紅蓮 | 序・1

 

 

【 紅蓮・序 】

 

 

「紅巾族、ですか」

皇宮の回廊を大股で歩く大護軍に、こうして従うのはどれほど久々だろうか。
大護軍の一歩後ろに従きつつ考える。

回廊の外の皇庭の景色は、昨日までと全く変わらん。
そこに突然大護軍が姿を見せると、目に映る何もかもが全く違って見える。

急すぎて、現の事とも思えん。

最近は、開京に戻られるのはごく稀だった。
顔を見られるのは、北方の兵舎での事がほとんどだった。
そして俺は大護軍のお留守の穴を埋める為、開京より動くことがほとんど出来ず。

その稀な機会に北の兵舎へ行ければ、大護軍と会えるのは役目の終わった夜遅く。
数日刻と体が空けば、大護軍がいるのはただ一か所。

あの丘で木に凭れ、いつも遠くを見ている。
大護軍は丘で未だに、医仙の帰りを待っている。

大護軍との連絡は専ら手裏房を通す。
もしくは交代で大護軍を隠れて見守る迂達赤を介す。
ひとたび事が起きれば誰より先に、遠い北方にいる大護軍の肚を読まねばならん。

読み違えては大事だ。
だからこそ北方に来られる時には、俺はまるでテマンのように大護軍に付き従い、姿を追い、声を聞いた。

そのように過ごしてきた三年を思い返す。
大護軍は何もかも擲って、医仙を待っている。
ただ支える為、俺は、テマンは、トクマンは、迂達赤全員は。
死なぬ程度の武技の鍛錬に加え、肚を読む鍛錬を続けていた。

しかし大護軍は決して立ち止らない。
戦うたび強くなり、会うたびでかくなる。
あの強さは何だ。あのでかさは何なのだ。
何処まで走ればあの背に追いつけるのだ。

会うたびそこはかとない敗北感を抱き、毎回開京への馬を駆るのが常だった。
だからこそ俺は、決して大護軍と離れられん。
追いつけぬまでもあの背を追いたい。
生涯かけて仕えてみたい。
そしていつかは勝ってみたい。
勝てぬまでも、認められたい。
それが目指す男に巡り合えた、男としての欲なのだろう。

その大護軍が三年目の今日、突然皇宮に戻って来た。
それも単身、早馬で。
「どうしたんですか!」

迂達赤兵舎にいる筈のない姿を認め、俺は思わず叫んだ。
こうして皇宮で顔を合わせるのは、春の双城攻めの折。
大護軍が総指揮を取る為に開京に戻った、それ以来かもしれん。

相変わらずの少ない言葉で大護軍が一言、ぼそりと言う。

「紅巾族だ」
「紅巾族、ですか」
その不穏な言葉に、大護軍の顔を確かめる。

「ああ。王様が高麗に戻られた同じ年、白蓮教の者共が元国内で反乱を起こしている。
教祖が処刑され挙兵自体未遂に終わっているが、残党が動き出した」
大護軍は息を吐いた。
楽観か、それともこの人を慰めたいか。
考え過ぎる俺には珍しいことに、碌々考えもせず言葉が口を突く。
「しかし、元側のみでの騒ぎで済んでいるならば」
「チュンソク」

俺の言葉を途中で遮った大護軍は俺を見
「それなら戻らん」
とだけ言った。その短い言葉に
「は」
俺は頭を下げた。

 

 

 

 

新章【紅蓮・序】です。

本編と前後しながらの、長い話になります。
そして、一篇では終わらず・・・変則的です。

バトルモードのヨンが発動します。

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26 件のコメント

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    動き出しましたね。私は嬉しいバトルモード♥
    チュンソクも出てきてまた、嬉しい♥
    ちょっと甘いモードからは離れてしまいますが、さらんさんの一服処もたまに出現することをちょっと願ってます♪φ(´ε`●)エヘ♥
    またワクワクしに参ります。ガッツリ覗かせていただきますね(///ω///)♪

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    ウンスが戻る前から動いてたのね。
    この乱は、結構長いのよね。そして、皇宮も脅かされる。
    あまり詳しくは知らないけれど、ここで教えてもらえそう(o^-')b
    何事かに立ち向かい、策を立てたり思案している時のヨンて、恰好良いよね(*^.^*)
    戦は、怪我しないかハラハラ・ドキドキするけど、戦いっぷりは惚れ惚れしちゃうわ(〃∇〃)
    どんなヨンを書いてくれるのかな?

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    こんばんは!さらん様。
    新章が始まり、
    昨日までとはガラッと違う
    雰囲気に緊張してきました。
    「戦」の前のなんともいえない
    緊張感…結構好きです。
    時代劇の戦のシーンって観ていて
    すごく力が入ります。
    自分でも気がつかないうちに、息
    をするのも忘れて…(笑)
    また私の大好きな男の世界をみせて
    頂けるのですね!
    楽しみです(*^o^*)

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    いよいよ発動ですね
    戦うヨンの姿は格好いいんですよね~
    まっこと、絵になる男です(命懸けの戦に不謹慎でしょうか)
    長い話‥いいじゃありませんか
    男達の物語‥好きです
    ただ‥あまり怪我はしないでね(願望です)

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    はじまりましたね。バトルヨン。鳥肌がたちます。ヨンが現れるだけで、空気がかわる。ヨンが単身自ら来たということは、それだけ重要なことを直接王様に伝えるため。先を見つめ戦に備える凛々しいお顔。甘々から一変した雰囲気にワクワクします。 で風邪はどうですか?冷えピタ貼って布団の中でポチポチしてるさらんさんを想像してしまうのですが…。

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    チュンソクにとってヨンは、越えたくても越える事の出来ない大きな山なんですね。でもそれを登らずにはいられない。一生を掛けて制覇してみたいと男惚れするほどの人と言うのが伝わってきます。
    新章はまだウンスが戻る前なんですね。凛々しいヨンが戻ってきて嬉しいです。甘いヨンはもちろんですけど、このきりっとしたヨンも大好き。だって、武将ですもの❤

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    さらん様、こんばんは❤︎
    新章始まりました‼︎
    実は私、ヨンとウンスのLoveLoveと同じくらい、強い男が好きなんです❤︎
    剣一振りで、何十人も倒れたとか、目が合っただけで、恐怖で一歩も動けないとか、そんな常軌を逸する位の設定が死ぬほど好きなのです。
    さらん様が、次回は最強の人間兵器のヨンが登場することを前章の最後に書かれた時から、期待でワクワクしていました。
    嬉しいです❤︎
    それにしても、チュンソクは、ヨンに告白してるのかと思うほど…。
    ラブレターの内容を聞いている様です。
    チュンソク…やっぱりイイなぁ❤︎

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    これはウンスが戻る前の話と考えていいですか?
    闘う化身のヨンを見ることができるのですね。息詰まる展開となるのでしょうか。まずは続きをお待ちしています。

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    テホグンになっても、言葉は最小限なんですね。部下は大変です。
    チュンソクさんの「はっ」「はっ?」ってとこ。
    まぁー、すべて指図しなくても済むということで、それだけ優秀な部下が揃っているのでしょ。何より大切なことですよね。
    3年ということは、まだウンスちゃん戻ってません。高麗の歴史、よく知りません。
    バトルモードのテホグンに、アジャ!
    どこまでもついていきまっす。

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    >ののさん
    こんにちは♡コメありがとうございます。
    始まりました。
    今回は、長くなります・・・そして入り乱れます。
    紅巾の乱の合間を縫い、ヨンの人生を大きく変える
    出来事が、それはもう、次々・・・
    本気でN*K大河ドラマばりのお話になりそうで
    ちょっとばかり、緊張気味です。
    一服入れなければ、私ももちませぬ( ´艸`)
    迂達赤でも、書きたい話がまだ山ほどあり
    甘いも、当時のお話をいろいろ書きたいのに・・・!

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    >kumiさん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    お馬鹿なんて、とんでもないです(゚ー゚;
    序盤は、ウンス帰還直前のところから始まります。
    ただし実際、一回目の直接対決になるのは
    ウンスが帰って来て、二人で雪を見た後です。
    この辺りから入り乱れて参ります・・・(;´▽`A“

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    >mayuさん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    歴史上は、4年の間に紅巾族に3回攻められているようです。
    ただし、今回はあくまでフィクション。
    ヨンが小手調べにお出かけです。
    この後、その3回が出て参る予定です、が、
    そこまで全て書くと、本当に大河ドラマ化しそう・・・悩み中で御座います。

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    >わいやーさん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    いよいよです。女っ気ゼロ(合間にウンスはありです)
    漢だらけの戦もの。ひたすら男くさく。
    初回はヨンの小手調べで終わりますが、
    後半は白兵戦が続くので、どうなることやらです・・・(;^_^A

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    >えみりんさん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    もう、ヨンの場合、いろいろやらかしてくださいます。
    初っ端より、はあ、というようなことを(笑
    ただ後半は白兵戦なので・・・うーん、ですね。
    怪我ですね・・・気をつけましょう(;´▽`A“

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    >チェヨン1さん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    お布団でポチったが最後、寝落ち確定の為、お話書き中は
    どうにかPCデスクの前にて、ぽちぽちしております❤
    本当にご心配をおかけし、申し訳なく(´Д`;)
    でもだいぶ良くなりまして、鼻がたまーに、くらいまで
    回復してきております。柔らかティッシュは必需品です( ´艸`)
    ヨンの動き、早い故今回はオモモモ!な見切り発車まで。
    後でうんと、反省いたします・・・

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    >わいやーさん
    こちらにもコメありがとうございます❤
    好き過ぎて詰め込んで見にくくなったので
    ちょっと改良してみました。
    如何でしょうか・・・(●´ω`●)ゞ

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    >さらんさんへ
    そうですね(;^_^A
    では、どの様に纏めて頂けるのか、楽しみにしています。
    戦の中にあって、どの様な戦況でも、ヨンの格好良さが目立っている事でしょう(*^o^*)

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    >ままちゃんさん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    チュンソクはもう、ある意味ヨン二、永遠の片思いを(爆
    漢が惚れる漢、それがチェ・ヨンで御座います
    (あ、女も惚れますが)
    今回はヨンに惚れた漢たちが、山ほど出ます(*v.v)。
    いえ、決してBL系ではないですよ?
    そちらを書く筆力は、私には全く御座いません・・・

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    >夢夢さん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    新章は、そんな夢夢さまにぴったりな感じから始まります。
    今回はとにかく、漢チェ・ヨンに惚れた漢たちが
    これでもか!これでもか!と登場(爆
    信義・漢祭です。ウンスですら、友情出演レベルです・・・
    (だってヨンが甘々になってしまうのですもの)

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    >あみいさん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    はい、序章はウンスが戻る直前から始まります。
    実際に紅巾族との直接対決は、帰還後ですが。
    この先、実際は4年ほどの間に、高麗史激動の
    戦いが、何度も起きます。
    そしてその合間を縫って、ヨンの人生も激動、激変。
    書くのは楽しいですが、余りの濃さに、読み手様の負担も考えねばと
    現在はいろいろ、思案中で御座います・・・

  • SECRET: 0
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    >ポチッとなさん
    こんにちは♡コメありがとうございます
    大護軍どころか、ヨンは大将軍になっても
    もう、このままですね・・・
    言葉でなく肚を読め、と言い切る漢ゆえ(゚ー゚;
    出来ねーよ、あんたじゃあるまいし!と
    周囲の部下や同僚は、思っておるやも知れませぬ(除:テマン

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    >mayuさん
    わぁい、再コメありがとうございます。
    ええもう、どのシーンのどんなとこでも
    素敵でなければヨンではない!と思いつつ・・・
    結構フライングするので、反省させつつ・・・(゚ー゚; ですw

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    >kumiさん
    わぁい、再コメ、ありがとうございます❤
    そうなのです、この辺りからちょっと入り組んできて
    なかなか、分かりにくくなるかもですが・・・
    なるべくわかりやすいように( ´艸`)頑張ります❤

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