向日葵 | 6

 

 

街道に出る前、この方の笠を今一度被せ直した。

それでも目を引く方だ。
俺が前を、左右をテマンとチュンソクに護らせ、早足で街道を突切り一番手近な旅籠に飛び込む。
チュンソクが旅籠の主と交渉している間テマンを走らせ、男物のチョゴリとパジをひと揃えさせた。

表門から一番の死角で、かつ護りを敷きやすい中庭の部屋を確保した後。
チュンソクとテマンは部屋の戸より、左右にそれぞれ五歩離れて立った。
其処でようやく、この方の笠を外す。

纏めて笠に隠していた髪が、さらりと音を立て流れ落ちる。

部屋の隅に置かれた椅子を二客運んで一客に腰かける。
この方はさすがに少し疲れた様子で俺の足元に腰をおろし、俺の膝の上に横向きに頭を預けた。

「お掛けにならないのですか」
その横顔を膝に乗せ、頬にかかる髪を指先で梳きながら静かに問うと、心地良さげに瞳を閉じたまま
「ここが良いの」
と微笑んだ。

まるで陽だまりの猫の如き様子だ。
喉を鳴らす音までしそうに、ゆったりしておられる。

その横顔、閉じた睫毛に触れたくてならず、けれど疲れたろうと思うと出来ず。
俺は身をかがめ、その頬にかかる髪を指先で梳いた。

俺が身を起こした後も彼女は俺に髪を梳かせたまま、もう片方の俺の手を探し、見つけだして握る。
繋いだ指の隙間を埋めるように己の指を差し入れて絡ませ、残った親指で小さな掌や、手首を摩って労わった。

しかし己の指が幾度目かの往復で、急に何かを感じ、止まった。

 

 

 

 

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12 件のコメント

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    知らぬ土地・知らぬ世界へ行ったウンス。
    苦労も恐怖も、全て忘れさせてくれる温もり。
    再び出会えた喜びを、ヨンの膝の上で静かに感じているのでしょう。
    なんか、とても大人の表現だなぁ:*:・( ̄∀ ̄)・:*:と思います。

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    >mayuさん
    うわーい❤
    コメ、ありがとうございます。
    ヨンの前に座るのは違う。
    距離を感じたくはない。
    でも、膝に座るのも違う。
    そんな積極的にはなれない。
    だから膝でした。私の中で(●´ω`●)ゞ

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    我慢していたウンスの感情が、態度で表れた感じです。
    一時でも、触れていたい・ヨンを感じていたいと、訴えているようです。
    膝に凭れながら、ヨンに髪を梳いて貰う心地良さが、ウンスの心を癒しているように思う。
    そして、無骨な武士は(笑)必死で感情を押し留め、恋人繋ぎと髪を梳く事で精一杯労っていますね。
    二人の穏やかで、幸せな時間が伝わってきます。

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    >mayuさん
    こんにちは❤コメありがとうございます。
    いよいよ台風、風雨本番ですが
    mayu様のお住まいの地域が静かでありますように。
    そうなのです。
    向日葵だけ読んだら、ふーん、で飛ばすところも
    今までのお話で、パイ生地が重なって
    「ああ、ここ、こんな意味だった」と
    読み返して、気づいて頂けるように
    猪口才な仕掛けが、そこここにw
    その中で一つだけ変わらず聴こえる
    ヨンの声だけ信じつつ、書いております(〃∇〃)
    ただ、難しいです。私の追っかけるものは
    多分、気楽に二次を楽しみたい方にすると
    重たさの押し付けなのかな、と思ったりします。
    筋とか、構成とかはいいから!と気楽に読みたい方、
    絶対いらっしゃると思うのです。
    悩みます。゚(T^T)゚。

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    >さらんさんへ
    それはそれで、選択をされると思います。
    重い時があっても、ヨンとウンスは揺るがないのですから、御自分の「シンイ」を信じて書いていただければと思います。
    さらんさんのファン、沢山いらっしゃるじゃないですか(o^-')b
    皆さん、UPと同時に「いいね」押してますよ(^▽^;)
    私も、しょっちゅう気に掛けて見ていますもの(*゚.゚)ゞ
    何だかんだと言いながら、ドップリ嵌っておりますしね(笑)
    楽しみなんですよ、これからも宜しくお願いします(。-人-。)

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    >mayuさん
    コメありがとうございます❤
    ううむ、難しいですね。
    皆様の読みたいものと、自分の書きたいものと
    中庸を取るのは、至難の業ですσ(^_^;)
    いろいろ、考えます。
    短篇に向いていない自分とか(爆
    コメディやRが書けない自分とか(爆爆
    何なら甘い話すら今一つな自分とか(爆爆爆
    切ない話は好きなのですが
    甘い話って何、何で照れてるの自分?みたいな
    (°Д°;≡°Д°;)

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    >さらんさんへ
    大丈夫です!自信を持って下さい。
    中庸を取る必要はありませんよ。
    さらんさんのお話、離れる人はいません。
    新たに入る人はいてもね(o^-')b
    悲しい事があっても、辛い事があっても、続きが読みたくて待っています。皆さん惹き付けられていますもの。
    このシンイにコメディもRも無くていいです。
    それが、さらんさんの「シンイ」ですから。
    そして、皆それを読みたいと思っていますから。

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    >mayuさん
    こちらにもコメありがとうございます❤
    ふふふ、コメディもアリとは思うのです。
    書けないだけで(^▽^;)
    Rだって、Rだってたまには!
    書けないだけで(°д°;)
    書けないだけと言って、自分を甘やかし逃げる
    この腐れ根性が、一番の問題です(-"-;A

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    >さらんさんへ
    ふっふっふっ・・・( ̄ー☆
    じゃあ、書いてみますか?
    短編で・・・(´0ノ`*)
    良いですよ~γ(▽´ )ツヾ( `▽)ゞ
    濃厚なのは、よそ様にお任せしてソフトに如何?
    何時でもお待ちしているわ( ´艸`)

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    >mayuさん
    こちらにもコメありがとうございます❤
    そうですねー、そのうちに(爆
    大人になったら書いてみましょう(´0ノ`*)
    何しろ他の二次に疎い私、そうか・・・
    よそ様ではそんなに濃厚な・・・っっ!
    私には絶対、絶対・・・
    ヒー(°Д°;≡°Д°;)ムリムリデス

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    >さらんさんへ
    この年でも、ドギマギしますから~(//・_・//)
    だから、あるがままに・・・(=⌒▽⌒=)
    気負う事無く、必要と思えば書けるだろうし、なくてもそれは「さらんさんのお話」で良いのでわ?

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    >mayuさん
    こちらにもコメありがとうございます❤
    そうなのです。
    実は一つ、え!なお話を格納してあるので
    それはその時にまた・・・とは思っておりますが
    やはり、身の置き所なく照れて、身を捩る私。
    だって、ヨンが・・・っっです。

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