2016再開祭 | 桑弧蓬矢・壱

 

 

【 桑弧蓬矢 】

 

 

東の空の夏の陽は、既に惜しみなく光り輝いている。
周囲に響き渡る蝉時雨が、なお一層の暑さを加える。

庭に咲き誇る花々もこのところの暑さに項垂れている。
一雨来れば楽だがと仰ぐ空には、雲一つ見当たらない。

勝手なものだ。梅雨の間は陰鬱な空にうんざりし、降り頻る雨に早く止めと願っていたのに。

続く暑さで夜にも冷えず、風は熱く重く肌に纏わる。
その皇庭に敷かれた石畳の径の上、足早に先を急ぐ。

「おはようございます、大護軍!」
正面から来た禁軍の一団が言いながら、径の脇に避け頭を下げた。
「おう」
頷いて足を止め、歩哨の長に尋ねる。

「昨夜は変わりなかったか」
「はい」
「暑い。皆休める時は休め」
「はい!」

声を揃える奴らを残し、そのまま灼けるような石畳の道を進む。
まだ物おっしゃれぬ小さき龍、若き君主をお待たせせぬように。

 

*****

 

「大護軍」

東宮殿の入口で警護に当たる禁軍の横、坤成殿からの武閣氏が呼ぶ。
その逆脇には迂達赤までもが雁首揃えて並んでいる。

加えて新たに任を受けた王子媽媽付きの尚宮らも揃い、まるで今から宮中行事でも執り行うような賑々しさだ。
その全員が此方を見ると、一斉に呼んで頭を下げた。

確かに慶賀だ。国にも民にも、無論王様と王妃媽媽の御二人にとりこの上なき嘉儀だ。
この騒ぎが王子媽媽、韵様御誕生以来の賑々しさでなくば、手放しで加わりたい程に。
「王妃媽媽は」

坤成殿で顔を見知る武閣氏に尋ねると
「中にいらっしゃいます」
声に頷き、次に扉脇のチョモに訊く。
「王様は」
「王子媽媽、王妃媽媽と御一緒です」

どれもこれも皇子御生誕以来、耳に胼胝が出来る程繰り返し聞いた。
今日も全く変わらん同じ答が戻って来る。
「チェ尚宮は」
「王妃媽媽の御伴で、医仙と御一緒に王子媽媽の御部屋内に」
「チュンソクは」
「・・・ドチ殿と共に、御部屋の中に」

慶賀と思う。水を差したくはない。
まして一度はあの汚い鼠の謀略で御子を失くしておられる御二人だ。
しかし俺にとり、何より大切な方は別に居る。
その方の心痛を増やす事だけは止めて頂く。今日こそは必ず。

そうして心を決めるのも、既に毎日の事だ。
それでも聞き入れて頂くまでは三顧どころか日参しても、必ず翻意を願わねばならん。
意を決し扉前に立った俺を確かめ、王子媽媽付き尚宮が扉内へと声を掛ける。
「王様、王妃媽媽、迂達赤大護軍がいらっしゃいました」
「入りなさい」

御部屋内から今日も返る王様の御声に、目前の扉が開かれた。
中へ静かに立ち入ると同時に、耳が痛くなるような大きな御声が響き渡った。

 

 

 

 

龍の咆哮のその後から、史実を気持ちよ~く曲げたハッピーエンドをお願いします(o^^o)
(るりさま)

 

※元のお話:龍の咆哮(クリックでお話に飛べます)

皇子 韵君のその後のお話です。

 

 

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