「ご存じなかったのですか」
呆れたように声を上げたのがここでは私よりも新参のキム先生だったことに、ちょっとばかりプライドが傷ついた。
「大護軍の家系は、高麗でもそれは有名な、由緒正しき文官の家系です。
創国の功臣チェ・ジュオン殿の直系で、祖父君は忠烈王の師であったチェ・オン殿。
御父君は元司憲糾正チェ・ウォンジク殿です。それすらご存じなく、許嫁に」
私はそれを聞いて首を振った。
「知らなかったわ、そりゃ、お父さまの遺言の事は知っていたけど･･･」
「チェ・ウォンジク殿の、ご遺言ですか？」
あら？
むしろ高麗では、そっちの話の方が、意外とマイナーな話題なのかしら。
それについては知らないという様子のキム先生を見ながら、私は首を傾げた。
「それは今は置いておいて、それより、あの人のことなの。
昨日、枢密院のオンさんのお遣いが突然、うちに来たのよ。
あの人も何の話か分からなそうだし、心配になっちゃって･･･」
「お待ちください、ウンス殿」
突然厳しくなったキム先生の声。私は驚いて話を止めた。
「な、何？急に」
「オン殿とは、枢密院使宰枢のオン殿ですか」
「そう言ってたわ」
「あの方の急のお遣いがご自宅まで、あの雪の中を、ですか」
それにこくこく頷くと、キム先生は眉根を僅かに寄せてそっと言った。
「もしお時間を取って頂けるなら、チェ尚宮殿にお話した方が良いでしょう」
叔母様に？
**********
「御医、どういうことです」
叔母様がキム先生に厳しい顔でそう尋ねる。
キム先生は私と二人すぐに坤成殿へ出向き、中に入るかと思いきや、入り口の武閣氏のお姉さんに叔母様の呼び出しを頼んだ。
雪交じりのこんなに寒い天気なのに。
それだけでも不思議なのに、速足で出てきた叔母様をわざわざ私から少し離れたところへ呼んで、何だかこそこそ二人で話して。
ようやく戻って来たと思ったら、開口一番
「私の思い違いならば良いですが」
「そうでない事は、御医が一番良くご存じと見受けるが」
「･･･いえ、確信はないのです。
ただ開京を空けて彼方此方回っていれば、嫌でも耳に入って参ります」
「成程、王様は余程、人脈に恵まれる星の元にお生まれになったと見えます。
チャン侍医があのように去った後、どうなることかと思ったが」
「私の事よりも、大護軍とウンス殿です。
どう思われますか、尚宮殿」
叔母様は難しい顔で頷いた。
「恐らくは御医の勘、当たっておりましょう。
枢密院使宰枢の細君は、亡き忠粛王のお血筋。
曹國長公主の血を継いでいらっしゃる以上、元との絆は切れぬ。
王様が元に弓引き、媽媽の援軍も求められぬ今、あの大護軍を使うもやぶさかでない。
王様を口説き落とすよりは、まだ光明あり」
一人取り残されてるわ。
叔母様の話もキム先生の話も、私には全く読めない。
「あの、叔母様？」
難しい顔で黙り込んだ叔母様に声を掛けると、叔母様は顔を上げて私をじいっと見た。
余りにもこっちを長く見ている叔母様に、目を合わせるべき、逸らすべき？
どっちか分からず私もただ見返す。
「医仙」
「はい」
ようやく口を開いてくれた、その声にすぐ返事を返せば
「ヨンアは、明日、行くと言ったのですね」
「はい」
それは言ってたもの、確かに。
「しかし、何の話か見当がつかぬと」
「そうです」
私はこくこくと頷いた。
「医仙、これは勘です。外れてくれればこれ程に嬉しいことはないが」
叔母様は鋭く息を吐き、私をもう一度 じいっと見つめた。
そして次に横のキム先生を見て頷き合うと、私を見つめるその視線は、キム先生と叔母様の二つに増えた。
「ヨンアに明日持ち掛けられるのは、恐らく枢密院使宰枢の御息女、ヘジョン様との縁談」
「･･････は？」
縁談って、あれよね？あの、結婚前提の、あれよね？
ええ？私がいるのに？私これでも、あの人の許嫁よ？
「ウンス殿。これから尚宮殿と共に、至急迂達赤兵舎に行かれた方が良いかと。
策を練るにも余り時間がありません。私は典医寺に戻りますから」
キム先生の声と共に叔母様が私の腕をその細くも頼れる掌でしっかりと掴み、
半ば呆然とする私を引き摺るように歩き始めた。
楽しんで頂けた時はポチっと頂けたら嬉しいです。
今日のクリック ありがとうございます。
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先程はどうもありがとう(笑)。ウンスってやっぱり、兄のような人が、味方になってくれるのね。医術以外は何も知らず、守ってあげたい雰囲気あるもの。チェ尚宮の頼りになる手で、引っ張ってもらい、更なる味方をつけてもらいましょう。
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こんばんは
たくさんアッブありがとうございます
そうですよね～やっぱり…
ヨンがブチ切れるんですよね～
このヨンは何歳くらいですか？
あ～～～なんか モヤモヤして
ヨンって ウンスが絡むと 我を忘れるみたいで…そこが 好きですけどね
心配だけど 今回はどうやって 断るか 楽しみです…
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キム先生もただ者ではありませんね。お陰で何も知らずにご訪問はなさそうでちょっと安心です。
ウンスにしてみたら突然降ってわいたようなヨンの縁談話。心穏やかになんていきませんよね。
お家柄と後ろ盾のない不安を持っているウンス。そんな彼女をしっかり捕まえていてねヨン。と願ってしまいます。
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こんな時 頼りになるのは やっぱり
チェ尚宮さま～
かわいい甥御のために
がんばって～
どんな良家のご息女でもね
ヨンはウンスじゃないとダメでしょ
まわりのみんなは よく知ってる。
あ～ ドキドキ
まだ 始まったばかりなのに
はやく解決しますように (｡-人-｡)
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ウンスちゃん、テホグンの情報をそんなに容易く他人に話しちゃって、大丈夫ですか？
まぁ、キム先生に話したのは、結果オーライってことで。
ウンスちゃん、イマイチ良くわかっていないようですが、チェ尚宮さんが一緒ですから、対策を考えてくれるのでしょうか？
今更のように、偽嫁御の題名が気になってきました。ドキ！f^_^;
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こんばんは！さらん様。
一服処ありがとうございます。
折角の一服処なのに‥
この間、さらん様のコメ返でキ・チョル‥あやつが凍って死ぬなんて生ぬるい～的なお言葉に、私もすごく共感しました。それからというもの あやつの成敗方法ばかり考えていて全く一服できませ～ん（笑）
なんとかしてください！
私も一服処楽しみたいです(^-^;)
ちなみにこれまでに4つ考えました！
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大量Up、嬉しいですよ♪ありがとうございます。
心強い味方の叔母様！きっと何とかしてくれますよね？ね？ドキドキしながら次を待ちます(*´艸`*)
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連続アップ 読み手としては大変嬉しいです
ヨンを信じていますが やはりドキドキします
これから一波乱も二波乱もあるのでしょうか
ウンスが変な行動を取らなければいいのですが
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大量アップ、とても嬉しいです！
まだ正式な妻ではなく、許嫁のウンス、立場としては弱いですよね。
ヨンがウンス以外の人と結婚するはずなんてないけど、どんな風になるのか、すごくドキドキします。
チェ尚宮さまも、ウンスを嫁と認めて守ってくれるあたり、やっぱりウンスの人柄がなせる技ですよね。
ウンス、ファイティン！！
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さらん様、おはようございます❤︎
そうだったのですね‼︎
単にヨンの全てが気に入り、娘の結婚相手に望んでいるのだと思っていました。
政が絡んでいたのですね。
さすが、さらん様。
浅はかな自分が恥ずかしい(^_^;)
それにしても、キム侍医は良いですねぇ。
優れた人の後釜は、くだらない奴が多い中、大当たりでございます。
この先も、何かに付け、ふたりを助けてくれそうで頼もしい(*^_^*)
さぁ、この後、ヨンとウンスにどんな事が待っているのか、すっごく気になります❤︎
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＞チェヨン1さん
おはようございます❤コメありがとうございます
これがですね･･･
本日のチェ尚宮コモの最後の一言、布石で（まただ！）
いえ、決して悪い人ではなく。ええ、多分。
そして今のところ敵ではなく、ええ、恐らく。
二次はこれがあるから困ります。
一服ならこんなのもなく、あはーﾍ(ﾟ∀ﾟ*)ﾉで
終わるのですがね･･･
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＞ゆきんこさん
こんにちは❤コメありがとうございます
この時のヨンは33～4、ウンスが帰ってきた直後の冬です。
確かにウンス絡みではブチ切れがちなヨンですが
此度は相手が高麗の高官、王様に次ぐ実力者。
切れただけでは断れない、そして王様も迂闊には
手や口を出せない人間に出てきてほしかったのですｗ
ヨン切れ⇒王様登場⇒手打ちでは、水戸黄門となってしまうので(ﾟｰﾟ;
楽しんで頂ければ嬉しいです❤
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＞ままちゃんさん
こんにちは❤コメありがとうございます
まさにその通りです。
そしてそれをついてくる大監との直接対決。
全く動じないヨンですが、相手は上官、
簡単にブチ切れる訳にも、王様に安易に頼むわけにもいかず。
今回は、そこで勉強し、また大人への階段を
上がって頂く所存です(〃∇〃)
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＞くるくるしなもんさん
こんにちは❤コメありがとうございます
皆様の盛り上がりに、私も若干緊張です。
うう、久々の二次でこれは滑ったか･･･(ﾟｰﾟ;
いえ、きっと大丈夫。ヨンがどうにかして見せますｗ
困った時のヨン頼み(｡-人-｡)
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＞ポチッとなさん
こんにちは❤コメありがとうございます
ヨンに対して起こされた行動は、ウンスが話さなくとも、
誰かが調べれば必ず周囲には露見しますから、心配はないです。
ヨンが起こした行動は、よほどのことがなければ
露見することはないですが。
ただ基本は面倒くさがりの本能先行人間です。
ウンスオンニ、まだまだ分かっていない事がたくさん。
尚宮コモ、あちこちの橋渡しやら参謀やら
この方がいないと、高麗皇宮は成り立たぬのでは･･･
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＞わいやーさん
こんにちは❤コメありがとうございます
そうなのですね！しかし未だに、生温いと思う私ですｗ
この後（かなり後ですが）あの前後のお話、
康安殿での奇轍大暴れからその後のヨンまで
（【雪割草】前まで）を書くつもりの私としては
もう、そこでいっそ別の制裁を！とも思ったりしますが
基本、本編DVDのシーンは変えずに流れるうちの信義、
せめてさらん解釈で、成敗を加えます！！
（かなり本気です）
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＞ユッチさん
こんにちは❤コメありがとうございます
もう、尚宮コモのおかげでヨンも大助かりです。
勿論、王様も媽媽もとは思いますが。
コモなくば、この信義、絶対成り立ちませぬ。
是非是非、仙人ほどお元気で長生きして頂かねば･･･
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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＞hitominさん
こんにちは❤コメありがとうございます
今は気分下降中のウンスですが、これで黙って
すごすご引き下がるとも思えません。
そして、ヨンが、そんな傷ついたウンスを
黙って放置するとは、なおの事思えませんｗ
しかし相手は王様にも迂闊に手出しできぬ高官。
ブチ切れ、雷功ぶっ放して済む相手でもなく。
ヨンには、ここで一つまた賢く、大人になって頂きます( ´艸｀)
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こんにちは～！一服処の公開ありがとうございます！二次の世界を知ったのが、丁度１０月中旬だったので、アメンバー承認を締め切った後でした。
あ～見れないとガックリしていたのですが、偽嫁御、公開して下さり、飛び上がって喜んでいます❤❤
読み進めていくほどに、ワクワク、ドキドキで次が楽しみで仕方ありません♪
それに、皆様への、さらんさんのコメント返しを読んで、ますます気になって(^^♪
楽しみに読ませていただきますね❤
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＞やあさん
こんにちは❤コメありがとうございます
もう尚宮コモもずっと関わってきたヨンとイムジャ、
既に他人とは思えぬのか、やたらと頑張ります。
元々ヨンにとっては母代わりとも慕う方、
コモがいれば、百人力、一騎当千、のはず、なのですが･･･
今回はさすが、そうともいかなそう。
知恵だけ授け、己で戦え、というところでしょうか(;^_^A
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＞夢夢さん
こんにちは❤コメありがとうございます
た、大変です夢夢さま(ﾟｰﾟ;
またしても夢夢さまのその清らかな思いを裏切る
最後の言葉が、尚宮コモより放たれます･･･ううう
決して敵ではありませぬ。しかしこの男の闇もまた深し。
（の、設定です）
ヒドヒョンとダブルで、黒！
何だかオリキャラが黒すぎ、たまにはまっさらに
明るいキャラを書きたくなってきました。
きっと出てくると思います、近々ｗｗ
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＞かよさん
こんにちは❤コメありがとうございます
そうだったのですね！
ううう、私のわがままで、まだ開かない
うちの天門が、いくつか在るかと思うと
申し訳なく、かたじけなく･･･
何れ開くよう、どうにか、どうにか
前向きに、早々に、努力いたします(＞＜;)
よろしければ また覗いてみて下さい♪
キム侍医はチャン侍医みたいに頼りになる方でホッとしました。いやいやヨンに縁談話だからホッとしている場合ではないですね。妻は二人まで正室、側室なら何人でもOKの時代だから縁談は絶えないんでしょうね。