翌朝早く。
ヨンはチュソク、トルベと共に馬を駆り、再び昨日の林まで来ていた。
今日は軽功を開き、辺りの気配を読む。
子供相手に無体はせぬが、あの速さに追いつくには内功が必要かもしれん。
林の中程に気配を感じる。
ヨンは馬を動かす。
チュソクとトルベの馬がその後に従う。
気配を感じた処で馬を止め背から降りると、脇の木に馬を繋ぐ。
「おい、出て来い。何もせん」
返答は今日も返らない。
気配はあるが、来る気はないか。
面倒だな。
ヨンは軽く弾みをつけると幹を踏み台にし、伸びた手近の枝に手を掛けた。
テマンは馬の蹄の音で、木の上で目を覚ました。
あの虎が、また来た。
俺の登った木の真下で
「おい、出て来い。何もせん」
と声を掛けられる。
嫌なことだ。
テマンは身を翻すと枝に手を掛ける。
その瞬間。
目の前の枝にあの男が手を掛けて登って来たのを見て、テマンは仰天した。
音も立てずに、どうやって上った。
焦りで手を滑らせ、テマンが木から落ちる。
あの男が軽く身を躍らせて木から降りると、そのままテマンの片腕を掴んだ。
なんだこいつ。
テマンは自由な腕をがむしゃらに振り回し、男の顔を思い切り引っ掻いた。
腕を掴む男の手がわずかに緩む。
掻かれた勢いで横向きになったままのあの虎の黒い眼玉だけが、顔の中でゆっくりと、こちらに向き直ってくる。
「面白い」
テマンが掻いた頬の傷から流れて唇まで届いた自分の血を、その舌でべろりと舐め取って、男が言った。
テマンは男の腹を思い切り蹴り上げ、腕を振り払って駆け出した。
早く、早く。逃げろ。
ヨンは逃げた子供の後を追いかける。
その後ろからチュソクとトルベが続く。
「回り込みますか」
走りながらチュソクが尋ねる。
「いや、先に奴の動きを見る」
どこまで行くのか知れば、領分も判るだろう。
木の途切れた林の出口に細い川が流れている。
水場か。
その向こうに子供が渡った気配はない。
あの餌場からここまでが領分という事か。
さほど広くない。
二、三日内には捕まえられるだろう。
「馬を牽いて来い」
チュソクとトルベに言うと、ヨンは河原に降りた。
夏の河原には蛍袋が咲き乱れている。
ヨンは額に巻いていた帯を解き、川の水につけて絞ると掻かれた頬の傷を乱暴に拭う。
しみる。
そのまま河原の大きな石に上り、天を向いて目を閉じた。
テマンは木の影から、あの男が河原で大の字に寝転がるのを見ている。
水場まで抑えられたら渇き死にだ。
何だってこんなにしつこい。

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蛍袋楽しいです。テマンが猿みたいでかわいいです。定番の二人の恋意外にも色々な脇役のお話しもいつか読みたいです。頑張ってください。
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子供一人 大人三人の何日もかけた鬼ごっこ。
ヨンに傷をつけれるテマン・・敏捷だわ。(*⌒▽⌒*)
記事の日付見てみて。←余計な事かな?気になったのですいませーん┏○ペコッ
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>イタkiss大好きさん
コメありがとうございます❤
テマン、やらかしましたよ。
ヨンの顔を引っ掻くとは。あーあ。
ヨンのゴングが鳴りました。
日付、ありがとうございますm(_ _ )m
余計なんてとんでもない!
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凄い攻防戦ですね(笑)
どっちもファイティ~ン❤
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>ちよさん
コメありがとうございます❤
迂達赤は主要メンバー全員網羅で、ヨンとの
お話を書いています。
意外な感じから、うんうん、という感じまで
バラエティ豊かに取りそろえるつもりです。
出来上がり次第、公開していきますね。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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今日は1話の日かな?2話の日かな?……と楽しみに待ってました。
3話読んでから、もしかして4話もupされるかも……と待ってました。
テマンの野性児っぷりが、可愛い。
木の上が似合いますよね。
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あぁ大変、ヨンの頬に傷が!でも自分の血を舐めちゃうのちょっと萌える…ははは(*≧ω≦)テマンピーンチ!水は大事ですからね♪瞬発力には頭脳で対抗のヨン、天晴れですね♥次回がいよいよ楽しみになって参りましたo(*≧∇≦)ノ又覗きに来まぁす(*^ω^)ノ
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上手く言えないけど…
男たちの物語って~のも、いいものですね
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腹が減って、喉まで乾いて・・・
テマンの困り果てた顔が目に浮かびます。
ただ『子供を助けたい』だけだったヨンの気持ちに若干の変化が?
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>ぽんたさん
コメありがとうございます❤
今回は、可愛い鬼ごっこ(●´ω`●)ゞ
ヨンもこれ以上の流血騒ぎはない予定。
相手がテマンですから、こんなものですねーww
ファイティ~ン♪
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>アマンダさん
コメありがとうございます❤
テマナは結構、本気で悩んでいるのですが
あの顔が浮かぶと、なんとも可愛い❤
木の上、似合いますね。
私の中では、テマンの定位置は
ヨン(&ウンス)のいる場所から
一番近い、木の上ですww
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>ののさん
コメありがとうございます❤
萌えましたか! (〃∇〃)❤❤
それが狙いでございます。
虎ならば、それくらいの気概を見せて頂かねばww
楽しみにしていただけたら嬉しいです。
明日、また覗いてみて下さいませ❤
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>えみりんさん
コメありがとうございます❤
或日、は、もう男しか出さぬ予定www
何しろ、カテゴリが迂達赤です。
女の子がらみになったら、別カテ作り、
そこにに収納予定です。
そちらも楽しんで頂ければ、嬉しいです❤
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チェ・ヨンのか、顔を~引っ掻いた!
うわん・・・
凄いぞテマン・・・なんて勇気があるんだ・・・
チェ・ヨンに追いかけれて(私もされたい(*^^*))
ヤバいです・・・段々と楽しくなっていきますね
さてどうするのかなぁ~喉が乾いても・・・
川には虎が・・・(((^_^;)
ふふ・・・楽しみに待ってます
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>あららさん
コメありがとうございます❤
困り果ててます、テマナw
野生児だから、兵糧断ち水断ちは困りますね。
死に直結します。
そう、これから少しずつ変化が。
どうなりますか、楽しんで頂ければ嬉しいです❤
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知力にも腕力にも優れるヨン。素敵❤︎
メヒと隊長を失って以来、人物に執着を見せたのは、多分テマンが最初でしょうね。
ウンスと出会うずっと前の時代のとんがってるヨンも大好きです‼︎
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>亀ちゃんさん
コメありがとうございます❤
顔を引っ掻かれて、やる気スイッチ入ったヨン。
地雷を踏んだか、テマナ。
さてさて、水場を押さえられ、兵糧断ちの憂き目のテマナ。
こっから一気に終盤です。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>夢夢さん
そうですね。そこ大きいです。
この後のお話で、通じると良いなー。
とんがってますよね。
私は、赤月隊時代のヨンのやんちゃな話し方が好きです❤
隊長に対しても無邪気に傍若無人だしww
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離れていたら石、近寄れば引っ掻いてくる
まさに猿のようなテマン
智を伴う虎と本能の猿
手懐けるのはどうするのか楽しみにしております
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>あみいさん
コメありがとうございます❤
そうなのですよー。野生児に手古摺る
迂達赤メンバーたちでございます。
手なづけるには、やはり、ああ。と思う方法ですww
明日で最終の予定です。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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野生児テマン、今はヨンをかなりうざく思っている事でしょうが、それが徐々に隊長命に変化していくのか、その変遷をじっくり観たいです。
ヨンとの出会いは小説本でも軽くしか触れられていなかったのでテマン好きな私としては些か消化不良気味でした。
こちらでそれが補えるのが嬉しいです。
今後も期待しています。
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>らいかさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
今はマックスですね。腹減ってますから(爆
これから、さて、どう変わるでしょうか。
本来は、この長さなら、もう少し話数を
増やすところですが
今回は、結構長めになっています。
ちょっと読みにくいですが、申し訳ありありません。
今日で【 蛍袋 】 終了のつもりです。
夏の花だから、夏の間に終えられて一安心❤
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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ヨンからん逃げ切るなんて凄い。
ましてや、ヨンを引っ掻いて怪我させるなんてΣ(~∀~||;)
誰にでも出来る事じゃないわ。
ヨンは、興味と本能的に闘争心に火が点いたかな?
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>mayuさん
おはようございます♡コメありがとうございます。
テマナ半端ない野生の力ww
でも、迂達赤が刀を抜かずに追いかけているのは
やはり本気ではないんです。
本気なら、斬っちゃうから イマコワイコトイッタ!Σ(・ω・ノ)ノ!
そう、「面白い」のあの一言は
そういう全てがこもった決め台詞&血べろりw
今宵最終話で、宜しければまた❤