2014-15 リクエスト | 言問・1

 

 

【 言問 】

 

 

 

 

「して、そなたは」

王様が苦虫を噛み潰したような顔で、目の前に座る私を見つめてる。

ここが皇宮、康安殿。 扉を開けて正面は窓。左手に階。
階の上に王様の執務机。 右手に大きな卓と、並んだ椅子。

私はその椅子に体育座りで膝を抱えて首を傾げて、王様とその横に座る媽媽にじいっと目を当てた。
「私?いえいえ、気にせずに」
そう言って手を振ると、王様に首を振り返される。
ふうん、そう言う態度か。

「そうですか。あんまり生意気な態度でいると、王妃媽媽とどうなっちゃうか、分かりませんよ?」
「それはどういう意味か。妾とどうなるか分からぬなど」

王妃媽媽が、大きな美しい目をきりりと上げてこっちを真っ直ぐ見つめて、そうおっしゃる。
「あ、いいんです、気にせずに。私だって、そんなに心底悪い人間じゃないから。ただちょっと意地が悪いだけで」
「意地が悪いなど重々承知。そもそもそなたがここにこのように我が物顔で座っておるなど、許されるのか」

媽媽がかすかに眉を寄せてそう言う。
「許すも、許されぬも。こういう事になってるし。ね?」
目の前の王様にそう問うと
「ね、とそなたに言われても、寡人たちには答えようもなかろう」
皮肉気な声が、歪んだ口元からそう返る。
「そうそう、答えられないんだからしーですよ、しー」
そう言って唇の前に一本指を立てて王様を黙らせると、私は康安殿の椅子をふらっと立ち上がった。

 

「お待ちを」
扉を抜けようとしたところで、浅黄色の袍の腕が伸びて目の前を塞ぐ。その手を辿って主を見る。
「何ですか、ドチさん」
「王様への、退室のご挨拶を」

おお、ドチさんも良い仕事しますね。
その顔を立てるためにも、ちゃんとご挨拶しようかな。
くるんと振り向いてこっちを眺める王様と媽媽に、お辞儀をする。
「クンジョルの作法は知らないので、できません。王様、媽媽、ごきげんよう。お会いできて光栄でした」
王様は心底うんざりしたご様子で、こちらへ向かってシッシッと、手で払うような仕草をして見せた。

 

康安殿の扉を勝手に押し開いて、目の前の回廊へ出た途端。
静かに首元に、冷たい刀を押し付けられる。
ふむ、こういう感じか、成程ね。
確かにこれじゃ目しか動かせない。
動いた瞬間、やられちゃうわけか。
頸動脈掻っ切られたら、たまったもんじゃない。

「何ゆえだ」
動かした視線の先には、白いチョゴリに翡翠色の縁取りの雪藍の上衣、孔雀藍のチマを纏ったチェ尚宮コモ。
その周りには、同じ色の上衣に、荷花紅や桔紅の色の胸帯を高く締め、絞り染めのチマを纏い、腰に刀や昆を帯びた
武閣氏のお姉さんたちが、ずらりと並んでる。
「話せばわかる、話せば。取りあえず刀を納めてくれませんか?」
曖昧に、空気を誤魔化すみたいに提案してみる。
亀の甲より年の劫。そんな若造の言葉に頷くはずもなく、尚宮コモの無表情だった目がぎらりと光る。

「笑わせるな」
「笑わせてなんていないよ、尚宮コモ。私が誰か、よく知ってるはずでしょ?」
「・・・そう来るか。全く怖いもの無しだな」
「怖いものね、そりゃあ怖いものなんてないよ」
チェ尚宮コモが、無表情で刀を鞘に納め直す。
その刀を胸に仕舞い直す指の動きを見ながら、おっかなびっくりコモに訊いてみる。
「ありがとうございます。ついでに 迂達赤兵舎に行きたいんですけど。
場所、教えてほしいなー?」

その私の提案に、尚宮コモは鼻で嗤う。
「悪いがこう見えても、武閣氏隊長。媽媽の護りもある。
そなたに係るほど暇ではない。行きたくば勝手に行けば良い。
どうせそなたを止められるものなど、この世に誰もおらん」

さっさと行けというようにひらひら手を振りながら顔をそむけ、背を向けて。
回廊を扉の右側、坤成殿と思われる方向へ歩いていくコモの姿に肩を竦めると、私は回廊をまっすぐ歩き始めた。

 

こっちだと、思うんだけどな。
いや、こっちで合ってるはずなんだけど。見慣れた回廊に全然出ない。
どんどん、奥へ奥へ、迷い込んでる気がしなくもない・・・
───っ
その瞬間引っ張られた腕。回廊の隅にいるのは
「トルベ!チュソカ!」

二人を指差し名前を叫ぶと、トルベが驚いたように唇の前に指を立てる。
「急にでかい声を出すな!」
そう顰めたトルベの声。
「やはりか」
チュソクが目を丸くして息を吐く。

「お前、こういう勝手な事をするのはどうかと」
「いや、構わない。こういう事になったんで。2人は元気?逢えなくてすごくすごく寂しい」
「寂しいからと、ここまで」
「え?良いんだよ、何やったって」

私のその声に、呆れ顔の2人。
「隊長に見つかるなよ、あの人にお前の冗談は通じん」
トルベの声の切実な響き。だけどさあ。
「いや、隊長・・・でも、大護軍、でも、どっちでもいいけど」
私はトルベをじっと見て言ってみた。
「あの人に会いに来たんだよ、それが今回の目的なんだ。
隠してる肚をいろいろ、この際訊いてやろうと思ってさ」

その私の声に2人は苦々し気に顔を歪めた。
「で、悪いんだけど」
続く私のその言葉に、目で何だと尋ねる大男2人に向かい低姿勢でお願いしてみる。
「取りあえず、迂達赤兵舎まで連れてってください」

そう言って、深々と頭を下げる。
ここまでしてるんだから、連れてってよ。
目の前でトルベとチュソクが顔を見合わせる。
「まあ、断りたくはない。母上みたいなもんだし。だけどな」
トルベがそう言ってくれる。やっぱり心根は良い奴だ。

チュソクもそれに深く頷く。
「母上はともかく、まあ家族みたいなもんだ。
でもな、お前のやってることは家族である俺たちを隊長との面倒に巻き込むことなんだぞ」
そう言って、深く溜息をついて、チュソクは続ける。

「わかってるのか?さらん」

 

 

 

 

新リク話【 言問 】 始まりました。
これは、皆さま予想外だったと思うのですが・・・

174. 対面しちゃって(*^^)v
さらん様とヨンとのごっ対面~~~

絶対に読みたい。
チェヨン1様
応援ありがとうございます≧(´▽`)≦
キリ番踏むまで頑張りますね。

二人の会話を想像しただけで、顔がニヤケちゃいますよね。

さらん様が高麗に迷い込む?
ヨンが2014年のクリスマスに迷い込む? (mamachanさま)

ええと、珍道中です。楽しんで頂けたら嬉しいです❤

 

 

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