駆け込んできた。

ヨンはそのままテマンを伴い、厩舎へと急いだ。
回廊の途中でテマンに一拍遅れ、兵より報を受けたチュンソクが加わった。

王よりの勅旨を運んだ騎馬兵は、と泥で汚れ疲れきり、息も絶え絶えだった。
ヨンの命通り不眠不休で馬を走らせたのだろう。
厩舎に飛び込んだ大護軍にそれでも最敬礼で勅旨を手渡し、そのまま床にばたりと倒れ込んだ。

「存分に休ませろ」
側に控えた厩番の兵にそう告げると、ヨンは勅旨を拝す。
そして別の兵に選抜兵と各長に至急集合伝令の命を出し、テマン、チュンソクと共に厩舎を出た。

その足で執務室へ向かう。
椅子に腰掛けるが早いか、勅旨を拝読する。

中には至急帰京の命と共に、禁軍鷹揚一衛が大護軍チェ・ヨンの凱旋の護衛として開京より出立済みと書かれている。
途中での万一の襲撃に備え、騎兵に持たせた文に委細は記さなかった。

恐らく王様はあの文で、医仙の帰還に気付かれている。
さもなくば手錬が早馬を駆ったとて、開京の往復がこれほど早い理由も、ここまで速やかに手筈が整う理由も思いつかない。
あの文を読み、全てを瞬時にご英断下さったのだろう。

ヨンは勅旨を仕舞い、眸を閉じた。

あと一息。

 

急ぎ集まった選抜兵と各長が揃い着席するや、ヨンは前置きなく口火を切った。

「王様よりの勅旨を承った。明朝、寅の刻に出立する」
「はい!」
着席した面々が一斉に頭を下げる。

「戦果のお褒めの為、王様が出迎えに禁軍一衛を遣わして下さった。
合流地点までは、出来る限り早く抜ける。
道中、後れを取るな。
国境故、敵の襲撃も有り得る。充分注意しろ」
「はい!」
「以上、解散!」
各長たちが退室すると同時にヨンも席を立つ。
チュンソクとテマンがその後に従う。

「お迎えに参る」
ヨンはチュンソクにそう声をかける。
「但し人目につく故、正門よりお迎えするは叶わん。
一刻半の後、裏門の歩哨を払い、出迎えを頼む。
手裏房も共に来る」
「は」
チュンソクは頭を下げ、兵舎へ向かった。

「テマナは先に手裏房と合流の上、明日の手配を整えろ。
今晩は皆、兵営に詰めてもらう」

「はい!」
テマンは踵を返し、飛び出していった。

 

 

 

 

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2 件のコメント

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    チョナも、察して迅速に動いてくれ、タンタンタンとリズミカルで早急な対応、気持ちの良い行動力です。
    明朝出立だから、ウンスも呼び寄せられるのね。
    甘い雰囲気は無く、緊張感増してますね。

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    >mayuさん
    王様の行動が速いのは、秋菊と雪割草前半で
    おおよそ書ききったように、
    とにかくウンスが戻るまで北方を守れ、と。
    ヨンが戻る意思あり=ウンスが戻った、と。
    最高司令官である王様と部下であるヨンには
    迂達赤のような連帯感はありませんが
    愛に生きる男としては、これから共通点を
    いろいろと、書いて上げたいです・・・
    結婚生活の極意を、先輩カップルの王様&王妃媽媽より
    じっくり学ぶが良いでしょう:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

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