前夜

 

 

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事前エントリーは明日12/15(木)21:00~です❤

 

乙女だらけのChristmas Party 2016 

 

 

**********

 

 

浮かれたような足音の響く部屋内を、扉の影から静かに眺める。

此方の気配に鈍いのは何時もの事とは言え、鼻唄交じりの楽し気な気配が気に喰わん。
俺なしでも嬉し気なのが癪に障る。

先に声を掛けては負ける気がして、無言で腕を組み立ち尽くす。

気付いてはくれぬかと沓の爪先で床を叩いても。
振り向いて下さらぬかと後姿を見つめ続けても。

此方へ寄る素振りもない。
紅い髪は部屋の中を往ったり来たり、ただそれだけだ。

挙句の果てに此方を避けるよう、細い背は部屋の中で佇む俺と逆側の裏扉へと駆け寄った。
「せんせーーい?」

成程な、俺の知らぬ時にこの方は侍医をそんな風に優しく呼ぶわけだ。
此方は凍りつきそうな寒風の中、焦れた想いで立ち尽くしているのに。

「・・・どうなさいました、医仙」

あの方の呼び声に、裏扉から部屋内を覗き込んだ奴の視線。
それが此方に向けた細い背中越し、表扉の脇に佇むこの視線とまともにかち合った。
「て」

隊長と呼び掛けそうな声を眸で制し顎であの方を指す。
侍医は腑に落ちたよう薄く笑み、俺など居らぬかのよう平然とあの方へ視線を戻す。

「あのね、今週末。えーっと、三日後に、パ・・・宴会をしたいの」
「宴会ですか」
「そう」

侍医の合いの手に嬉し気な高い声で返し、後ろから見るあの方の紅い髪が幾度も頷いた。
奴は困ったように、そんなあの方へ低く諭す。
「しかし、宴会には寒すぎるかと」
「でも天界ではクリスマスシーズンなのよ?絶対どうしても、この時期でなきゃダメなの」
「くりすます、ですか」
「そう。他の国の神様が生まれた日よ。正確には12月25日だけど」
「雪も積もりそうですし、日を改めるのでは」
「雪が降った方がいいんだってば!!」

頑迷に言い張りながら、紅い髪は絶対に素直には頷かない。

「雪が降って、キャンドルつけて、プレゼント用意して。考えるだけでも最高にロマンティックなクリスマスになりそうじゃない?
それに西・・・えーっと、他の国では、柊の下ならキ、じゃなく口づけしても許される風習もあるし」

その言葉に度肝を抜かれたよう口を開けた侍医。
俺は危うく取り落としそうな鬼剣の柄を、汗ばむ拳で硬く握り直す。

一体何処だ、その余所の国というのは。
ふざけた風習をでっちあげるのも大概にしろ。

奴も珍しく、いつも冷静な顔に動揺の色を浮かべた。
「・・・医仙」
「なあに?」
「柊は皇宮中に植えてあります。典医寺にもありますし」
「だから良いのよ。好きな人を柊の下で待つなんて素敵でしょ?」
「素敵かどうかは・・・」
あの方のおっしゃる事の大抵は聞き入れる侍医も、此度ばかりは困り果てたように眉根を寄せる。

「第一、見知らぬ者同士が偶然行き合えば」
「だから、そうならないようにするのもスリリングなんだってば」
「お願いですから、皇宮の風紀のためにもそうした噂を流すのは」
「流したりしないわよ、もちろん。ただ・・・」

声を切ると、紅い髪が振り返る。
あの方は笑んだ目許を誤魔化し、意地悪い顔を拵えて言った。
「意地張って声もかけてくれない誰かさんが、こっそり立ち聞きしてるかも知れないけどね」

その三日月の形の瞳に見据えられ思わず息を吐く。
風に千切れ飛ぶ小さな白い息を確かめつつ、あの方が俺に向かって歩み寄ると首を振った。

「こんな寒いとこに立ったまんま意地張ってどうするの?この時期は風邪の局大流行期なのよ?
あなたが風邪ひいて、そのまま迂達赤の宿舎内で感染者が増えたら?困るでしょ?」

お気づきなら其方が先に折れて、声を掛ければ良いだろう。
無視するから立ち尽くすしか無かったのだ。
それでもこの方の言い分は的を射ているから、仕方なく頷き返す。

確かに俺が迂達赤に風邪を持って帰る訳にはいかん。
病人が増えればこの方も侍医も忙しくなる。
鍛錬にも軍議にも歩哨にも支障を来たすのは火を見るより明らかだ。

「分かってるなら早く入って、あったまって。ドア、扉、閉めてね?せっかくの暖房がもったいないから」
「・・・隊長、茶を淹れて参ります。お飲みになってからお戻りを」

目の前で手招く細い指の先導に誘われ部屋内へ踏み込む。
侍医は此方の返答も確かめずに頷いて裏扉から姿を消す。

寒風の吹き荒ぶ扉外に立ち尽くしていたからか。
部屋の大きな窓から射し込む明るい陽の所為か。
暖かい。この方と二人きりになった途端に。

手招きの終点の卓前、差し向かいに腰を降ろす。
部屋を満たす光は暖かく、目の前のこの方の髪を透かす。
眩し過ぎて眸を細めればそのまま眠りに落ちられそうで。

「ねえ」
細めた視界の向こう、透ける紅い髪が卓越しに少し近付いた。

「柊の下で、待っててくれる?あなた以外なら近寄らないから」

・・・何処のどいつだ。これ程巧い口実を最初に見つけたのは。

否とも応とも答えぬままに、俺は黙って眸を閉じる。
冬の午睡の夢の中、常緑の木下に待つ己の姿を思い描いて。

きっと待つだろう。雪が積もろうが、風が吹こうが。
そして他の者が近寄ってきたなら魔除けの棘の葉影に隠れ。

きっといつまででも待つだろう。

甘く優しい芳香を放つその花の許。
雪よりも白い息を吐きながら真直ぐ駆け寄るこの方だけを。

 

 

 

 

 

 

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4 件のコメント

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    ウンスの口から 
    柊の下で待ってて~ なんて言われて
    嬉しかったでしょ♥
    やせ我慢さん
    もし 待つ相手が侍医だったりしたら…
    そりゃ この世の終わりみたいに
    凹むわね きっと
    待っててね ウンスを
    飛んでくるわ~♥ 
    羨ましい ( ´艸`)

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    甘々な二人に飢えておりました❗有難うございます。前夜からすでにパーティームードに浸りまくりでございます。
    ああ、明日が待ち遠しいです~ヽ(*´▽)ノ♪

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    さらん様
    あああああ、これこそ、さらん様が描くヨンです!(≧∇≦)
    もう昨夜からこのヨンの姿が、私の脳内で絶えず再生中(//∇//)
    いいね!が一回しか押せないのが残念です!
    可能なら連打したいです!
    クリパ楽しみにしています(^-^)

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    今年もあの楽しい企画があるなんて嬉しいー\(^o^)/
    前夜のお話のヨンが面白くて可愛くてお昼休みに大声で笑わしていただきました。
    (気付いてはくれぬかと沓の爪先で床を叩いても)
    このお話、突っ込みどころは満載なのですがこの爪先で床を叩いてるヨンの姿を妄想すると可愛くて頬が緩みます。
    乙女のクリパ楽しみだぁー
    さらん姉さんの気合いの入ったお話楽しみにしてますね。

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