天医様に刺された翌朝。
ふらつきながらも自力で起きて来た隊長を見て、俺達が歓喜に沸いたのは言うまでもない。
しかし隊長はここに未だ王様が残っている事への心配と怒りで、矢継ぎ早に指示を飛ばす。
舟の準備、帰京の再度の段取り。
体の自由が利かぬ、王様を守れぬという己への苛立ちがそうさせるのか。
そこへ、あの天医様が飛び込んでくる。
隊長の周りを取り囲んだ俺達をかき分け
「絶対安静と言ったでしょう!!」
と叫びながら。
何と口やかましい方なのだ。
隊長の傷にはこの声の方がよほど障るのではないかと、心配になる。
隊長がよろめきながら天医様に寄りかかり、約束を果たすまで共にいろと伝えるのを聞き、俺の中に心配が募る。
死ぬほどの目に遭わされた後なのに、面倒そうなこの方まで隊長は抱え込むのと言うのか。
俺の勘は当たった。
帰京した後、徳成府院君に面会し、その直後。
足をむき出しにした医員様が迂達赤兵舎に乗り込み、泣き叫んだ時に。
この医員様は、何処まで隊長の面子を潰すのか。
無言で俺を振り返った隊長の眸を見て、俺は周囲の兵と共に外に出る。
これ以上兵の目に、隊長の醜態を曝すわけにいかん。
あの医員様は何故それが分からんのだ。
静かに隊長を治療し、隊長が全快すれば直ぐに一刻も早く天界へお戻り頂きたい。
これ以上の面倒を起こさず、速やかに。
ただひたすら、それだけを願いながら。
隊長がその後、あの腹の傷のせいで再び倒れ意識を失った。
挙句一度は心が止まったと聞いた時は、こちらの心まで止まると思った。
息を吹き返してくれただけで良かった。
そしてテマンから、あの天医様が隊長を助けたと聞いた時。
もう今までの遺恨を水に流し、拝んで良いとすら思った。
その直後。
隊長がまだ伏したままというのに、隊長の治療を続けている天医様を、奇轍の屋敷に連れていけと言う。
またしても王命だ。
王命とは隊長の危地に、その隊長を踏みつけるため発布されるとしか思えない。
半死の隊長がその王命に背き、奇轍の屋敷に単身乗り込んで行ったとチャン侍医から、そしてテマンから聞いたとき。
心は決まっていた。道は一つ。
俺も正面突破で隊長を救うのみだ。
俺が部屋で鎧を付け御前に出る準備をしていると、部屋の扉を開けたチュソクが入って来た。
「俺も行きます」
俺が黙って頷き部屋の外に出ると、全員が身なりを整え待っていた。
「王様に直訴だ。せめて俺達の誰かが隊長を助けに行くお許しを頂く」
その顔を見渡し言った俺に、皆が黙って頷いた。
宣任殿で俺を先頭に、迂達赤全員が王様に跪き、隊長に二心などないことを懸命に訴える。
隊長がどれほど王様に無私無欲に仕えてきたか。
だから、御慈悲をと。助けに行かせてほしいと。
それでも王様は正論で切りこんでくる。
一度発された王命に背けば反乱だ。
隊長は王命を知らずに行った、何故か。
それは俺達は昨日から、誰も隊長に会っていないからだ。
だから隊長は王命を知らぬのだと。
それは隊長を守ると共に、隊長を助けに行けぬという、諸刃の剣だった。
俺は二の句を継げず頷くしかなかった。
俺が隊長の肚を読み違えば、迂達赤が迷う。
あの少ない言葉の裏、行動の裏を読めねば隊長の不在を埋める事など出来んのだ。
隊長に替わって王様の護衛を続けつつ、肚の中では己を鼓舞し、最善策を考えてみる。
チェ尚宮殿に相談したくとも、王妃媽媽の無断外出の件で、尚宮殿もそれどころではない。
テマンに任せれば行動も早かろうが、あいつは奇轍の手下の放った毒に冒されていた。
最も信頼できるチュソクに隊長との密通という危険な任務を任せ、帰りをひたすら待つしかない。
隊長を一人で行かせたままチュソクの帰りを待ち、テマンの回復を待ち。
胃の腑が焼けるような焦燥感で、思わず頭を抱える。
頼む、うまくいってくれと祈るように毎日を過ごす。
しかしまたもあの癪に障る参理のせいで、チュソクの密通は露見した。
激怒した王様に誤解されたまま、俺達は奇轍の手下によって迂達赤兵舎内に監禁される。
ようやく回復したテマンが嗅ぎまわった後の報せ。
隊長に会えたチュソクが王様に直訴に行った事、そして隊長が江華島で捕縛されたという最悪のものだった。
動揺が広がる迂達赤兵舎の中。
トルベは門を破って隊長を助けに行くと言い出し、トクマンたちもそれに呼応する。
武器も鎧も取り上げられたこの状態で。
俺はどうする。次に何ができる。隊長の為に。そしてこいつらの為に。
隊長ならこんな時どうする。
外にも出られん監禁状態で。全て取り上げられて。
隊長なら次に打つ手は何だ。
考えろ、考えろ。考えろと己に繰り返す。
すでに散々考え過ぎて痛む頭を抱え、きつく目を閉じる。

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あぁ~! ドラマ観ていた時とは比べ物にならないくらいに、王様が憎たらしい~(ToT) プジャン、ファイティン~!
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今日の部分は本編とリンクしていますのでどんどん進んでもわかります
ただ本編ではこのあたりでのチュンソクの登場やセリフはとても少なかったので彼の視点からの描きは新鮮で嬉しいです
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>kumiさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
王様・・・実は悩んでます・・・
この辺も、書きたいところの一つではあるのです。
王様の痛みをわかるのは王妃媽媽のみ・・・
【秋菊】は恋愛に終始しましたが、
王様の場合、恋愛よりも政をメインに書くと
より分かりやすいと思うのですが。
でもチュンソク副隊長には
単なる小憎らしいガキにしかみえてません
(ノ_-。)
ドチ並に言ってあげたいです。
チョ、王様~~!と。
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>あみいさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
まさに、この辺は本編に沿って
チュンソク副隊長の目線で淡々と進みます。
ここから、副隊長の気持ちがどう向かうか。
明日(と言っても今日ですが)2話で
【百日草】終わりです。
今週はまさに計画通り。
だってだってな秋祭り、飛び石連休バージョンの
甘い週末が待っておりますゆえ・・・っっ❤
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さらん様、こんばんは❤︎
ヨンの様に神がかりの才や武力は無くとも、出来うる限りヨンに近づき、その真意を理解しようとするプジャンは、ほんと努力の人ですね‼︎
迂達赤が、誰より恐れ誰より愛する隊長を翻弄する天の医員を始めは厄介だと思っていても無理は有りません。
あの時代には、およそ似つかわしくなく、ウンスの行動や言動に戸惑う事ばかりだったでしょう。
なぜ、あの方なのか?
プジャンもそう思っていたのですね。きっと…。
この先、いつプジャンが、ヨンとウンスを認めてくれるのか楽しみです‼︎
ヨンの声、聴きたいなぁ…❤︎
誰かを一発殴って、怒鳴るのも有りなので*\(^o^)/*
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>夢夢さん
おはようございます❤コメありがとうございます。
ヨンは天才ですが、周囲無しではただの孤独な
独裁者になる可能性もあったと思います。
でも、人に恵まれている。
それこそが、実はヨンの天賦の才かもしれません。
よーーくわかります。
私もあまりにヨンの声を聞きたくて
先週末、迂達赤をUPしつつも、書いていたのは
全てヨンのお話だけでした。
そして週末の飛び石連休は、秋祭りpartII
いろいろ考えておりますヨン❤
その為に、この【百日草】を、
どうにかこうにか、今日で終わらせるよう
むりくりまとめたほどです。
もういいじゃん副隊長、後は迂達赤で!と。
まずは本日、お楽しみ頂けると嬉しいのですが。
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本当に禿げちゃうかも….ウンスに髪の毛ふっさふっさになる薬を作ってもらいたい。あと胃薬。きっとすでに胃に来てると思うのです(´д`|||)
あぁ、もう少しだよ、隊長の柔和なお顔が望めるのは!
頑張れ!チュンソク!
又覗きに来まぁす(*^▽^)/★*☆♪
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あの画が、脳裏に浮かんで読んで行く度グッとなりました。
思慮深く、義に厚い。善き善き漢ですねぇ♥
この物語、凄く好きで読込み過ぎて覚えてしまった位…
あと、少しで終わりなのが淋しいですが….(T^T)
この後が、マスマス楽しみです。
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>üKöさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
もう、副隊長は迂達赤長男として
今後も頑張って頂く所存です。
大丈夫ですよー
飛び石連休の週末、副隊長はまた来ますよー。
ものすごく、可哀想な立ち位置で(爆
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>ののさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
来てますね。胃。
潰瘍とか心配です。
ストレスは体に良くないですよー。
副隊長にも幸せになって頂きたいですが、
この人の場合、隊長と同化したい欲が強すぎ
隊長の幸せを見届けないと
自分の事は常に後回しな感じが・・・うーむ。
ウンスに惚れるのはなしとしても、
選ぶ人はウンスに似てる気がしてなりませぬ。
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ご無沙汰しとります。
ちょっとゴチャゴチャになってきたので、シンイ本編に集中!とうとう視聴完了してしまいました(;_;)
でもさみしくはありません、なんたってこちらに来ればお話はまだ読めるのだから~♫
プジャンかっこいいっす!これからも楽しみにしてます(≧∇≦)
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>doraさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
祝❤視聴終了ヾ(@°▽°@)ノ
寂しいですよね・・・思い出します。
私はその寂しさに負け、DVD購入し、
そしてどーーーしても納得できずに
今ここで細々二次を書くと言う暴挙に出ましたがw
チュンソクのかっこよさ、トルベやチュソクの
最期、そして未来を予感させる最終話の
トクマンやテマナの凛々しさ。
私ももう一回見ようっと❤
信義本編の素晴らしさとは、当然比べるまでも
ありませんが、ここでのお話もまだ続きます❤
よろしければ また覗いてみて下さい♪