2014-15 リクエスト | 櫻祭・3(終)

 

 

祭の会場の端、目当ての隊長を囲む懐かしい面々。

「本当に来ていたとは」

大急ぎで隊長に駆け寄る私を見てそう呟くのは
「久しぶり、チュンソク副隊長」
「二度と会いたくはなかったですが」
「申し訳ない」
「全くです」

チュンソク副隊長が冷たく言い放つ。その声にその場の面々が深く頷く。
チュソクも、テマンも、もちろん隊長も。

「副隊長、まあそう言わずに。女人相手ですから」
トルベだけが笑って、こちらに手を振りながら取り成してくれる。
「トルベは優しい」
私はしみじみ呟く。女好き故でも構わない、もうこの際。

「女人…」
「まあ、男ではないから女人か」
「女だなんて、考えられません」
「全くだな」
「良いところせいぜい妹分だ」

全く正直な男たちだな。

「個人的見解は不要。隊長、もう踊って頂くしか」
縋るような声を作り懇願すると、隊長は首を振る。
「しつこい」
「そうか。ではこちらも非常手段だ」
「何だよ」
「気にしないで」
「はっきり言え、何だ」
「いえ、別に」

私はそう言って、首を振る。
「ただ暴動が起きたりね。酔ったウンスオンニがチャン先生とどうにかなったりね。さもなきゃ」
「・・・挨拶だけならする」

顔色を変えそう言った隊長に笑いを噛み殺し、私は頷いた。
「仕方ない、それで手を打つ」
そう言った私に、顔色を変えたテマンがじりと寄る。
「嘘です済みません心からありがたい」
慌ててそう言い直した時、広場の中央から背の高い影が
「隊長」
そう叫びながら、駆け寄ってきた。

私たちは一斉に、その声の主へ目を向ける。
「トクマニ!」
呼ばれたトクマンが目を見開いて、上から下まで何度も確かめるように、こちらを見た。
「この小さいのが例の」

その声に、その場の男たちが重く頷く。
「想像と、違いますね」
「それは残念だね」
私の捨て台詞にトクマンは溜息を吐くと、
「そんな事より、隊長。女人たちが騒いでいますが」

そのトクマンの声に、隊長が私をじろりと睨む。
「踊りはせんぞ、絶対に」
「それなら相手は、俺達が引き受けます」
隊長のその声に、トルベが嬉し気に声を上げる。

「俺、たち」
トルベの声に、チュンソク副隊長が不安げに目を遣る。
トルベは嬉し気に大きく頷いた。
「良いじゃないですか副隊長、隊長を助けると思って。祭ですよ、無礼講で行きましょう」
「待てトルベ、俺たち、とは」
チュソクが慌てたように、目を丸くして問いかける。
「俺、副隊長、お前、トクマニにテマナ。侍医にもお願いしましょう。
どうですか、隊長は挨拶の後に侍医と交代して、医仙と共に居れば」
「トルベ」

隊長は、じっとトルベを見返した。
「お前、良い事言うな」
「一挙両得ですよ」
そのトルベの声に、皆の溜息が重なった。そうそう、さすが迂達赤だ。
連帯責任だね。隊長が駄目なら部下がフォローする。私はトルベの声に深く頷いた。

「仕方ない、行くぞ。さっさと終わらせる」
隊長がそう呟いて春の光の中を歩きだす。
その後ろに迂達赤の面々が付き従う。

嬉し気に笑っているのがトルベだけなのが気に掛かるけど。
皆だって、良い出逢いの機会かもしれないじゃないか。

出会いは何処にでも転がっている。気付くか気付かぬかは運次第。
それを育てていくかどうかは二人次第。そんな偶然が重なるから楽しいんだよ。

生まれるかもしれない素敵な運命の偶然を想像しながら、私は彼らの列から離れる。
次に目指すのは、酒樽の卓の横のウンスオンニ。

「オンニ」
そう言って駆け寄ると、ウンスオンニが振り向いた。
「ねえ、あの人あそこで何やってるの?」

指差すその先には、女性たちの前に進み出た隊長の姿。
「挨拶だけしたら、ここに来る。チャン侍医」
そう呼ぶと、隊長を見ていた侍医がこちらに目を戻す。

「私と、交代ですか」
その声に、ポンと手を打つ。
「さすがに察しが良い」
それに苦く笑うと、侍医が首を振る。
「隊長の身代わりに、あの方々のお相手をしろと」
その答えに打った手をパチパチ叩くと
「本当に抜け目がないというか、鉄面皮というか」
呆れたように言われる。

「それも皆のためなので」
そう言ってその顔をじっと見ると、心の読めぬ表情でしばらくこちらをじっと見つめた後に息を吐き
「・・・分かりました。ご協力しましょう」
侍医は薄く笑うと、そう言って頷いてくれた。

女性たちの目の前で二言三言話したらしき隊長がそこを後に、急ぎ足でこちらへと向かって来る。
「挨拶は終えた。もう良いな」
「いいじゃない」

隊長の声に、ウンスオンニが返す。思わぬ伏兵に
「は」
隊長は驚いたように、目を瞠った。
「いいじゃない、私たちも楽しもう」
「楽しむとは」
「せっかくの櫻祭だもん。一緒に遊ぼう」
「嫌です」

言下にそう退ける隊長に、膨れたオンニが言い募る。
「頑固なんだから」
そう言いながら、オンニはが隊長の手を握る。
「人前で踊るなど武人として有り得ぬ。面目が立ちません」
その手を静かに払おうと、隊長がオンニをくるりと回す。
「いいじゃない、お祭りよ?イベントの時くらい」

そう言って、オンニがまた手を伸ばす。
「無理です」
「え~、つまんないの」

そのじゃれ合いでも、すでに十分恥ずかしいだろう。
既に踊っているようにも見える。
オンニは諦めず隊長の傍へ寄る。 隊長が笑ってそこから遠ざかる。
桜の花が見せる、幻みたいな綺麗な景色。

櫻祭の佳境はこれから。楽しみだ。
もしかしたら、隊長の気も変わるかもしれない。

オンニ、任せた。頑張って説得して。そう思いながら踵を返す。
皆が粘って、最後に隊長と踊れることを祈りつつ。
もう来ることはないこの高麗に、心の中で手を振って。

 

 

【 櫻祭 ~ Fin ~】

 

 

 

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リク話【 櫻祭 】終了です。
ひまわりさま、素敵なリクありがとうございました。
そしてヨンで頂いた皆さま、ありがとうございました。

うーん、難しかったです。
さて、昨日の今日でショックを受けている方も多いと思いますが。
隠すのと公開と、どっちがいいのかなと思います。
同年代の恋愛体質の私としては全然ありかなーと思いますが、
これでミノペンの皆さまが傷ついたり、オチたり、
離れていったりするのは辛いかな・・・(´・ω・`)

リク話、残り4話。3月中の終了は無理そうです。
リク話が終わったら、長くお休みをいただきます。

次回からは、何とまたもチュンソク。
お楽しみ頂けたら嬉しいです。

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15 件のコメント

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    毎日さらんさんの小説読んで、癒されていました。長期休養はとても残念ですが、ゆっくりと休んで、また復帰して下さいね。待っています。それまでまた、癒して下さい(笑)

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    さらんさん、今朝もお話を更新いただき、ありがとうございます❤︎
    ヨン、踊らないだろうなあと思っていましたが、櫻の花びら散る中、
    ウンスに手を引かれグルグルされてしまっては、楽しそうに踊っているようにも見え…

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    さらんさんこんにちは♪
    たしかに難しいお話でしたね。
    あのチェヨンが踊るとは思えないし(◎-◎;)
    ミノくんのことではショックでしたが
    ミノくんを応援していく気持ちは
    変わらないので…(*^^*)
    お話と関係なくてすみません。
    リク話あと少しとのこと
    さらんさん
    アジャアジャファイティン(~▽~@)♪♪♪

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    ヨンも こんなに大勢の女人に
    押しかけられるなんて~ 未知の体験
    暴動寸前 ぷっ 収めるには 
    一曲お相手… 簡単なようで 難しい
    それに 奥に控える 目のすわってる
    ウンス様が…
    後は ウンスに
    お・ま・か・せ ( ´艸`)
    ぽっぽ~ (///∇//)

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    さらん様
    いつも素敵なお話を書いていただいてありがとうございます。
    去年の年末に二人目を出産して、単調な育児生活の真っただ中で、さらん様の書くストーリーで切なくなったり、涙したり、胸キュンしたりetc.,と兎に角、毎日楽しみに読ませて頂いており、息抜きにはもってこいで、癒されています

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    さらん様ステキなリク話ありがとうございますm(_ _)m
    高麗の櫻祭楽しく賑やかに過ぎて行ったんでしょうね
    大虎ウンスさんにならなくてちょと安心でも
    花篝の下の天女と美丈夫ちょと羨ましいわ~(*^_^*)
    さらんさん【 櫻祭】お疲れ様ありがとうございました。

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    毎日 お話を楽しみにしています。コメントを書いた事は無かったのですが、こちらのサイトを見つけてからは、喜んでお話を読ませて頂いてました。有難う御座います。ところが、リク話が終わったら長くお休みしますと書いてあり えーとショックを受けています。毎日毎晩の楽しみが……わがままですが、短いお休みでお願いします。いつも楽しいお話を有難うございます。

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    >ももぴぃさん
    おはようございます❤コメありがとうございます
    癒されて下されば嬉しいです。
    長期休暇は、単に体のことなので、しっかり休んで復帰します。もちろん❤
    まだまだお話は続きます。もう暫し、お付き合いください(*v.v)。

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    PASS:
    >muuさん
    おはようございます❤コメありがとうございます
    うふふふ、そうです。もう二人のじゃれ合いは、すでにダンス。
    ヨンで頂き、ありがとうございました(*v.v)。

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    PASS:
    >愛知のひとみさん
    おはようございます❤コメありがとうございます
    ありがとうございます。あじゃあじゃo(^-^)oふぁいてぃん❤
    ミノ氏・・・今、書き上げたお話の全公開を本気で悩んでいます。
    ヨンでどなたかが楽になるなら、単なる妄想でもヨンでほしい。
    でもこれ以上傷つけたくない。傷ついてほしくない。
    書き上げた自分の心の中の声に、とても悩んでいて。
    うーん、です・・・

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    >くるくるしなもんさん
    おはようございます❤コメありがとうございます
    ぽっぽ、頑張りましたよwたぶんw
    あの顔困り眉で、女人の話相手をしていました、きっと。
    ヨンでいただき、ありがとうございました(*v.v)。

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    PASS:
    >せーらさん
    おはようございます❤コメありがとうございます
    可愛いお二人の育児にお忙しい時間を割いて、お読み頂けて嬉しいです❤
    本当にありがとうございます( ´艸`)
    またお時間のある時には是非♡お待ちしています(*v.v)。

  • SECRET: 0
    PASS:
    >ひまわりさん
    おはようございます❤コメありがとうございます
    あんな風に終わってしまいました、頑固隊長。
    でも、お楽しみ頂けたら嬉しいです❤
    ヨンで頂き、ありがとうございました(*v.v)。

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    PASS:
    >きくちゃんさん
    おはようございます❤コメありがとうございます
    そうなのですよ、私も出来れば短い休みにしたいと、ぜひ祈っているのですが
    何しろ敵は病院&病気なもので(;´▽`A“
    自分の意志力だけでは、どうしようもなさそうです。とほほ。

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