門の近くまで上がると、何が起きたか一目瞭然だった。
草木は全て一方向に倒れ、今も強い風が吹き抜ける。
あの時は赤い霧が立っているのを見た。
此度は気づかなかったが、しかしこの様子なら。
頼む。開いていてくれ。
足を速め、緩やかな丘の坂道を一気に駆け上がる。
祈る気持ちで石垣の角を曲がり、そして見る。
あの時と同じ、眸を射る蒼白い光を。
周囲の全てを巻き込みつつ、渦を巻く風の力を。
足を止めることなく、真直ぐ進む。
迷う事などない、お前を救う華侘を探す。
草の根分けても探し出し、必ず連れ帰る。
それまで待っていろ、ウンス。
俺は必ず帰る。
絶対にこのままお前を一人逝かせたりしない。
蒼い光の先、お前を救う華侘がいると信じて。
そのまま光の中へと踏み込む。
そして吐き出された光の外で。
余りに予想と違う光景に、目前が真暗になる。
此処は天界ではない。
あの時お前に逢うため、吐き出された仏像の足許ではない。
雲突く高い箱も、動き光る絵も、馬のない馬車も見えない。
目前には大きく目を瞠り此方を凝視する若い男と、その男が背に庇う壮年の男。
何故だ。そして何処を探せば良い。
俺は立ちあがり、俺を見つめる二人の男に目を当てた。
「もしや」
若い男の背に庇われていた壮年の男が、その背から離れ一歩進み出た。
「あなたが、華侘ですか」
元の訛りの強い高麗語で尋ねる。
何故、華侘の名を。
第一もしも華侘であれば、鎧は恐らく着ておらぬだろう。
しかしこの天門より出る者が華侘と確信している様子に、俺は首を振る。
「いえ。某こそが今、華侘を探しています。
華侘について何かご存じか。貴殿らは何故此処に」
若い男が再度壮年の男を庇うよう前に出て、俺に向かい真直ぐ視線を投げた。
「この方は現在の華侘と呼ばれる劉先生。あなたは何故、華侘を探している」
「現在の、華侘」
天門の前で出逢った、現在の華侘だと。
「まことに貴殿が、華侘でいらっしゃるか」
問い掛けに壮年の男は立ち塞がる若い背を避けて再び前に出ると、俺の正面に立った。
「確かにそう呼ぶ者は多い。しかしあなたは一体何故、華侘を探していらっしゃるのだ。
そして華侘しか潜れぬはずの天門を、どのように」
その声に答える間も惜しい。
俺はその場で真直ぐに、目の前の華侘に頭を下げた。
「某、チェ・ヨンと申す。今すぐに華侘をお連れしたき場所があり、お迎えに」
「連れて行きたい場所」
「はい。華侘を待つ方がおります。
何とぞお力をお借りできませんか」
「病を得た方か」
「いえ、傷を負った方。腹を開く手術をせねばならず、華侘のお力が是が非にも必要です」
「ソンジン」
そこまで聞くと目の前の華侘は、若い男を振り向く。
「はい」
「行こう」
「先生」
「この方がおっしゃった、必要だと。だからこそ此度は開いたのだろう」
先生の目を見つめ、俺は頷いた。
目の前であの光より飛び出した男が、心より安堵したように大きく息を吐く。
「感謝します、では」
そう言って俺たちを振り向き、たった今吐き出された光へと迷うことなく歩を進める。
俺は先生を守り、その脇へ付く。
─── 私を信じて、門をくぐって。
ウンス、必ずお前に逢いに行く。待っていてくれ。
光の中、その先に何が待つかも判らぬままに、ただそれだけを念じ俺は一歩を踏み出した。
そして吐き出された光の渦の外。
鎧の男が大きく息を吐く。
目的の場所に帰りついたのだろう。その目の中、ほんの僅かに安堵の灯が見える。
「此方へ」
先に立ち大股に早足で歩みながら、俺と先生を案内する。
俺の見た時とそっくりな、しかし少し大きい木の聳えるあの丘を超え坂を下り、一頭の馬を繋いだ場所へ。
「大護軍!!」
その声に男の歩みが一瞬止まり、前から全速で駆けてくる二頭の馬に目を留める。
次の瞬間、男は血相を変えその馬へと駆けだしながら、
「どうした!」
と大声で叫ぶ。
「隊長より命を受け、お迎えに参りました!」
馬上から二人の鎧姿の男が滑り降りる。
その兵に向かい、あの男が問いかける。
「ウンスは、あの方に何かあったのではないんだな」
「未だ大きな変調はなく」
・・・何だと。
「待て!!」
あの男の口から出た名を聞いた瞬間、俺は叫ぶと、その男たちへ駆けだした。
「今、何と言った!!」
「今、何と言った!!」
そう叫び国境隊の兵との会話に割って入った若い男に眸を向ける。
「何とは」
「お前今、何と言った。誰に変調がないだと!」
「何の事だ」
「何と呼んだ、答えろ!」
若い男は怒鳴ると、俺の鎧の胸に手をかけ大きく揺さぶる。
この鎧に手を掛ける暴挙に、駆けつけた兵らが色めき立つ。
その兵らを視線で退かせ、男だけを正面より見遣り、俺は無言でその手を払う。
「ここまで来て貴殿と口論をする気はない。傷を負った方が待っている、一刻も早く」
「待って下さい」
続いて華侘が足早に此方に向かって来る。
俺の正面に立ち、後から到着した二人の兵を順に眺めると、
「ソンジン、落ち着きなさい。そしてチェ・ヨン殿、我らを待つ患者の名は何とおっしゃる」
俺はその問いに、華侘の目を見たまま返す。
「患者の名は、ユ・ウンスと申します」
その刹那。
目の前の華侘とソンジンと呼ばれた若い男は、無言のまま互いに顔を見合わせた。
「華侘」
俺が声を掛けると華侘が振り返る。
「ユ・ウンス、その方は医者の女人ですか」
「・・・はい」
「まさか、先の世界から来た方か」
ソンジンという若い男が続けて問う。
「・・・何、だと?」
俺は男に一歩詰め寄る。
「お前今、何と言った」
正面から眸を受けた若い男は一歩も退かず、真直ぐ睨み返し、一言ずつ区切るようはっきり言った。
「ユ・ウンス。
不思議な道具を使い、この世のものでない医術を操る、先の世界から来た女人ではないか?」

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ソンジン ウンスに会えますね
でも、状況が状況だし
かなり 複雑
そして ウンスの最愛の人とご対面だし
あ~ん 泣けちゃう
とにかく ウンスを助けて!
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ヨンとソンジンの奇妙な運命が絡むんですね
お互いにウンスを想う気持ちは強いのでこれからどうなるのやら…
あー、待ちきれません(´・_・`)
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リクエストもすごいですが それに答えるさらんさんがすごい。
最近先を読まず じっくり経過を見ているのですが 今回は鳥肌が立ちまくりです そして続きが気になる気になる。
ヨンとソンジンが ウンスを巡って どう対峙するのか!
私の中で 終盤ヨンと幻ヨンが 睨みあってる… くうう 堪らん!
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もぉぐいぐい引き込まれます‼
やっぱり映画みたい( 〃▽〃)
我慢出来ずにコメントしちゃいました(*/□\*)
お忙しいのに更新ありがとうございますm(._.)m
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さらんさん…、いつもながら素晴らしい話の流れ!
テンポの良さと、「これぞ、ヨン」というセリフの数々に、今夜もどっぷりと引きこまれています。
一ミリの迷いも持たずに強い思いで天門に向かったヨンは、タイムラグも無く、ヨンスが息する世界に戻ってきたのですね。
ああ、これからが山場?
でも、さらんさん、少しは休んでね。
お身体が心配~❤
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ついにヨンとソンジンご対面。
本当に無茶振りですみません
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私の脳内イメージではソンジンの
見た目はドラマのペク ドンスなのです(//∇//)
ヨンとソンジンの登場に浮かれまくっています。
ウンスが大変なのに…
続きを楽しみにしています(^^)
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ついにウンスの事が分かってしまいましたね。
ソンジンはヨンに何と説明するのかな。
ソンジンのモデル「Big Brother」ググって見ました(o^-')b
なるほどね~ヨンより若そうですね。
ソンジンは何歳位なんでしょう。20代半ば位かな。
明日の午前中までは自宅にいるので,もう一話は読めるかな。
あ~続きが気になるのに暫く読めない~(>_<)
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>くるくるしなもんさん
こんばんは❤コメありがとうございます
外科手術、チャン&劉の技が光ります。
ソンジンはソンジンで、傷つくより別方向に行きそうだし
ヨンはヨンで、傷つき落ち込んでいるし。
この後も、しばしお付き合い頂きそうです…(°д°;)
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>3茶さん
おはようございます❤コメありがとうございます
絡み始めます。
初っ端からガチ喧嘩を売りそうな若きソンジン、
対してウンスの前では冷静さを保とうとする大人ヨン。
これは現在、イメpic作成中ですw
いったんUPするかもしれません・・・w
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>チェヨン1さん
おはようございます❤コメありがとうございます
この後は、意外なところでチャン先生が鳥肌立てます。
このパラレルに関しては、意外な人がキーパーソンだったり・・・
いい意味で、裏切れると嬉しいなと思います。
だから長編になるんじゃないか!と
自分に突っ込んだりもしていますが・・・
お楽しみ頂けると嬉しいです。
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>naomiさん
おはようございます❤コメありがとうございます
この話は、頭の中で映像が切り替わらないと
皆が一人称で話しているので、分かりにくいですね・・・
この辺に書き手の筆力のなさが滲みます。
申し訳ないです・・・( p_q)
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>muuさん
おはようございます❤コメありがとうございます
画が浮かぶと分かりやすいかなと、今イメpic作成中です。
出来れば週末にでもUPしたいですが。
山場はこれからですね、ガチ対決が何回か(え
もうしばしお付き合い頂ければ嬉しいです❤
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>kacotanさん
おはようございます❤コメありがとうございます
何をおっしゃいますかー(●´ω`●)ゞ
素敵なリクを懸けて、私こそ嬉しいです❤
ご対面後はガチ対決ですw
いきり立つソンジンV.S.罪悪感で落ち込むヨン
これはヨン、頑張らないとです。いろいろと。
そして医療部門の御二人、こちらもいろいろ、
寧ろこっちの方が意外かもしれません。
もう暫し続きます(*v.v)。
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>sakuraさん
おはようございます❤コメありがとうございます
これは、いいアイディアを頂きました!
ペク・ドンスは見たことがなかったのですが、
是非イメ画の参考にさせて頂きます❤
浮かれまくって頂くと嬉しいです、
多分これから真っ青な展開になるとは思いますがσ(^_^;)
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>すんすんさん
おはようございます❤コメありがとうございます
すんすんさまに言葉足らずを御詫びせねば、と
思っていましたー!
Big Brother氏の「声」がイメージなのですヽ(;´Д`)ノ
顔は、これ全然違う感じで。sakuraさまに頂いた
「ペク・ドンス」が近い感じで良いです。
イメpic作成中なので、出来れば週末にでもUPを❤
引き続き緊迫した雰囲気です。テホグンであるヨンがソンジンのことを若い男と言っていますが、ソンジンの方が若いのかな?