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突然の大雨に遭ったのはあの方を典医寺へとお送りする、その帰り路だった。
俺は羽織っていた外套を広げ、あの方を包むように巻きつける。
その体を抱えるように急ぎ足で、近くの東屋へ駆け込む。
「すごい雨!」
あの方が東屋の軒まで進む。
そこから手を差し伸べて、嬉しげに空から落ちる雨粒を手に受ける。
「濡れますから、奥へ」
俺が言うても楽しそうに首を振り、軒越しの暗い空をじっと見上げる。
そんなに濡れて風邪でも召しては。
「医仙」
あの方は雨音の中に篭る俺の声など耳に入らないか。
今度は東屋を囲う池の蓮の葉が雨に打たれる様に、目を奪われている。
「蓮の葉の雨粒。何でいっつも丸くなるのかな。
考えたこともなかったけど。ワックス効果かしら」
またも不明な天界語を呟き、身を乗り出してじっと見ている。
足でも滑らせて、落ちるなよ。
「危ないですから、此方に」
いよいよ見ていられず少し強くその腕を引くと、小さな体が腕の中にすっぽりと入って来る。
その髪の先から、雨粒が滴る。
花の香がいつもより少し強い。
花も、雨に喜んでいるか。
俺は急いでこの方を腕から離し、懐から雨に湿った手拭いを取り出す。
無いよりは良い。それを医仙に差し出す。
「髪が濡れております」
初めてそれに気付いたように、この方が手拭いを受け取る。
「ありがとう。でも、あなたの方が濡れてる」
そう言って俺の顎から滴る雨を、押さえるように拭ってくれる。
その手の動きから眸が離せず、俺は無理に顔を背ける。
「医仙がお使いください」
顔を背けたままそう言うと俺の心の中など知らぬげに、
「私は良いの、こうしておけば大丈夫」
そう言って懐より細い紐を出し、唇に挟んで。
濡れた髪をその指で器用にくるりと巻くと、頭の上で紐で結び。
魔法のように、髪が纏まる。
その項からこぼれた後れ毛が、雨に濡れた細い首筋に張り付く。
激しい雨音だけが響く夕暮れ。
花の香の、首筋の後れ毛。
周囲に誰の気配もない。
俺は東屋の軒の向こうの暗い空を見上げる。
もっと降れ。
このまま二人、何処にも行けぬほど。

初の試み、別シリーズ公開。
やはり同シリーズで合わせた方がすっきりしそうです
楽しんで頂けた時はポチっと頂けたら嬉しいです。
今日のクリック ありがとうございます。
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たくさんのコメント 読まれて お返事書かれてお疲れ様でした
久々に甘酸っぱい 恋の始まりを感じました
この頃が一番好きな ドキドキ感たっぷりで続きあります?
このまま 終わっても 私的にはOKです♪
ヨンの気持ちが 済まないですよね~~~
辺りには 誰もおりませぬよ…ウフフ
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いいですね、いいですね。
ヨンが我慢できない?
ウンスの天然にヨンは対抗できる?
次回更新たのしみだ~(●^o^●)
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>ゆきんこさん
コメありがとうございます❤
初々しいですよね、このころ(遠い目
最近完璧二次創作だったので、信義本編の
スピンオフは、書いててやはり盛り上がるのです。
全部のお話にミノ氏のの声が!
やばし!
このシリーズは、たぶん続きは書かず
全てこうして一話完結、でも続くよねー的な
余韻を残しても良いな、と思います。
たまーに、ちょこちょこUPしていくと思われます。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>イタkiss大好きさま
コメありがとうございます❤
天然なのか、まだ意識してないのか、
あのあたりのギリギリ感
(24話バージョンの16~18話くらいのとこ)
が書けると、嬉しいです。
めちゃめちゃスローでUPしていくと思います。
そしておそらく、どのお話も一話完結で。
続くの?どうなるの?な余韻を残したいです。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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信義のDVDを映しながら、ワクワクして読んでいました。
ウンスをずっと見つめているくせに、いざ目が合えばフッとそらしてしまうヨンが、
可愛くて切なくて…
❤︎をわしずかみされちゃいました。
声フェチの私に、ストライクな彼の声が
聞こえてくるようです。素敵ですね。
あのボソッと話す感じ!たまりません。
さらんさん、ありがとう(^∇^)
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普段は見えないうなじと濡れた後れ毛のコンビネーションは男性からは『たまらん!!』の結果をもたらすようですね
常に一歩先を読め!と部下を鍛えていますがこのシチュエーションの続きを教えてくださいテジャン♪
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>夢夢さん
コメありがとうございます❤
この辺りは、ちょうどDVDの恋盛り上がりごろ
(奇轍邸から皇宮に帰ってきて、迂達赤宿舎に
移動するまで、24話の16~20話前後)
辺りを書きたいのです。皆様の❤を一番キュン死
させた、あの頃ですね。
そして迂達赤がフルメンで活躍したあの頃。
チャン侍医もまだ生きてたあの頃。
徳興君が一番ムカついたあの頃ww
口数少なく、目と咽喉仏で語るヨンを!もう一度!
(そう言えば、咽喉仏に注目されてるのを知ったのは
二次を書き始めてからです。笑死しそうでした)
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>あみいさん
コメありがとうございます❤
露出はパーツのみ、そしてちらりに限るのですね。
勉強になりましたww (●´ω`●)ゞ
このシチュエーションの続き・・・それはもう
天然ウンスオンニが足滑らせて池ポチャしかないかと・・・っっ
嘘です、嘘です!
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くぅ~余韻がたまりませぬ❤
男たちのお話もいいけど、こうゆうのもやっぱり
いいですね。
雨♪雨♪ふれふれ もっとふれヨン❤
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>ぽんたさん
コメありがとうございます❤
こうなることは、分かっておりました。
分かっておったのですヨン。
今、甘い夢の part4まで書いていることは
内緒の秘密ですヨン。
ショートが続くときだけじゃないの?
ねえ自分?
いつ公開する気なの?
他の話詰まってんじゃないの?
馬鹿なのねえ馬鹿なの?
はい馬鹿ですヨン。
夜中の信義High コワ!Σ(・ω・ノ)ノ!
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くう、昨日は寝落ちしてしまい折角なのに朝見ました。でも、朝から良いもの見せて戴きました(*>∇<)ノ
どぎまぎするヨンとあんまり気にしてない風のウンスがこれ又きゅんとします♥
有り難うございました(*≧ω≦)
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>ののさん
おはようございます❤
・・・ってののさん ほんと早い
まさに「お早う」ございますです!
昨日は初の別シリーズ公開。
どんな感じでしたでしょうか。
書いてて、ヨンの違いに ❤プ(〃∇〃)ㇷプ❤
蛍袋でテマンと追いかけっこし、
ウンスオンニの前では悶々。
何処にも行けぬほど、ってあなた
さっきテマンに逃げられてましたけど!
今晩は、どうしようかなーと。
考えつつ、お仕事の準備します。
宜しければまた今夜❤
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素敵な小品に仕上がっていましね。
背景の描写、二人の描写が秀逸…目を閉じれば、情景が浮かんできそうです。
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>まあもさん
おはようございます❤
コメありがとうございます。
或日の雷鳴もそうですが、
瞬間だけ切り取るのは、難しいけれど楽しい!
情景が浮かんだら嬉しいです❤
今宵は蛍袋で。宜しければ、また。
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もっと降れ・・
このまま二人どこにも行けぬほど・・
最高です!
ここに・ヨンの思いの全てがあるように感じましたよ
~。
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>カンス百合子さん
おはようございます❤
コメありがとうございます。
最高ですか?
良かった良かった。
しかし朝バトルモード、夜Loveモードは
やはり・・・ヨンの二面性が激しすぎ・・・
おとなしく、シリーズ一つずつ終えますw
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東屋が雨飛沫の音で周りから隔離される。
雨音しか聞こえない。
二人だけの世界がドキドキします。
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>まめぼーさん
コメントありがとうございます。
ひたすら、二人だけ。
それが書きたかったのでした。
そう感じて頂ければ、嬉しいです❤
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雨の降る様に喜ぶウンス。
差し出す手拭で、お互いを思い遣る。
髪を纏める仕草でさえも、惹き付け目が離せない。
雨よ、暫し二人を其処に止め
ヨンの願いを叶えて欲しい
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>mayuさん
こちらにもありがとうございます。
ただ一緒にいたい。
この頃はそんな気持ちでしたね・・・
まだ一月半しかたってないのか・・・と
嘘のようです。
書き切った感満載の最近。
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>さらんさんへ
そうですよね、内容としてはかなりハードですもの。
でも、読み手は楽しみに待っております。
一息ついたら元気になって下さいね。
いつも応援しています☆-( ^-゚)v
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>mayuさん
こちらにもコメありがとうございます❤
はい、ありがとうございますヾ(@°▽°@)ノ
もうとりあえず、開京まで帰ったら
いったん一息して、仕切り直しかなと。
ちょうどその頃、海外出張の予定も・・・(゚ー゚;
韓国ではないのですが、ノート持参して
仕事の合間にもポチしてしまいそうな
自分が怖くもアリ
しかし海外で信義を書くとどうなるのか
若干興味もアリ・・・空気とか、天気とか
言語とか、影響が出るのか?ないのか?