「医仙」
この方の手を牽いたままで、典医寺に向かい戻る途。
戻るまいと無駄な抵抗を試みる小さな沓が石畳を滑る。
「やだってば」
「兵舎は遊び場ではない」
「そんな事思ってないわよ、話を聞いてよ!私はただ」
敷き詰めた石の間に春草が芽吹く石畳。
この方を引き摺るには打ってつけだ。
草のお蔭で石畳はよく滑り、踏ん張りが利かぬ。
いざとなれば抱き上げて、強引に連れ帰るところだった。
さもなくばこの方は梃子でも歩かない。
上衣の裾を汚してでも、石畳に座り込む方だ。
先程も柱に隠した途端におっしゃった。奇轍かと思ったと。
そう言うならば狙われている自覚はある筈だ。
それなのに独り典医寺を出てくるなど、一体何を考えているのかさっぱり判らん。
周囲に人目がない事だけを確かめ、こうして手を握る。
いや。握るのは急いで典医寺へ戻りたいからだ。
敢えてこの刻、最も人気のない途を選んでいるのでは無い。
柱に隠したのも深い意味は無い。
兵以外が兵舎へ出入りするのは困るからだ。
別に男の目から遠ざけたかった訳では無い。
この方が俺の掌を温かい手で握り返しているのは・・・無理矢理に連れ戻されるのが厭だからだ。
俺達は別に、人目を忍んで密会している訳では無い。
この方は正面突破で、迂達赤兵舎の門を破らんと試みた。
己は迂達赤隊長として、ただその侵入を喰い止めたのみ。
それだけだ。
王様最近衛、女人禁制の兵舎に軽々しく出入りされては困る。
「ただ、何です」
「ただ・・・ただ、逢いたかったのよ」
届いた声に、牽いていた掌から思わず力が抜ける。
何処か自慢げに胸を張り、この眸を真直ぐ見上げ、この方はふん、と可愛らしい息を吐く。
どうだ、宣言してやったと言わぬばかりに、誇らし気に頬を染めて。
しかし言われた此方は堪ったものではない。
「・・・は」
「逢いたかったのよ。何よ、悪い?文句ある?さっきだって言おうとしたのに、いきなり口までふさぐし!」」
力が抜けた筈の手が落ちぬのは、この方がまだ小さい手でこの掌を握っているからだ。
さもなくばだらりと手を下げ、木偶の坊のような間抜けな姿を晒していたに違いない。
逢いたかった。
逢い、たかった。
何故あなたが先に言うのだ。それは男が先に言うべきではないか。
全ての名分が尽きた処で、俺が先に言うべきだろう。違うのか。
「医仙」
「逢いたかった。逢いたかったし、心配だった。東屋で待っててもすれ違いが多いし。
逢う時は典医寺の部屋ばっかりだし。せっかく良いお天気なんだし、外で逢いたかったのよ!」
俺の掌を握ったままで、この方が眸を見上げて言い募る。
「未だに徳興君や奇轍が」
「分かってるってば!だから言ったでしょ?心配だったのよ。
あんな奴らがウロウロしてるから、なおさら心配だったの。
外で自由に出られない理由だって分かる。ワガママ言ってあなたを困らせたかったわけじゃないわよ。
なのに迂達赤まで来ちゃダメって言われたら」
その眉が悲し気に曇る。そんな顔を見たいわけでは無い。
あなたはただ笑ってくれていれば良い。それだけが見たい。
「そんなこと言われたらどうすればいい?皇宮の中で逢うだけでガマンする。
なのにその中も自由に歩けないの?私が迷惑かけてるのは知ってる。だけど」
「医仙」
名分、言い訳、人目、体面。全て満たせばこの方が泣いて良いか。
迷惑だろうとこの方に泣かれてても、己の外面が保てれば満足か。
ようやく道向こうから駆けつける武閣氏の衛を見ながら、正面のこの方へ告げる。
「戻ってお待ち下さい」
「え?」
「典医寺で」
「・・・そりゃ、待つけど。来てくれるの?」
小さく頷くと、その顔が途端に晴れる。
行くと約束しただけで、これ程嬉しそうに笑まれれば。
「着替えて」
「着替えて?」
「出来るだけ目立たぬ衣に」
「おしゃれするんじゃなくて?」
出だしからこれでは、先が思いやられる。
「地味な、目立たぬ衣で」
「・・・うん、分かった」
今の白と紫の医官服では余りに目を惹き過ぎる。
黙って佇むだけで、天の美しさを纏う方だ。
どれ程粗末な衣を着ようと誤魔化せるかどうか。
それでもこうして泣かれるよりは遥かにましだ。
「すぐ伺います」
告げて小さく頭を下げる。
迎えの武閣氏がこの方に付くのと入れ違いに、俺は脇目も振らず来た途を駆け戻った。

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さらんさん、おはヨンございます❤️
想い通じ合ってる*(\´∀`\)*:❤️
逢いたいのよねぇー❤️ ウンス素直じゃないの!
そう言われて嬉しくない男はいませんよね♪
どんなデートになるかしら(*Ü*)ﻌﻌﻌ♥
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ほんとは 嬉しいくせにー。
独り占め 満喫したいくせにー。
照れ屋さんね(๑⊙ლ⊙)ぷ
なんてね。
後程… かわいいウンスを
うんと 喜ばせてあげてね
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ウンス、可愛い!!
「逢いたかった・・」なんて言われたら、ヨンのオロオロする姿が浮かんじゃう。
女って、ぶりっこ ではなく、素直に可愛いと思える人、以外と少ない気がします(私感)。
若ければ、それだけで可愛く見えるけれど、ぶりっこちゃんも多いし(私感)。
オンニ・・だけれど
すごく優秀だけれど、ちょっと 天然・・
そんなウンスだから、可愛いのかな。
この後のヨンとの行動が、楽しみ♪♪♪
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ただ…逢いたかったのよ
もうそんな風に言われたら
堪りませんよね~
ウンスは分かってないけど
かわいい女性
ヨン 素直に嬉しい…と言いなさい
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ヨンったら、
・・・いるのでは無い。
・・・訳では無い。って言い訳してるから、ウンスに先を越されてしまうんですよ~~(^^;
「地味な、目立たぬ服」
ウンスさん、本当に意味がわかってるのかなぁ?(笑)
デート。ワクワクします(^-^)