テマンが鳩を胸に抱きヨンの私室に飛び込んできたのは、三日目の昼過ぎだった。
珍しく息を切らせ鳩を差し出しながら
「大護軍、今つきました」
と律義に報告する。
ヨンはその脚に結ばれた文を素早く解いて一読する。
そしてテマンの肩を叩くと、部屋を出る。
その後ろをテマンが喜びの余り、跳びながら従う。
どうにか、間にあった。
ヨンとテマンは庭を抜け、迂達赤兵舎の執務室に入る。
「大護軍!」
「大護軍!!」
室内で会議中だったチュンソクと迂達赤組長らが、一斉に椅子から立ちあがり敬礼する。
それを眸で制しチュンソクに顎をしゃくると、気付いたチュンソクが一人表に出てくる。
「手裏房が到着した。会いに行く」
「かしこまりました。護衛を」
「不要」
「は」
その足で、ヨンはテマンとともに町の飯屋に出向いた。
さりげなく周囲の気配を読むが、怪しい影はない。
店に入るとそのまま裏の木戸から裏通りへ抜け、通りの向かいの小屋へ入った。
「ヨンの旦那、久しぶりだね!」
そこで待っていた手裏房の若い弓使い、シウルが立ちあがり人懐こい笑みを浮かべた。
その横でシウルの相棒チホが、槍を床に立て直して言った。
「いつになったら、稽古をつけてくれるんだよ」
「今回は誰だ」
ヨンがそう尋ねると
「こっちにいた仲間に声をかけたよ」
とシウルが応える。
同時にシウルの後ろに座っていた影が、す、と横に動いた。
「相変わらず生意気そうな面構えだな、ヨンア」
大護軍をヨンアだと?
テマンが睨むと、その男もテマンを面白そうに見返してくる。
「・・・ヒド」
大護軍にヒドと呼ばれたその男は、見た所丸腰のようだった。
背丈は大護軍ほど高くはないがいい勝負だ。
真黒い黒染めの上下を身に着け、髪を後ろに縛っている。
「此方にいたのか」
と、ヒドがヨンに声をかける。
「ああ」
「宮仕えは辛いな、こんな辺境に」
「無駄話は良い」
ヒドのからかいを含んだ声を遮り、ヨンは手裏房を見渡した。
「あの方が戻られた。王命下り次第、開京に帰る」
そう伝えると、ヒドが口笛を吹いた。
「噂の医仙、天の仙女か」
それを無視してヨンは続ける。
「道中、刺客に襲われるやもしれん」
「勇名轟く天下の大護軍とも思えんな、ヨンア。女人一人の為に骨抜きか」
いちいち茶々を入れるヒドに神経を逆撫でされ、テマンが歯を剥く。
「ああ、判った」
ヒドはそんなテマンを軽くいなすと、立ちあがった。
「心配するな、ヨンア」
すれ違いざま、ヒドというその男は、ヨンの肩に手を置いた。
その手は黒鉄の手甲で覆われている。何から何まで真っ黒い男。
大護軍に気安く触れるなとテマンが睨みつけ、袖に忍ばせた手刀の刃、半分ほど触れて確かめる。
ヒドはどこまでも愉快そうにそんなテマンの殺気を受け流し、ぶらりと小屋を出ていった。

オリジナルキャラ、どうでしょうか。
今回のキーパーソンになりそうです。
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チホは、相変わらず稽古を強請っているのですね( ´艸`)そして相手にされないと言う...
オリキャラのヒド!昔の仲間(ここで書いたら拙いかな?)そしたら、コメ消しといてね。
ちょっと、ヨンを小馬鹿にした感は頂けませんね(-""-;)
死をも恐れず戦っていたヨンが、守りに入った事が面白くないのでしょうか?
ウンスの事は、一切知らないようだもの、仕方ないのかな。
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>mayuさん
そうだ!
そうなのです、私、いつも悩んでいて。
韓国語の人名は、濁音が取れるというのは
有名な話として知っていたのですが
(ソ・ジャングムは名前で呼ぶ時"チャ”ングム、
みたいな)
ジホは、”し”ホ?それとも"ち"ホ?と。
漢字が当てられておらず、ハングルが読めないので
語呂感で好きな"チホ"にしていますがw
こういうとこが気になって仕方ないですww
あ、ヒドはもう、こういう男なのです。
洟垂れヨンを知っている余裕でしょう
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>さらんさんへ
ハングルで、チホを如何書くのか分からないのですが?
지호ですか?字幕だとジホになってますよね。
言ってるのも、ジホって聞こえるような気がするのですが・・・
지ジは、最初にきたらチと読んだりするのですが、たまにそうではない時もあります。
特に、名前などはジが지しかないので、何とも言えません。
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>mayuさん
コメありがとうございます❤
これは、実は別件で解決していました❤
発音は「ち」と「ぢ」の中間だそうですが
やはり頭となると「ち」で表記でOKとの事で
堂々と「ち」ほで行きたいと思いますヾ(@°▽°@)ノ
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>さらんさんへ
そうだったのですね!
ありがとう、私も勉強になりました。
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>mayuさん
コメありがとうございます。
いえいえとんでもない!
私もその方に教えて頂きすごく勉強になりました。
優しく、心広く、物知りな読み手様に囲まれ
幸せで言葉もないです。
こんな無知な私に・・・嬉しすぎです、毎日❤
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やっと自分の時間になり、ここまで読み進みました。
面白い。
明日も早いからもう寝なくてはと思いつつ、もう1話だけ、もう1話だけ…。
完全に頭の中で映像化され楽しんでいます。
本好きなので縦書きの本で読んでみたいな、などと思ったり。
唐突に「はぁ~、ウンスになりたい」と思ったり。
そう言えば、ドラマにハマった時もウンスになりたいとまでは思わなかったのに。
活字を読みながらあれこれ妄想の翼が羽ばたいております。
さらんさんの書く言葉や表現がすごく好きです。
すみません。
何だか一人で盛り上がってしまいました。
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>まるまるさん
こんばんは❤コメありがとうございます
おお、まるまるさまの御読み頂くペースが
リアルに拝察できるのが嬉しいです(*v.v)。
ですがどうか無理はされませぬよう・・・
明日は金曜日で御座いますゆえ❤
ヒドさんは、このお話しが初登場だったんですね。
初めてまして、読み始めたらここまで一気読みしてしまいましてコメント遅くにすみません。他の方と画面の表示が違い、慣れなくてモタモタしながら必死に向日葵から読ませていただいています。