「ねえねえ、それでオンさんって誰なの?」
遣いを帰らせ居間に戻れば、待ち構えていたこの方が早速尋ねた。
「枢密院使宰枢、王様に次ぐ実力者です」
「え、じゃあ、総理大臣レベルじゃない!」
「そうり?」
大臣という言葉の意味は分かるが。
「確かに、大監は大臣ですが」
「王様の次に偉い人なんでしょ?その人があなたに何の用?」
「明後日、俺をご自宅に招きたいと」
この方は俺を見て頷いた。
「そうだったの?行くのよね?総理大臣から直々に呼ばれるあなたって・・・」
この方は目を丸くし、此方をじっと見つめた。
「もしかして、すごく、偉い人?」
その物言いに何と返して良いやら。
「偉いわけがないでしょう。 俺はただの武官です」
「でも王様の右腕で、総理大臣から直接遣いが来る人なのよね?」
やけに拘るな。俺は曖昧に首を傾げた。
「高名というならばあなたの方です。
それを隠し通すのにどれほど骨を折っているか。ご存じでしょう」
そう言って卓の前に腰を下ろす。
いい機会だ。この際教えておかねば。
「イムジャ」
そう呼ぶと宙に目を泳がせていたこの方の視線が戻る。
己の膝をぽんぽんと叩いて示すと、小さい体が胡坐の膝に入り、その身を落ち着ける。
後ろから包むようにしてこの方の体越し、卓に身を乗り出し、先程の墨と紙を使い簡単に線を描く。
「これが王様です」
一番上に大きな白い丸を。
「そしてその下に六翼」
その下に黒い丸を、六つ。
さて、どのように伝えるか。
あまり興味を持って首を突っ込まれるのも、却って危険かもしれぬ。
「勉学を教えたり、会議を司ったり、刑罰を裁いたり、国法を作ったり。
地方の声を聞いて纏めたりと、 いろいろな部署があります。
無論俺達官軍も、この中に含まれます」
この程度で良かろう。
一旦区切り膝の中のこの方を見ると、納得した様子で深く頷いている。
「つまり内閣、地方議員の代表機関、学校法人、警察、裁判所、軍隊、 そういうものって事よね?」
よね、と言われても、何とも言えぬが。
「おそらくは。先の世界にもありますか、そうしたものが」
「あなたが来た時、コエ…ああ、 あの建物の周りを包囲した人たちを覚えてる? あれが警察」
ああ。あの闘わぬ者たちか。
白い馬車の陰に隠れ大騒ぎしていた姿をふと思い出す。
「俺が盾を奪った男たちですか」
こくりと頷くこの方を目の隅に、俺は話を続ける。
右隅の黒い丸を一つ指差し、
「これが衛部、俺がいるのが此処です」
その下に小さい点をつけ
「禁軍、国境隊、迂達赤、いろいろな軍があります」
そして白丸に一番近い黒い丸を差し
「これが枢密院。国の決まりは全て此処で作られます。
何か決議を要す事があれば臣下を集めて纏め、時には王様に進言も致します」
「そうなのね」
「その枢密院使宰枢が先ほどの遣いの主、オン・ミョンウ殿です」
分からぬのは何故その宰枢が雪の中わざわざ遣いを寄越すか。
そんな手順を踏んでまで俺如きを呼び出すような、 まだるこしいことをされたかだ。
俺は筆の握りの端で唇を叩きつつ、暫しの間考える。
俺達の共通点。あの宰枢が話したがる事。
思い当たるとすれば、王様の事以外ない。
目下の王様の面している問題といえば、反元の政策。
しかし枢密院使宰枢ほどの高位の文官。
俺にどうこう言わずとも、直接王様に謁見し話をすれば良いではないか。
敢えて俺を通して何か起こす、その肚には何がある。
**********
「旦那様」
「戻ったか。大護軍からの返事は」
「頂いて参りました」
遣いの者から返書を受け取る。
「どうであった、大護軍は」
「ええ、おいで頂けるようです。重ねてお願いして参りました」
その返答に満足して頷き、大護軍よりの返書を開く。
良い字だな。チェ・ウォンジク様のご子息と聞いてはいたが、豪放磊落なのびのびとした字を書く。
墨は歙州か。この漆黒の色、趣味も良い。
今までの王様の信頼、戦績、そして名門文官の出自、本人の素養と教養どれも不足なし。十分だ。
そう判じつつ返書を読めば、明後日の訪問を約束すると判り、益々笑みが深まる。
「ヘジョンを呼べ」
控える家人にそう伝えると、家人は
「はい」
とだけ頷き、部屋を下がっていった。

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向い合ってでも、隣でも、説明できるのに…、わざわざ前に座らせ教えるなんて、ヨンが可愛すぎます。今回はウンスの知らないヨンが、どんどん出てきますね。気がつく余裕がでてきたのは、いいことだけど、これがこの後の展開に…、楽しみ。
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さらんさん、こんばんわ。
一服処が始まったので、しばし、物足りない寂しい時間を過ごすなあ~。
なんて、考えていたのに、いつの間にか、表示されてる???!
きゃ、やった♪な気分です。
新たに始まる、ヨンとウンスの時間を堪能させて頂きます。
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ヨン様は説明が上手です。
私も勉強になりましたm(__)m
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さらんさん,歴史的背景も勉強されているとは思っていましたが,こういう高麗の組織図も調べているんですね^^
ウンス同様,私も勉強になりました(o^-')b
ちなみに,ヨンは衛部のトップなんですか?
その下に迂達赤があるようですが。
この時は大護軍ですよね。
どの位置になるのかな~と思いまして。
もしご存知でしたら教えて下さい(。-人-。)
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>チェヨン1さん
こんばんは❤コメありがとうございます
イムジャカポー、帰還後は何かと言っては
くっつきたがるヨンですが。
やはりいろいろなストレスが・・・うーん、もしくは
もう二度とあと一歩が足りず、失うのが・・・
って、膝に乗せてて刺客来たら、ヨン立ち上がりざま転ぶんじゃね?と( ´艸`)
もしくはそのままの勢いで立ち上がり、ウンスが
放りだされる・・・とか・・・(°Д°;≡°Д°;)
今回はもう、脳内で滅茶苦茶かっこいいラストシーン、練り済みです。
小説オマージュ交えつつ・・・❤(*v.v)。
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>ruchirunyaさん
こんばんは❤コメありがとうございます
うわー、寂しい思いをおかけするところでした!
今回は、先日の悩みに、未来を読みたいとおっしゃって下さった
その皆様にも読んで頂けたら嬉しい♪ヽ(゚◇゚ )ノと。
思ったより長くなるかもですが、
お付き合い頂けたら嬉しいです( ´艸`)
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>よっしーさん
こんばんは❤コメありがとうございます
ヨンは、言葉が少ないのが、こう言う時は
善しに転ぶのかもしれません( ´艸`)
ただ高麗時代後半、やはり李 成桂に都合よく
いろいろ改編された資料が多いのか、
調べるたび、微妙に漢字や言い回しが違っています。
何となーく、雰囲気だけお楽しみ頂ければ嬉しいです♪
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>すんすんさん
こんばんは❤コメありがとうございます
私もすっかり資料オタクです。信義恐るべし!
実際「衛部」というのが存在したのかどうかも
怪しげなところではありますが
(ちょうど高麗⇒李氏朝鮮の混在時期なので)
ヨンの「大護軍」の上には「上護軍」がいるようです。
ですのでヨンはTOP2です。
ただ実際は、上護軍は最高司令官なので
余り戦地には出向かず、俗に言う幹部トップ状態。
実はこの上護軍が出てくるお話も、この後絡んできます(゚ー゚;)
紅蓮の中ですが・・・
ああ、やはり二次には二次の、【三乃巻】とは違う
楽しさがたくさんあります・・・❤
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私もウンスちゃんと一緒に、お勉強できました。
テホグン、やっぱり偉い人です。ウンスちゃん知らないから、あなた偉いの?とか聞いちゃって。かわいい。
チェヨンくんに、はい偉いですって言ってもらっても、楽しいかも。
うふっ。(o^^o)
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お~~~!(´Д`;)
私は、耐えられるか?
ゆっくりコメする暇なく、今に至っていましたが、もう冷や汗かいてますヽ(*'0'*)ツ
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>ポチッとなさん
こんばんは❤コメありがとうございます
それも良いですね~はい、偉いです(w
うちのヨンはそもそも偉いって何?な男なので
きっと一生言えぬとは思いますが( ´艸`)
だからこそ言わせたいとも思ったりします
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さらんさん こんばんは。
新しく始まったさらんワールドに またまたやられちゃいそうです(≧∇≦)
ヨンってば、ほんとに理想のひとです。
素敵すぎです~!!
とびっきりのラストをご用意いただいているみたいで♪ どこまでもさらんさんについて行きますわ~。
ありがとうございます!
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こんばんは、ヨンの一口メモ・・・
あと10回よんできます(→o←)ゞ
ヨンの膝のなかで
ラブラブ (///∇//) うらやましい・・・
筆の握りの端で・・・ しぐさが ツボ(≧▽≦)
しあわせすぎて勘が鈍ったのかしら
ザワザワ・・・
ヨン、ウダルチ~ 大活躍を期待します。
ものすごく楽しみよ~!!
前から思っていましたが
さらんさん スゴイ・・・
おばちゃんの 脳みそ活性化!
スゴイ刺激になります。
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ヨンったら、説明する時もウンスはお膝の上が指定席なのね❤
ヨンも相当に良いお家柄。でも、そんなのはどこ吹く風のヨンにとってはウンスの方がよッぽど稀有な存在と位置づけているようですね。
枢密院使宰枢なるこの男、ずっとヨンを品定めしていたんですね。宮中に上がっているという事は当然ウンスの事も知ってるという事でしょ?
事の流れにより、ヨンは爆発する?
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>mayuさん
こんばんは❤コメありがとうございます
大丈夫ですよー❤
今回は、ヨンはV.S ウンスではないですw
敵は他にありなので・・・( ´艸`)
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>ゆかこうさん
こんばんは❤コメありがとうございます
うふふふー( ´艸`)
今回は空気感に拘る、というコンセプトで
ばさ、とかふわ、とかそう言う感じに凝りたいのですがなかなか・・・
最後にそれが活きると良いなーと願いつつです❤
こちらこそいつもありがとうございます(*v.v)。
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>くるくるしなもんさん
こんばんは❤コメありがとうございます
活性化、嬉しいです❤
脳内で恋しているだけでも、女性ホルモンは出続けるそうなので
もう、信義に嵌った私たちはみーんな美魔女になれますね♪
良いなー、20年後も恋してたいなー。あ、でもその頃
ミノ氏は47・・・!(自分は棚あげです)
きっと素敵な壮年男性のはず、そして信義IIを・・・❤
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さらん様、こんばんは❤︎
いいなぁ…ウンスは。
ヨンの膝で、いつも後ろから優しく抱きしめられて。
ヨンの講釈に、知識の乏しい私は、ウンスと一緒にフムフムと聞き入っております。
読み書きを習い始めた子供に教えるように優しく諭すように教えるヨンが素敵です(*^_^*)
それと、鼻に墨とは、チャン侍医を思い出します。
手紙の主は、ヨンを縁談の相手として欲しいのですね。
納得です(*^_^*)
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>ままちゃんさん
こんにちは❤コメありがとうございます
そうなのです。もうあの雪見の後、
何かといえば密着したがるうちのヨン。
少しでも傍で守るつもりでしょうか・・・って
近すぎでしょう!と。
勿論、医仙を知っております。そして対面時、触れます。
それが尚更ヨンを怒らせ・・・ただ、真に怒るのはまだ、少し先です(゚ー゚;
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>夢夢さん
こんにちは❤コメありがとうございます
鼻に墨は、あのシーンを意識して書きました❤
ただしチャン先生は、ついた墨を拭くだけでしたが
ヨンは、つけちゃいますw
悪戯心は、ヨンの方が上です( ´艸`)
手紙の主、実はそう簡単でもなさげです。
どんどん広がる二次世界、とんでもない状況になるやも・・・(゚ー゚;