迂達赤のみんなが、チェ尚宮の叔母様が、そしてトギが心配そうに出て行った、静かな部屋の中。
キャンドルの灯の揺れる下、2人きりで向かい合う。
怖がらないで。
向かい合ったあなたに、心の中でお願いする。
逃げないで。
これから何があっても、あなたとなら大丈夫。
悲しまないで。
これからも一緒に生きて行くために選んだの。
泣かないで。
もし私に何があっても、後悔したりしないで。
私はあなたを信じてる。チャン先生を信じてる。そして自分の選択を信じてる。死んだりなんかしない。
そしてあなたが一緒なら、何が起きても怖くない。
あなたに伝えてない事がある。あの時聞かれた、私の好きなもの。
高い背、大きな手、青と灰色の鎧。いつでも私を探してくれる瞳、私を呼ぶ低くて優しい声。
離れないわ。何があっても1人にしない。
そしてあなたの腕の中なら、何が起きても安心して眠れる。
起きたら笑ってね。 そんな悲しい顔を見るのは今日で最後。
明日も一緒に笑えるように、私は今日を精一杯生きる。
握った茶碗の中、毒を溶かした酒を飲み干して息を吐く。
あなたが我慢できないように、静かに向かいの席を立つ。
医者の短所は、こうして冷静に経過観察するところ。
たとえ自分が服毒しても、意識がある限りデータを取ってる。
脈。呼吸。心拍。体温。その変化の過程。
あなたがこんなに真剣な目で、私を抱いていてくれるのに。
心配しないで。観察できるってことは、頭が回ってるってこと。
少しずつ遠ざかる意識の中で、最後に冷静に考える。
使った薬。溶かしたアルコール。間違ってはいない。
これで明日目が覚めたら、必ずメモしておかなきゃ。
残しておけば、いなくなってしまったチャン先生にも典医寺のみんなにも言える。
以毒制毒。あれって本当よ。私が体験者。生還できた。
ああ、そんな心配そうな顔しないで。 そんな悲しい目をしないで。
わらって?
そう。そんな風に笑って。
あの時選んでくれた、きれいな赤と藍色の絹の服。真っ白い絹の靴。そしてキラキラ光るノリゲ。
黄色い花がいっぱいに咲いた場所。
背の高い後姿。広い肩幅。長い手足。あなたを見間違える事なんてあるわけない。
そこで待っててくれる後ろ姿に駆け寄る。待たせてごめん、でも帰って来るって言ったじゃない。
もう離れたりしない、やっと一緒にいられる。ごめんね、って言おうとして声が止まる。
ねえ、どうして泣いてるの。何があったの。
私はここよ。ここにいる。あなたの目の前に。
あの時みたいに抱き締めたくて、もう一度手を伸ばす。
あの時は何も出来ず、ここにいちゃダメかなって泣くだけだった。
でも戻って来たの。もう心配することなんてないの。
ここにいる。いちゃダメかなって聞くんじゃなくて。
ここにいるから、ねえ、いいよって言ってよ。
一生一緒にいるって約束してよ。あの時言ってくれたみたいに。
もう一度聞きますって言ってくれたよね?
私の解毒が終わったら。帰らなくていいって決まったら。
その時もう一度聞くから返事をくれますか、そう言ってくれたよね?
隊長?
あなたにあげた黄色い小菊が揺れる。
風に吹かれて、黄色い波のように。
あなたが泣いてる。声もあげずに。
拭いてあげたい。抱き締めたいのに。
泣かないで。
その手の中に握るアスピリンのボトル。
ちゃんと飲んでくれたのね、空っぽになってるのに安心する。
その中に残った一輪のドライフラワー。
すっかり色も褪せてるけど、あれはきっとあの時に渡した花。
悲しまないで。
あなたが一緒にいてくれれば、何があっても怖くない。
一緒にいられるように、私は精一杯生きたから。
どんな結果になっても後悔したりしない。
最後に笑ってありがとうって、心からあなたに言える。
一緒にいさせてくれてありがとう。
ワガママな私を許してくれてありがとう。
大切な気持ちを教えてくれてありがとう。
守ってくれてありがとう。守らせてくれてありがとう。
最後の、一番大切で勝手なワガママを聞いてくれる?
笑って。隊長。
笑って。
そして私の声に頷いて。私はいつでもあなたを呼んでる。
そこにいる?
この声が聞こえたら、もしも気づいたらあの声で答えて。
そして許して。ワガママな私が、あなたの側にいること。
風になって、お日様になって、花になって、雪になって。
どんなに姿を変えても、あなたを笑わせてあげる。
どんなに時間がかかっても、必ずあなたを探すわ。
どんなにケンカして、素直になれなくて、擦れ違っても。
きっと出逢わずにいられない。そして愛さずにいられない。
私はあなたの側にいる。だから探して。私を呼んで。そして私の呼ぶ声に答えて。
大好きなあの瞳で、大好きなあの声で。
大好きなその手で私の手を握って。もう二度と離さないで。
起きなくちゃ。起きてもう一度必ずあなたに言わなくちゃ。
言えなかった一番大切な言葉。そして心から伝えたい言葉。
あなたを愛してる。
眩しい光の中、ベッドの上で私はゆっくり目を開ける。

SECRET: 0
PASS:
ヨンのため
ヨンと一緒に居たいから
運命の人に出会っちゃったんだもん
そんな自分のため
ウンスらしい 決断。
かなしいかお するなと言われても
心配で、心配で…
だって ウンスは 大事な人だから。
(。•́__ก̀。)
SECRET: 0
PASS:
あの時の、ウンスとヨンの様子が、頭の中を廻っています。
ヨンを愛しているから、ヨンの側にいたいから、
ヨンを悲しませたくないから…
だから、選んだ道。
以毒制毒…
ウンスの心の声がヨンへの愛に溢れていて、涙でこの文字を読むのが辛いくらい。
ヨンは、あの時、ずっとウンスを抱き締めてくれていたのですよね。
どんなに心配したか…
ウンスは、目を開けようとしていますよ。
ウンス自身の闘いに勝ち、目を開けようと…