受け止めた分厚い箱のような布団の上、先刻のこの方と同じよう体が跳ねる。
「ヨンア!!」
真横に落ちた俺に驚いたように布団の上で座り込み、この方が上から顔を覗き込む。
「やだ、大丈夫?ベッドの上で良かった」
「はい」
痛くも痒くもない。
この方が横に居らねば、同じように立って俺も跳ねたい程だ。
横たわった体を、試しに二、三度小さく弾ませてみる。
突然布団の上で跳ねた俺の勢いで、覗き込むこの方も上下に揺れる。
「・・・何してるの?」
「・・・いえ」
そのまま跳ね続けると、この方が笑い出す。
「楽しいんでしょ!」
「不思議なのです」
何故これ程に跳ねるのか。楽しいし不思議でもある。
「これはねえ」
この方がそう言って、布団の面を小さな手で押す。
「中にスプリングが入ってるの。金属で出来たバネよ。それでこんな風に跳ねるの。
でも今の人体工学はもっと進んでて、ベッドマットも低反発だったり高反発だったり。
エアマットだったり、あとはウォーターベッドっていうのも」
「・・・こんな布団で寝ていたら、高麗では辛いでしょう」
ようやく思い至る。
最初に典医寺にお連れした折、布団が固いの飯が合わぬのとこの方が散々文句を吐き散らした事。
あの折は、何処まで我儘な女人なのだと頭を痛めた。
けれどこうしてこの方の過ごして来た天界を見て思い知らされる。
この布団しか知らぬ方が、高麗のあの寝台に寝ろと言っても無理だ。
硬すぎ、薄すぎ、そして冷た過ぎたろう。
「イムジャ」
跳ねていた体を止めて、横になったままでこの方を見上げる。
いつもと違う高さから、亜麻色の髪と鳶色の瞳が此方へ落ちる。
その髪を白い指で掻き上げて、あなたは笑んで問い返す。
「なあに?」
布団を買うてやりたい。
此処まで跳ねるものは無理でも、せめて厚い寝台にしてやりたい。
絹でも何でもたっぷり詰めて、柔らかい寝台に寝かせてやりたい。
遅くとも、今からでも、高麗へ戻った時には。
「分厚い布団を仕立てます」
「え?」
突然の声に意味が分からぬと、この方が首を捻る。
さすがに戦場では無理だ。それでもせめてこの方が宅に居る時には。
ゆっくりと眠れる夜には。
一枚で無理なら三枚。三枚でも無理なら五枚。
この方の望む厚さになるまで、何枚でも重ねる。
「そうすれば、ゆるりと休めるでしょう」
「ああ、家のベ・・・寝台?」
「はい」
見透かされて頷くとうふふと笑い、突然この方が胸の上に落ちて来た。
慌てて受け止めると、勢いで二人の体が再び弾む。
「あのねえ、ヨンア」
受け止めたこの方の小さな囁きが耳朶を震わせる。
これ程近く感じるのは、この部屋に余計な音が何一つ無いせいだ。
己の心の臓が烈しく跳ねる音も、この方の耳に届きそうな気がする。
「高麗でも21世紀でも、私専用のベッドがあるもの。どこにいても変わらないでしょ?
あったかくて永久保証付き。 柔らかくはないけど可動式、持ち運び自由」
この方がいつもの場所、俺の懐へともぐり込み、腕に頭を預ける。
そしていつも通り首筋に鼻先を擦りつけ、甘く小さな息を吐く。
「だから何にもいらないの。高麗でもここでも一緒。あなたが最高の私のベッド。
そしてこの腕が最高の枕。投げたりしないわ・・・あ」
思い出したように、この方が何故か急に首筋に小さく歯を立てる。
痛みではなく驚きで、思わず横眼でその顔を伺う。
「ユ・ウンス専用ですからね?分かってるわよね?」
「・・・は?」
「分かってるわよね?!」
その悲鳴に似た小さな声も、この部屋の中では漏らさず聴こえる。
この方は勢い良く腕の中から体を起こし、布団の上で俺を睨んだ。
「判りません」
俺がこの方の布団。それは判った。
何処であれ抱いて眠る。能う限り、望まれる限りそうしよう。
この腕があなたの枕と言うなら、いくらでも差し出す。
しかし専用というのは、どういう事だ。
「・・・まさか」
続けて跳ね起きた俺の低い声に、この方の怒ったような瞳が当たる。
「他の女も寝かせると、思っているのですか」
「そんなこと思って・・・」
尻すぼみになる声が、そう思っていた証だろうが。
その瞳を真直ぐ覗き込むと浮かぶ怒りは消え、悔悟の色が過る。
「可愛いやきもちだと思ってよ。あなたが大好きだから、心配になるだけなんだってば」
「心配」
寝台の上で胡坐をかき、あなたの声を繰り返す。
「そうよ、だってあなた全然変わらないんだもの!高麗にいても、ここに来ても」
「・・・変わらないとは」
「鈍いのよ。気が付いてないでしょ!高麗にいても、ここにいても、周りの女の人がいっつもあなたを見てるわ」
知るかと怒鳴りたい気持ちを抑えて息を吐く。
俺も言い分はある。
高麗でどれだけの男があなたを見て来たか。奪い合ったか。
我欲の為に、あなたの心を手に入れようとした奴もいた。
しかし俺に遠慮して伝えられなかった丹心もあったろう。
何が出来た。
悋気に憑かれてその男を殴り飛ばし、俺を見ろと押さえ付ければ満足だったか。
変わらない。変わるわけが無い、変わるくらいなら始めない。
変わるくらいなら待つ筈が無い。こうして天界まで供する筈も。
判っていないのは其方だ。
「・・・まず、何をするのです」
「え?」
これ以上話せば、互いに思わぬ言葉を投げつける事になる。
本心では思ってもいないのに相手を負かす為、傷つける為。
投げつけるのが柔らかい枕なら良い。しかしその声は刃だ。
体に負った刀傷ならあなたが治して下さるが、心に負った傷は目に見えぬ分始末が悪い。
そうならぬように細心の注意を払い、俺は話を摩り替える。
「これからまず、何をするのですか」
「あ、えっと・・・まず、ビジネスセンターに。調べたい事が」
摩り替えられた話に毒気を抜かれたか。
声を詰まらせながらもこの方は、此処へ来た目的を思い出して下さった。
「行きましょう」
「う、うん。分かった」
胡坐を解き床へ降り立つと、この方が続いて寝台を飛び降りた。

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さらんさん、おはヨンございます♪
やはりヨンですね◟(๑˃̶ ੪ ˂̶๑)◞
ベッドでも甘くならなかったw
跳ねてみたりゴロゴロしたり不思議でしょうね~
そして高麗ではもっと柔らかい布団で寝かせてあげようなんて優しい旦那様だ◡̈♥︎
他の女の布団になる気なんてさらさら無いのは分かっているけど、すれ違う女が皆んな振り返ったらそりゃー妻としてはね、面白く無い気持ちは分かりますヨン。
うーん、ウンスに悟られないようにシラっと話しをすり替えるなんてさすがヨンは上手だわ*(\´∀`\)*:
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ウンスにしてみたら ものすごく心配よね
ちゃんと主張しないとね
ヨン自身に自覚がないのと その気もないのが
救いよ 救い!
そーよ やるべきことがあったのよ
!!( ๑>ω•́ )۶
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ヨンじゃないけど、今すべきことをしなくちゃ。
仕事行ってきます。
ラブラブも楽しいけど、
天界に来た目的も果たさなくちゃね~~
お互い(笑)辛い……
毎日、幸せです。
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朝から、甘々~。でも、すごく心がほっこり
(*^^*)
ウンス専用のベッドは、あったかくて永久保証付き。柔らかくはないけど、可動式、持ち運び自由。最高の枕の腕。ウンス専用の寝具「ヨン」は、誰でも欲しがりますよ!
甘い 朝ごはん、ごちそう様でした!
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凄い!
やっぱり、さらんさんのヨンてウンスと一緒に時間を紡いだせいか、人としてデキテます。(⌒‐⌒)
身近な人に対してこそ、感情に流されて思ってもいなかった事を、口から出ちゃうものなのですが…( -_・)
なかなか、この辺りやめることって、この時期の男性にはなかなか身近な人には凄く難しい!
やぁ。(*´∀`)ノ…惚れ惚れ!です。
(⌒‐⌒)
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布団だって‼カワイイなぁもぅ‼そしてウンスの私専用の布団、可動式、持ち運び自由って返しにまた萌え~(笑)確かにね~(^-^)これ以上ないくらいに羨ましいお布団だー‼
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さらんさん。
ここ数日酷い風邪で抗生物質が飲めない私は全身の痛みで、自宅内を歩くのも寝返りをうつのもやっとの状態が続いています(T . T)
そんな私の唯一の楽しみはさらんさん家のヨンに会う事。かっこよ過ぎるんですぅー( ̄▽ ̄)
続きが楽しみでそれだけを支えに生きております←オオゲサナバアサン
天界のヨンはこの画像そのままなんだろうなぁー。そりゃあ人目を惹くのは当たり前だよなぁー。ウンスがヤキモチやくのも理解出来る‼︎*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*などと二ヘラ~と笑っています。
これからどうなるのかな?ちゃんと良い情報を持ち帰れる事を祈ります。
再開して下さった事を今更ながら感謝しているチェヨンラブです。本当にありがとうございます(*^^*)
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バブルバスに枕投げ…
修学旅行のように気持ちが高揚したウンス
解らなくもないわいね
勝手知ったる現代に 大好きヨンと来て
ホテルの高層階にチェックイン
二人きりの空間だもの
それでもヨンにこれからの事を聞かれ
目的を思い出したみたいね
あまり滞在時間がないようだし
目的達成に向けて ファイティン!
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あぁ~~(^^)
美男美女カップルならではの悩み‥
ご馳走さまでした~~(笑)
喧嘩にならないように、話を変えるヨン!
さすが大人の男です❤
さらんさん
天界でーと最高ですぅ(^^)
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まずは、後れ馳せながら…再開して頂き、感謝と歓喜でいっぱいです!!
ありがとうございます!
毎日ヨン時間(更新時間)がまだかまだかと時計とにらめっこです(笑)
さらん様のお話は、毎回すごいですよね。
ホント引き込まれてしまいます!
これからも、楽しみにしております♪
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初めてコメントさせていただきます。
まず、再開してくださりありがとうございます!
そして、ヨンが現代に来る話、こんなお話を待っていました‼︎
毎日の更新が楽しみすぎて、仕事中も続きが気になり、上の空だったり…
ヨンはどの時代でも素敵ですね~
これからもさらんさんのお話楽しみにしています。
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「嘉禎」2回目読んでます。
何度読んでも新鮮で楽しいです。
ヨンが、天界のようなふわふわの分厚い布団を高麗に帰ったら作りますって言っていますから、
ウンスの為に分厚いふかふかの布団を作ろうとするお話がいつか読んでみたいです。
天界風の布団をあつらえちゃったら気持ち良くて、ウンスさんすぐに寝ちゃって、ヨンは毎晩また呪文を唱えなから寝る羽目になりそうですけどね(笑)
リクエスト受付中ではありませんが、是非機会がありましたらお願いします。