2014-15 リクエスト | 酩酊・1

 

 

【 酩酊】

 

 

「だいたいね、そもそもその態度が冷たいの!!」

そう言いながら卓に肘をつこうと腕を泳がせ、何度も失敗した挙句。
最後には俺の方へと卓上でその腕を伸ばし、その顔を、伸ばした腕に横向きに乗せ。

それでも諦めきれぬのか、どうにか腕の上の顔を上げる。
そしてようやく顎だけを卓について、この方はそのままじっと俺を睨んだ。

酔いで完全に据わった目つきで。

額から頬に落ちる紅い髪を掻き上げ、俺をじっと見詰めた次の刹那。

その厳しい顔が、へなりと笑み崩れた。

「でも仕方ないわよね、仕方ないわよ」
何が仕方ないのか。
繰り返しつつこの方は一人、うんうんと頷いている。
見ている分には楽しそうだが。
この方がこれほど酒癖が悪いと判っておれば、絶対に飲ませたりはしなかった。
俺は酩酊したその姿を横目に、息を吐いた。

 

飲み始めは快調だった。
どれだけ酔っぱらってもくだを巻いたり、絡み酒はしない。
道端でとんでもない醜態を晒す事はしたことがない、それが私の密かな自慢だったんだもの。
どんなパーティに出席して高いお酒をガンガン飲んでも、友達とポクタンジュを馬鹿飲みしても平気だった。
だから誘ったの。
お互いを知るには、やっぱりお酒は大事じゃない?
腹を割って話すにしたって、日頃の鬱憤を晴らすにしたって。
やっぱり間に挟むのがアルコールなのかか水なのかで、話し合いのテーブルの雰囲気ってすごく変わると思うのよ。

でも今の私は明らかに変。酔ってる。すっごく酔ってる。
脳のどっかの冷静な部分で、そう思えるくらい変。
だって体に力が入んないし、感情が振り子時計みたいに左右にブンブン揺れちゃうし。
目の前のこの人を すっごく、すっごく・・・すごく大切だなって思っちゃうし。
いつもの私らしくない、全然。

 

******

 

「ねえねえ、チェ・ヨンさん」

明るい日差しの溢れる庭で声を掛ける。
ただ自分の名前が呼ばれただけなのに、私の隣を大股で歩く足が、石畳の回廊の上で雷に打たれたみたいにピタっと止まる。

いつも不思議なのよ。この人って歩く時一体どうやって歩いてるわけ?
まさかその靴の裏に、猫みたいな肉球がついてる?
これだけ近くに、この人の言う通り3歩以内に歩いてるはずなのに、足音が聞こえないなんて。

口癖みたいに、いつもこの人は言う。
此処に。三歩以上離れては護れない。
だから今だって私の真横にいるのに。
私がその顔を見上げて声を掛けたら、
「はい」
こっちを振り向きもせず、固い声の返事が返って来る。
「お酒、飲みに行かない?」
「は?」

誘い言葉に仰天したよう振り向いてくれたのはいいけど。
これ以上意外なことを言われたことは今までの人生で一度もありませんとでも言いた気な声で、世界で一番短い疑問符が戻って来た。

そうでしょうね、意外よね、いきなり碌に知らない女から飲みになんて誘われたら。
それどころかちょっと前には、この人のことを刺した挙句に追いかけて来てくれたこの人を拒否して逃げ出した。
あなたにとって、私はそんな人間だものね。

だけどその後には、あなたを助けたわよ?
手をあっためてあげたじゃない。そりゃちょっと・・・泣いたかも、しれないけど。
パートナーになるって約束したわよ?そりゃちょっと・・・強引だったかも、しれないけど。
「ほら、謝りたかったし、チェ・ヨンさんも体調はすっかり良くなったみたいだし。
これまでのいろんな事もあるし、パートナーになったわけだし。
お互いのことを知るのも、大切、なんじゃ・・・ない、か・・・なあ、なあんて・・・・・・」

身振り手振りを交えて始まった私の声はそんな風に尻すぼみになって行く。
こっちを振り向いたこの人の顔がどんどん厳しく険しくなっていったから。
何だか誘った私が責められてるみたい。
パートナーになるって約束して、嬉しかったのに。

「女と酒を飲むのは嫌い?それとも私と飲みに行くのが、そんな顔するくらいイヤだったりする?」
「そうではありません」
この人はそう言って苦い顔のまま、大きな溜息を吐いた。
「外出は控えて頂くようにお願いしました。覚えておられますか」

確かに言われた。キチョルから狙われてるからと。
そのためにわざわざ王妃媽媽と同じところにいて守りやすいようにしてくれた。
一人で出歩かないようにいつも護衛をつけた。
おまけに私に嘘の予言をさせたりしながら、この人は毎日何だかんだと出歩いてる。

私はチャン先生に脈診を習ったりしながらも、どこかでやっぱりこの人の事が心配で仕方ない。
無理してるんじゃないかな。
この間キチョルに一人で挑んだみたいに、無茶して自分を傷つけてないかな。
あの時刺し違えてもキチョルを倒そうとして、凍傷になりかけてた手が忘れられない。

だから一緒に飲みたいだけなの。
もう一蓮托生じゃない、私が帰してもらうまでは。
だから腹を割って、もっともっとあなたを知りたい。
そして私をもっと、知ってほしいだけなんだけどな。

 

 

 

 

新リク話、始まりました❤
54. 無題
ウンスが希望してた、おんぶ。 (チェヨン1さま)

チェヨン1さま、リクありがとうございました。
おんぶです。
冒頭よりぐでんぐでんのウンスオンニ。
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