「お、テマナ、帰ったか」
兵舎に戻ると、入り口でトクマンに捕まった。
「大護軍と医仙はどうだった。医仙はもうお元気なんだよな?」
「大丈夫だと思う。大護軍は何も言ってないから。こっちはどうだった」
「ああ、大丈夫だ。ただ・・・」
「ただなんだよ。明日、大護軍に報告するんだ。俺の留守中の事は、はっきり言えよ」
「いや、隊長が落ち込んでて。理由を聞いても教えてくれん。俺も委細は知らないんだ」
隊長が。これは大護軍に伝えるべきなのか。
分からないから確かめるしかない。
俺はそのまま急いで隊長の部屋まで走り
「隊長」
そう部屋外から声を掛ける。
「入れ・・・」
その声を聞き部屋の扉を開く。
チュンソク隊長は部屋の卓の前、椅子に腰掛け、湿布を張っているところだった。
何だって腕にあんなでかい青あざがあるんだ。
「隊長、あざ」
「ああ、これか。いや、これはあれだ、名誉の負傷というか、節介のつけというか」
その言い分が全然分からない俺は、首を傾げる。
「ところでテマナ、大護軍と医仙はどうだった」
「医仙は起きられるようになったみたいです。大護軍と共に飯も食べて」
「そうか、良かった。良かった・・・で。大護軍は、俺に怒っていなかったか」
「いえ。そんな事、全く言ってないです」
何で大護軍が、隊長に怒るんだ?
テマンの相も変わらず真直ぐな目を見る。
こいつが大護軍に関して、相手が誰であろうと嘘など吐くわけがない。
ということはあの絡み合い、大護軍はそれほど気に留めておらんのか。
もしくはこの次会った時、足腰立たぬほどに打ちのめされるのか。
それでもあの時、俺はあれしかできなかった。だから良いのだ。
大護軍に対しまさかあんな風に対峙するとは、それまで夢にも思わなかったが。
少しは近づけたような気もするが。
それが大護軍の望む形だったかどうかは、自信がない。
それでも絶対に伝えたかった。
だから、良い。良いのだ。
たとえ後々、大護軍の死なぬ程度の制裁が待っていたとしても悔いはなし
・・・・・・恐らく。
******
「一緒にいて」
この方を寝台に横にさせると、俺を見て不満げに口を尖らせる。
「おります、此処に」
俺は寝台の横に据えた椅子を指して言った。
しかしこの方の口は閉じない。
「それが原因で、私、倒れたのに」
それを言われると何も言えぬ。
確かに言っていた。布団が別々でと。
「あと二日すれば、その後はずっと共に。
それまでは頼むから、のびのび休んで欲しい」
「あなたがいたってのびのび寝るわよ?だから、もう別々に寝るのは嫌」
その声に太く息を吐き、寝台端に腰掛ける。
「判りました」
寝台のこの方の横に身を横たえる。
その横でこの方が俺に向き直りそっと言う。
「約束して。2人で一緒にいる時は、いつでもこうして。
もしいつか凄いケンカして、顔も見たくなくても、寝る時は一緒にいて」
「・・・喧嘩の後も、ですか」
「そうよ」
そう言ってこの方は俺の胸に寄り、鼻先を擦り寄せる。
「どんなにケンカをしても一緒に眠れれば、うまくいくこともあるの。
別々に眠るのは駄目。だから約束して」
知ったと思っていても、まだまだ知らぬ。
この方の新しい顔、新しい声を、俺は今でもこうして毎日、毎夜見つける。
「お休み」
胸の中で目を閉じるこの方を、どうすればゆっくり眠らせてやれるか。
そう考え俺が体を固くすると、この方の手が己の肩に回る。
「そんなに固くなったら体に悪いわ。力抜いて。そうすれば楽になる。
あなたが楽になれば、私もゆっくり眠れる」
俺が楽になる事がこの方を楽にする。
そうだ。判っているはずなのに時折忘れる。
意識して四肢の力を抜き、ふと腕の中のこの方に呼吸を合わせる。
吸って、吐いて。吸って。
運気調息などしておらぬのに、己の中に気が満ちる。
そうして俺はまた新しいことを知る。
いつの間にか完全に力の抜けた腕でもう一度この方を抱き締め、俺はいつにない程、深く深く眠った。

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チュンソク、大きな青痣作ってしかも次は死なないほどの鍛練が待っているって考えるなんてどこまで真面目なの!?もしかするとヨンはもう忘れている気が致しますが…
一緒に寝るって絶対大切だと思います。喧嘩してもしも寝台を分けたら戻るきっかけが難しいです。しかもヨンは不要な気を遣って既に別々にしちゃう人です。ここで何があっても!と約束させるのはとてもとても大切なことですね。
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こんばんは!さらん様。
チュンソクには申し訳ない事を‥
すっかり忘れていました(笑)
2人の為にあんなに頑張って
くれたのに~忘れてましたよ~
さらん様は忘れてなかったのですね?
ここで出てこなかったら‥
チュンソクの頑張り、私の中で無かった事になっていたかも(^-^;)
「チュンソガ ミアネヨ」
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チュンソクまた考えすぎてる(笑)寝不足なのはおぬしもか?テマンの報告聞いてぐっすり眠ってください。ヨンとウンスもやっとぐっすり眠れましたね。家庭内別居はいかんよ。遠慮なんてしてたらダメダメ。話し合えば、わかりあえるんだから。日々発見いいですね(∩´∀`)∩
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さらん様、こんばんは❤︎
そうでしたね、チュンソクも決死の覚悟で、ヨンにぶつかって行ったんでした。
ヨンの力量を分かっていたつもりでしたが、予想以上のダメージをチュンソクに与えていたんですね。
チュンソク……どんまい(≧∇≦)
そのうち、死なぬ程度に鍛えられる事でしょう。
ヨンとウンスは、ますます良い感じ。
久々に、ヨンも深い眠りに落ちそうですね❤︎
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おお~っ!チュンソク!
そうだったぁ~。また、思い悩んでいるのでしょうね~。考えすぎる男!(^。^)
チュンソクはよくやったわ!ヨンも怒ってなんかいないはず!
……だって……。
……いまウンスとラブラブだから(^ー^)♪
チュンソクの思いも私の思いも(?)ちゃんと届いたわぁ~(^∇^)♪
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チュンソク、まだヨンに会ってないんだ・・・
なんて生殺しな状態・・・
でもきっと、吠えて貰って良かったとヨン、思ってますよね?
違うの?Σ(~∀~||;)
でも、二人してぐっすり眠れて良かった♥
そう、意外にぴったりくっついてるとぐっすり眠れますよね♪
家もやってと言った覚えはないですが、ヨンとウンスみたいな手つなぎ寝実はしてる・・・
ま、また覗きに来ます~ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ
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あれ以来…会って…なかったと(;゜∀゜)
チュンソク地獄だったのですね…涙
何日間位の設定でしょうか…
直接対話でウンス昏倒~覚醒までで3日程。自宅帰ってから丸一日以上経ってますよね。4~5日位かしら
殺されぬ程度の制裁覚悟でも後悔しない男。チュンソク。青アザ付き。泣けます。
ウンスの約束事☆
夫婦になってからならばかなり納得的ですが、それを今のヨンに強請るとは…(まぁ、何ヵ月かは好きでやってるのか…)
でもこれを経て「ふざけるな」「畜生」の名言(?)となるわけですね^^ふふふ
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あ~そうでした!
感動で、泪ぐんでしまったほどチュンソクとのからみは圧巻でした。
思わず、どこの巻だったかとさかのぼってまた、読み返しましたよ。
そうそう、そのときできた、名誉の青アザなのね。
…………ふぬけは、ふたりもいらぬわ
いつまでも手のかかることよ
ふ……こたびの働き、……よいぞ……
はじめて、チェ尚宮に褒められたテジャンチュンソクでした!
………………てね。
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都忘れハラハラしながら読んでましたが、
我慢出来ずこちらにコメント致しました。
チュンソク~よく頑張りました(惚)
気にやまないで。むしろ感謝してるよぉって
言いながら、湿布貼ってあげたい♥
これから、波立つ時間が多くなるんですね
ヨンもウンスもチュンソクもテマンも
穏やかな時間は、幸せな時間であって欲しいなぁ
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チュンソク、まだ1人ヨンにしてしまった事と葛藤していたなんて、本当に実直なお方ですね。大丈夫、貴方のお陰もあって、今まで以上に固い絆で結ばれていますからと言ってあげたいです。
ウンスの願う約束は「いついかなる時も一緒に居る時は共に寝て欲しい」だったんですね。それできっと上手くいく。なんて素敵な提案でしょう。ふたりの鼓動が重なればきっと幸せな夢が見れますよね。
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テホグンに諫言してから、隊長さんまだ会ってなかったんですね。そりゃードキドキものでしょう。(^^) もっともテホグン、忘れてたりして。あっ、某は忘れないとか、郡守を捕まえた時に言ってたような。でも、今回の事はテホグンが悪かったわけで、アザもつくっちゃったし。許してあげてくださいね。
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>あみいさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
ヨン忘れてはいないです(゚ー゚;
自分で「俺は執念深いのです」というくらい
@江華郡守のシーンですからw
でも、恨んでるわけではなく。
約束を、ひとつひとつ。まだまだカップルとして
歴史がない二人、これからです❤( ´艸`)
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>わいやーさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
みあん ちゅんそが~
忘れてないです(爆)あそこまで絡んで
忘れたら、ちょっとばかり鬼です(;´▽`A“
しかしこの後、きっちり落とし前をw
そろそろ、この可愛い二人ともお別れですが
宜しければもうしばし、お付き合いください❤
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>チェヨン1さん
おはようございます❤コメありがとうございます。
ようやく分かって来ました、呼吸を合わせる意味が。
家庭内別居(!)本当に、駄目ですね。
二人でいても寂しい、になったら悲しいです。
この二人の場合、それはどう考えてもなしですが・・・
そろそろ、この可愛い馬鹿ップルぶりともお別れ。
続いて、人間最終兵器の戦バージョン(予定)です。
しかしもうしばしの憩い、宜しければお付き合いください。
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>夢夢さん
おはようございます❤コメありがとうございます。
皆様のチュンソクへのスルースキル、華麗です(爆)
あれだけ必死になったチュンソク、恐らく
ヽ((◎д◎ ))ゝこんな状態でしょう、心の内は。
良いのです、チュンソク故に。
それもまた、あの漢の良さ。味です(無理やり
泥のように眠ったらしいです、ヨン。
そうやって、少しずつ、一歩ずつですね。
何しろ「歩みが遅くて」です❤
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>kumiさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
ここでも華麗なスルースキル発動ですね❤
ふふふーチュンソクの可哀想な感じが
しみじみと胸に迫りますww
でも、正におっしゃる通り。
終わり良ければ、全て善しで御座います(*v.v)。
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>ののさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
くぅ、うちの二人どころではございません。
何て甘々な、素敵な御二人(〃∇〃)
チュンソクの事など、この際どうでも(え
朝から甘々なお話、ありがとうございます(*v.v)。
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>chamiさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
そうなのです。ここのところ、長く書きましたが
実質は僅か一週間程。
チュンソクとヨンが絡んでより、本日まだ5日目です。
チュンソクにとっては、地獄の五日間でしょう・・・w
これらの約束が
「破っても構わぬな」のヨンの激怒
「ふざけるな」「畜生」と・・・爆
自分のせい故、何も言いませぬがヘ(゚∀゚*)ノ
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>なんちゃんさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
チェ尚宮コモ!チュンソクにお褒めなど
奴にとり過分な待遇で御座います・・・
きっとあ奴も、小躍りして喜ぶことでしょう。
ありがとうございます(〃∇〃)
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>üKöさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
おお【都忘れ】!
あそこにいらしたら、未だキツいお気持ちかと・・・
現在はこのような馬鹿ッポーで御座います。
いろいろ潜り抜け、強くならねばなりませぬ・・・
お見守りくださいませp(^-^)q
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>ままちゃんさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
チュンソク、真面目で堅実。ほう、喜ぶが良い。
ヨンが軽くぶち切れた、ウンスのチュンソク評。
そのとおりの漢ですо(ж>▽<)y ☆
だから愛おしいのです・・・❤
さて、ウンスのお願い、これだけで終わりますか・・・
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>ポチッとなさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
ええ、もう。
「残念ながら某は、執念深い男でして」
知っております、皆。わざわざ言わずとも。
しかし、怒りは致しませぬ。ヨンも漢ゆえ。
ただ、執念深いだけです(爆
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なんと、二人は仲直りしたのに、ウンスが寝込んだドサクサで、あれだけ頑張った人忘れるなんてΣ(゚д゚;)
真面目なチュンソク、気に病んでるよね。
早く何とかしてあげて~(-"-;A
ヨンも、グッスリ眠れて良かった!
ウンスの提案、何時も何時も守れるのかなぁ?
この二人意地っ張りだから・・・
それから、ワンビからの豪勢なお料理等々、断れるのかしら?
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>mayuさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
約束は守ります、よほどブチ切れぬ限り。
そして、ウンスが先に違えぬ限り(;´▽`A“
やんごとなき姫を止めるのは、やはりやんごとなき御方でした。
ヨンが止めたのでは、角が立つのでしょう・・・
最近本当にGJが多い方です。
これから先も、成長の予感(〃∇〃)