そんな隊長が変わられたのは、あの方が現れてからだ。
新しく即位された王様が俺達の護衛で、元より祖国高麗に戻る途中、刺客の襲撃を受けた。
王妃媽媽が瀕死の重傷を負われ、王命を受けた隊長は不可思議な光の中より、天界の医員を抱えて戻って来た。
そして王妃媽媽を治療した後、その天医を天門から帰しそびれた直後に、次は自身の腹を刺された。
俺達は一部始終を目の前で見ていた。
己の名をかけた隊長の約束が王命の下、あの忌々しい参理によって踏みにじられるのを見ているしかなかった。
あの天界の医員が地面に差していた隊長の剣を抜き、それを構えて隊長の腹を刺すところを。
我が目が信じられなかった。
今まで戦場で共に戦い、どんな敵も隊長に刀を突き立てるところなど見たことはなかった。
どんな敵の矢も刀も、隊長の事を避けているようにしか見えなかったものを。
刺された隊長を置いて行け。
あの参理が隊長の腹から剣を抜いて言った時には、俺は本気で迂達赤の役目を辞そうと思った。
だから奴に叫んだのだ。
「医員様がここを押さえろと言うのですよ!!」
だからお前如きは黙って引込んでいろと、正直に続けてやりたかった。
誰が王様になるかは、俺達には決められない。
それはおそらく天のご意志というものだろう。
だが俺が誰を信じ、誰について行くかは俺の意志だ。
命を預けるならば、俺は隊長しか考えられなかった。
刀傷を負った隊長を即席の担架で宿まで運びながら俺はひたすら祈った。
死なないでくれと。
隊長以外の人間の命令を、自信をもって兵に伝える事は俺には出来ぬから、死なないでくれ。
迂達赤の他の兵も同じ気持ちだったろう。隊長の命令しか聞けないから、死なないでくれと。
宿に戻った隊長の体を治療部屋に運び込み、天医とチャン侍医が口論しながら治療する間。
迂達赤は部屋の外に追われ、扉前で待ち続けた。
俺は王様に、隊長の状況を簡単にお伝えした。
王様はそんな俺の様子を見た後
「隊長の手当が終わるまで待つ」
とだけおっしゃった。
ひとまず隊長だけをこのまま置いていく最悪の状況は回避できたと、安堵の息が漏れる。
俺はそのまま王様の部屋の扉前で警備についていた。
それ以外のほとんどの兵は、隊長の治療中の部屋の扉の前から動かない。
昼で良かった。
明るいからこそどうにか目を瞑ってやれる。
夜であれば、こんなに大勢の奴らが持ち場を離れる事は許されなかった。
いや、俺が許さなかったろう。
そして隊長が許さないだろう。
守りたい人、共に生きたい人の為に、その人を見捨てるしかない。因果なものだ。
テマンは扉の横で一人、体を固くし小さく蹲っていた。
「テマナ、こっちに来い」
チュソクが声を掛けるが、テマンは首を振り続けた。
「攫ったりするから、あの天界の医員が怒ったんですか」
トクマンが誰にともなく問うた。
「隊長が悪いのか?攫ってきたのは隊長としても、そう言ったのは」
トルベがそこまで言ったところで
「トルベ!」
俺は大声で一喝した。
それ以上言うことは許されん。許されるなら俺とて大声で言いたい。
隊長は名を懸け、確かに天医様を天門からお返ししようとした。
お返しするのを阻んだのは隊長でなく、参理の運んだ王命だと。
しかしそれを口にすることは絶対に許されん。
隊長が意識のない今、迂達赤を護るのは俺だ。
隊長が戻るまでこ奴らを厄介事から遠ざけるのが役目だ。
トルベは部屋の中をうろつきながら頭を抱える。
チュソクは部屋の出入口の扉を睨み続けている。
トクマンはその場で崩れ落ち両手で顔を覆った。
テマンは瞬きもせずに座り全く動こうとしない。
他の迂達赤の兵らも皆、一様に押し黙っている。
「もし船が手配出来て、王様たちが移動と決まったら」
チュソクの一言が、その場の重い空気を破る。
「副隊長、どうしますか」
「王様の安全のためには、移動は一刻も早い方が良い」
俺が言うとチュソクは太い息を吐く。
俺とて同じ事を考えている。少なくとも隊長が動けるまで待って頂きたいと。
隊長ならば一喝するだろう。役目に私情を挟むなと。
自分の事は、構わずここに置いて行けと。
俺は今の隊長を置いていくことが出来るか。
俺達に、迂達赤に、本当にそれが出来るか。

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チュソク目線でウダルチ君が書かれていて切ないですね。
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いよいよ動き始めですね
しかしあの参理が剣を抜いた時には(コラァ、おっさん!!)と殺意が芽生えましたよ
そしてウンスが手術しようとした時にはチャン先生に信用できないって言われていましたね
でもあの天門前のいきさつを見ていたから部下はウンスを信じて任せた
隊長を知っている部下だからこそなぜあのような行為をしたかを理解できた
ウンスを責めたらきっと隊長に怒られますから…
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皆心配してるのに、自分だって心配なのに任務が優先。プジャンもヨンが居ない今護りに徹しなければいけないなんて…ウダルチの隊員は皆動揺を隠せない。
早く医仙の手当てが終われば良いのに。
どうなるか分かってるのにハラハラします。
又覗きに参ります( ノ^ω^)ノ
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さらん嬢の描かれるチュンソクはとっても凛々しくて素敵!
ヨンもちらっとゲスト出演で今後の展開が楽しみです!
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(*´Д`*)←こんなんなりましたwww
でも副隊長、あなたのせいヨン☆
ウンスが連れて来られてからヨンを刺して治療するまでのあのシーンを、チュンソク目線でじっくり考えてみたことがなかったので、そうかそうだったよね…と。
しかし初期のウンスはぴーちくぱーちく煩かったよな~、あそこで見るの止めないで良かったな~とつくづくww
副隊長やテマンにはどう見えていたのか、気になります。
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さらん様、こんにちは❤
今回のプジャンは、めっちゃ男前ではありませんか!!
チュンソク、カッコいい❤
自ら鬼剣に向き合い、自らで刺し貫いたヨンのあのシーンは衝撃的でした。
最初から、決してかなわなかったのですよ、あの方には......
「体中を撫でられては気も失えん」
深刻で、あっという間に過ぎてしまったシーンですが、ウンスの行動や手のぬくもりを、薄れそうな意識の中にいて、ずっと感じていたのでしょう。
あれほどの男が、何を捨てても自分だけのものにしたいと願った運命のあの方とのこれからを考えると切なくて切なくて.....❤
プジャンの側から見たふたりは、どんな風に語られるのか、とっても楽しみです(*^_^*)
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>ちよさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
切ないですか?
そうかー、私まだまだ修行不足です。
本当は淡々と進まねばならぬ処ですが、
感情で筆が先走っているか(ノ_-。)反省です。
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>あみいさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
そうですね、口には出せないですが
この頃チュンソクは医仙の事、本当に苦手だったと思いますw
この後、どうなるか・・・
実際DVDではここまで思い詰めた様子は
全く書かれていませんが。
うちの可哀想なチュンソクは、髪が抜けるほど
思い詰めていそうです(´・ω・`)
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>ののさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
そうですね、序盤の名場面。
とりあえず、早く終われと祈りつつ。
本当に、分かっているのに、書いていても
ハラハラしますww
しかし書く程チュンソクが思い詰めてゆく・・・
ハゲたらどうしましょう・・・
私も伺いますね❤
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>まあもさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
そう、私にとってはチュンソクは永遠の
最強補佐役なのです、
かっこよく書いてやらねば哀れで・・・
いつもあの隊長に添えるのは、この人くらいですww
チュンソク目線なので、ヨン&ウンスは
なかなか出てこない
(思うよりもウンス&チュンソクの絡みは
少なかったです)ので
物足りなーい感じが残るのですが
ウンスが出てくる以上、或日、迂達赤の方には
お話UPはできず
結構このお話自体、中途半端な立ち位置に
(;´▽`A“
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>みゅうさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
(*´Д`*)←こんなですかww
チュンソクも大反省中ゆえ、ご勘弁を。
確かに、いやー騒がしい!
あんな煩い女、私なら困るわ・・・と(爆
実は、テマン目線の医仙は、この後、全く別のお話で出てきます。
それもまた、お楽しみ頂ければ嬉しいのですが。
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>夢夢さん
こんばんは❤コメありがとうございます。
本当なら、ウンスオンニが迂達赤に移ってきたところまで
書いて上げたいところなのですが・・・
そうすると悲しい別れを避けられず。
そこまでは、まだ行けないので(ノ_-。)
これは、中途までのお話になりますが
この後も、流れはまだ続きます。
いつか書かねばならぬ別れがあると
分かっているのが、とても切ないです・・・