2014-15 リクエスト final | 結・6(終)

 

 

「て、隊長、その、手の包帯は」
「気にするな」
「で、でも」

行水の時に皮水筒を渡されて飲んだ、そこまでは覚えてる。
そこからの記憶が全くない。

明け方目が覚めると、体が動かなかった。
そしてなぜか隊長の部屋の框に敷かれた布団に、縛られた俺は転がっていた。

後ろ手のままその紐をどうにか解こうともがいていると、音に目を開けた隊長が大股で俺へ寄り紐を解いた。
その両手に白い包帯で巻かれていた。

「て、隊長、その、手の包帯は」
「気にするな」
「で、でも」
それ以上の言葉はなくて、隊長はふと思い出したように、懐から俺の手刀を出し布団の横に揃えて置いた。
「お、俺、何かしましたか」
「まあ、一杯喰わされたな」
隊長はそう言って頷いた。

何もしていないなら、縛られて転がされてるわけがない。
だけど前後不覚で暴れても、隊長にだけは絶対に何もしない自信があるのに。

「ともかくお前の所為ではない。大したことがないのを大袈裟にされただけだ」
隊長はそう言って、包帯を巻いた両掌を軽く振った。
「でも隊長、俺」

俺を振り返ると隊長は渋い顔をして
「信用を逆手に取った奴らが悪い、此度はな。しかしお前も信じてるとはいえ、口にする物には少し気を付けろ」
首を振ってそう言った。
「でも」
「これ以上は訊くな。顔を洗って飯だ、行くぞ」
「はい!」
隊長が訊くなと言うなら聞かない。
そう決めて、俺は勢い良く立ち上がった。

隊長の背にについて俺が階段を駆け下りると、吹抜けの下で副隊長がげっそりとした顔で、飛び跳ねる俺を眺めていた。
「お、おはようございます」
「ああ、テマナ」

副隊長はそう言って、左腕に出来たいくつかの丸い痣をさりげなく右手で隠しながら
「気分は、悪くないか」
疲れたみたいにそれだけ訊いた。
「い、いえ、特に何も」
「そうか・・・」
そう言って太い息を吐く副隊長に首を傾げる。
「なら良い。良い。うん」
副隊長はそこで力なく頷いた。

隊長の後ろについて食堂へ入ると、朝のざわついていた食堂が何故か水を打ったようにしんと静まった。

「テ、テマナ?」
トクマンが隊長への挨拶もせずに駆け寄って来る。
そして隊長の前でびたりと足を止め
「おはようございます隊長、あの」
「もう良い。二度とするな」
そう言う隊長の声に、トクマンはこくこく頷いた。

「お前、なんかしたのか?」
俺の声にトクマンは頷き
「あ、あのな、実は」
「テマナ!」
トクマンの声の途中で、トルベが食堂に駆け込んで来た。
「おはようございます、隊長」
トルベには本当に珍しい。隊長より先に俺を呼ぶなんて。

「で、テマナ、お前大丈夫か」
俺に聞くトルベの方が酷い、何だかあちこち青痣だらけだ。
「トルベ、もう良い。二度とするな」
隊長の声にトルベは黙って頭を下げた。
何なんだ、みんなして。

そこへ悠々とチュソクが入って来る。
「おはようございます隊長」
いつも通りまず隊長に頭を下げた後、食堂中を見渡して
「おいおい、見世物じゃない!お前らは早く食事を終えて朝の鍛錬の準備をしろ」
チュソクが一声咆えると、みんなが我に返ったように猛然と朝飯をかき込み始める。

その様子を確かめてから振り返ったチュソクの顔に出来た真新しい引っ掻き傷に驚いて
「チュソカ、それ」
そう言って俺は傷を指さした。

間違いない、俺が何かしたはずだ。
他の奴らの傷ならともかく、副隊長の腕、トルベの痣、チュソクの傷、そして隊長の両手の包帯。
黙ってじっと見る俺の肩に無言のチュソクの重たい両手がぼんと乗る。
「テマナ」
チュソクの無言の後を受けるように、隊長が静かに呼んだ。
「はい隊長」
「お前、絶対酒は飲むな。誰がどれほど勧めても」
「はい?」
「良いな」
「は、はい!」

そんなやり取りに食堂の中に座った奴らが一人残らず俺を見て頷いているのを、背を向けている俺は全く気付かなかったんだ。
俺の返事に隊長はゆっくりと頷いて、振り返り食堂中を見渡して
「で」
低い声で呟いた。

「昨日典医寺で大袈裟に騒いで、医仙を連れて来たのは何処のどいつだ」

その声に食堂中の奴らが無言で席を立って押し合うように扉から飛び出して行くのを、隊長は半眼で睨んだ。
「答えたくなる程度に、体に聞いてやる」

今日の鍛錬は厳しそうだ。
それに備えて俺は伏せた茶碗をいっこ取り、薬缶の水をたっぷり注いで飲み干した。

 

 

【 結 ~ Fin ~  】

 

 

 

2014-15 Xmasリクエスト、今回の【 結 】をもって
全話終了しました。

まずは此度の素敵なリクを下さったみゅうさま、
本当にありがとうございました。
そしてヨンで下さった全ての皆さま、
本当にありがとうございました。
ちょんまる かむさむにだ!

この後纏めがてら、リクエスト篇のあとがきに変わるものを少し。
その後はいよいよ、本編二次に戻ります。
我が家のイムジャカポーは何しろまだ未婚故ww

前後しながら、【 三乃巻 】そして【 花男・二次 】など
いろいろ考えてはいます。
脳みその中は、これからのお話でぱんぱんです。
(あ、仕事の事もちょっとあります。あと4/15~新発売の
スタ*のヨーグルトフラペチーノの事とか、ミス*の可愛いマグの事とかw)
体力回復に努めます。

心より愛と感謝を込めて

さらん

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11 件のコメント

  • SECRET: 0
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    折角のお話が文字化けしている様ですよ!
    読もうと思えば何とか読めましたので、話の内容は解りました
    テマンがお酒を飲まないのが良く解ります、だからヨンから勧められても飲まないんですね(;>_<;)

  • SECRET: 0
    PASS:
    リクエスト最後にふさわしい、ほのぼのとした作品でした。お互いがお互いを思いやっている。こんな風景は、いつの時代もいい風景。いい風景に囲まれて暮らしたい。でも、それは自らも作り手ということですものね。。
    最後のコメントの中で、さらんさんが、ささやかなことに小さな幸せを見つけている姿がなぜか嬉しくて。また、母になっております。。
    初々しいさらんさんを感じながら、お身体を休ませ、健康を取り戻されますように。
    心からお祈りしております。

  • SECRET: 0
    PASS:
    久々にコメ致しますm(_ _)m
    リクエスト、大変お疲れ様でしたm(__)m
    体調を悪くされても書き続けられ、本当に頭が下がりますm(__)m
    でも、ご無理はなさらないでくださいね!
    あの…私だけかもしれませんが、今回の記事にタグ編集のような英語や記号の羅列が沢山入っていまして…
    ブログ村にも飛べなかったので、一つ前の記事から飛んできましたf^_^;)
    もし確認していただけましたら、そしてやはり私が見たような状態でしたら、この後読まれる方が読みやすいように修正していただけると良いかと思います。
    差し出がましいことを書きました。私だけでしたらすみません(>人<;)
    失礼致しましたm(__)m

  • SECRET: 0
    PASS:
    いいね が50もあるということは 皆さん読めたんですよね…
    私は 英語?と 混ざって ???です…
    なぜかな~~~なんで~~~
    読めない~~~泣
    このコメント削除してください

  • SECRET: 0
    PASS:
    結・6(終)ですが、我が家のパソコンで見るととっても変です。すべての行の終わりに、br class="codelinebreak"が入っていて、とっても読みにくいです。我が家のパソコンがおかしいのか?
    今まではこんなことはなかったのに。

  • SECRET: 0
    PASS:
    最後の部分がくわわり、さらにしみじみいたしました。。
    先ほどお送りしたコメントお読みいただければ幸いです(*^^*)

  • SECRET: 0
    PASS:
    初めのアップ。がんばって読んだんですけど、やっぱり読み間違いだらけで、まってたかいありました。(^^)
    体力回復が私のリクエストです。コメ返不用。スルーしてくださいね。

  • SECRET: 0
    PASS:
    さらんさん
    ほんとにお疲れ様でした。
    part3にて
    私の思うたけは書きましたので(*_*;
    削除してくれましたか?ハズカシイ(´д`|||)
    後コメでの文章にて
    もしかしたら休まずアップ?( ・∇・)
    体調不良の時くらい休んでくだされ(゜ロ゜;
    さらんさんのお仕事もかいま見えて
    なるへそ
    文章が上手なはずだわ(*^^*)
    ←上から目線ですみません。
    雑誌探し当てて(まだ検討がつかない)
    購入したいと思います。
    売り上げ貢献で感謝を伝えたい!(  ̄▽ ̄)
    素敵お話ありがとうございました(*^^*)

  • SECRET: 0
    PASS:
    本当に長い皆様のリク、最後まで気を抜かず書き上げて頂いたこと感謝です。
    どうぞゆっくり静養して下さい。
    また、パワフルな
    さらんさんの物語、楽しみにしています。

  • SECRET: 0
    PASS:
    テマンは とんだ目に(覚えてないけど…)
    テジャンにとっては 怪我の功名?
    あれ 違うかな? ふふ 素敵な話しになりました。
    お疲れ様でした。
    なが~いなが~い
    リク話 ありがとうございました。
    とても楽しめました。
    体調いかがかしら?
    コメも大変でしょうと 思い 遠慮したり~
    自分が 忙しくって いっぱいいっぱいで
    読みに来るだけで… ってこともありました。
    入院生活 大変ですね
    キツイと思いますが しっかり食べて
    栄養とってね~。 
    無理せず 更新してくださいね
    今は ゆっくりしてください ( ´艸`)
    ぽっぽも 応援してますよ~

  • SECRET: 0
    PASS:
    さらんさん、クリスマスのリクエスストシリーズ、全話終了、お疲れ様でした。
    どれもそれぞれ素晴らしくて、毎日、スマホやPCの画面を開けるのが楽しみでした。
    最後のテーマも、実際に本編に入れてもいいようなお話で、いつものことながら映像が目の前に浮かんできて、ハラハラドキドキしましたよ❤
    私に資金とその筋の力があれば、さらんさんの台本で続編を撮りたいくらいです。
    たった一杯の酒で、周囲を恐怖に陥れたテマンですが、いくら正体を失っても大好きなヨンにだけは無体を働かぬ自信があったのですね。
    二人の絆の強さを再確認でき、嬉しかったです。
    さらんさん。コメ返は嬉しいのですが、いい気になってほぼ毎日コメントを送りつけてしまった私へのお気遣いは、決してされませんように。
    私を含めて、皆さんはさらんさんの次回作を心待ちしているはずですから(#^.^#)

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