しばし兵たちの中を歩き回ったチェ・ヨンがふと足を止め、チュンソクに軽く頷く。
気付いたチュンソクは兵に声を掛ける。
「全員、やめ!」
兵たちが手を止める。
「納め!」
皆が剣を鞘に納めるのを確認し、大護軍に視線を戻す。
「隙だらけだ。全員、素振り一刻」
チェ・ヨンはそう言うと踵を返す。
「隊長」
チュンソクがチェ・ヨンの後ろに従う。
「は」
「王様に謁見する」
「は」
皇宮の門を入り、回廊を渡り。
チェ・ヨンが皇宮のあちらこちらに目を遣ることを、チュンソクは気付く。
まるで見えぬ何かを探すように。
だからと言って言葉はかけない。
第一何と言っていいのかも分からない。
ただその大護軍の眼を見ぬように、自分もどこへともなく目を泳がせる。
自分ですら今にもあの赤い髪が、回廊の影から覗くような気がするものを。
あの笑い声が典医寺の庭より響いてくるような気がしてならんものを。
大護軍は一体どのように、その想いを抱えているのか。
何もできん。
ただ大護軍があの方と出会う前のあの頃に戻らぬよう、神仏に祈る以外は。
大護軍が先に立って歩く回廊の、秋の日差しが伸ばすその影を踏まぬよう。
チュンソクは下を向き、大護軍に従う。
康安殿へ着くと閉ざされた扉の前で、チェ・ヨンが低く響く声で名乗る。
「王様。迂達赤チェ・ヨン参りました」
「入りなさい」
すぐに奥より王の声がかかる。その声と共に扉の前の内官が扉を開く。
王は一段高くなった執務机から立ち上がり、下へと降りてきたところだった。
窓から斜めに差し込む日差しの中、召された袍の黄金の龍の縫取りにその光が映え踊る。
「大護軍、久しぶりだな」
「ご無沙汰致しております」
チェ・ヨンがその場で頭を下げる。
「掛けなさい」
「は」
王が着席したのを見届けチェ・ヨンが席に座る。
チュンソクはそのまま王の右横へ控える。
「北方はどのような様子か」
ゆったりと腰掛けた王の前、チェ・ヨンは真直ぐに背筋を伸ばす。
「只今は落ち着いております」
「冬が明け春になれば、すぐに元に兵を派遣する。訓練の進み具合は如何か」
「まだまだ不満ですが少なくとも王様の顔、高麗の名に泥を塗ることはないかと」
王はそれを聞き、可笑しそうに頷く。
「そなた、まさか高麗の兵が全員そなたほどの腕をもてると期待していますか」
「某は兵たちをそう鍛えるが役目故」
「大護軍」
王は静かに首を振った。
「そなたは、そなただ。他のものに無理強いしてはいけない。
そなたの留守中、迂達赤始め兵はみな十分その役目を果たしている。それを褒めてあげなさい」
チュンソクがかすかに満足そうに微笑む。
「は」
チェ・ヨンは頭を下げた
「ここに来る前に迂達赤の訓練場にいたそうだが」
「は」
チェ・ヨンが再び頷く。
「よもや兵たちに素振りなどと命じておらぬか?」
チュンソクが噴き出しそうになるのを堪える。
「王様」
チェ・ヨンが抗議の声を上げかける。
王はそれを手で制し、チュンソクに向き直る。
「迂達赤隊長」
「はい、王様」
「即刻、兵たちを休ませよ。
大護軍に訓練を受けた後に素振りをも続けては、兵たちの体がもたぬ」
「畏まりました」
チュンソクが部屋を退出する。
室内にはチェ・ヨンと王だけが残された。

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新しいお話、始まりましたね(^-^)♪
展開が楽しみです。
王様はヨンと2人で話したかったのかな。
ウンスのことを話すのかな…?
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ヨンの行動がチョナには見えてますね(≧▽≦)横にいるチュンソク、笑うのこらえるのが必死でしょう。私も家族の前で顔が笑うのをこらえるの必死でした((ノ∀`)・゚・。 アヒャヒャヒャヒャ←本当はこんな風に笑いたっかった(*^ω^)
チョナはずっとヨンの事が気になってるからこれから何を話すんだろう…
又覗きに参ります:*(〃∇〃人)*:
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>みゅうさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
ふふふ、久しぶりにヨンをUPしたので
脳内があの声で溢れて大変です。
凄い勢いでUPしたい気持ちと、じっくり
一つずつ進めたい気持ちが鬩ぎ合っています。
楽しんで頂ければ嬉しいです❤
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>ののさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
((ノ∀`)・゚・。 アヒャヒャヒャヒャ
王様は、唯一ともいえるヨンの上官なので。
やはり大護軍の上に立つには、それなりの器で
いて頂かねば困ります。
是非また覗いてみてください❤
私も伺います(*v.v)。
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そして、ヨンと何か二人で話がしたいんでしょうか?
それとも、ヨンの心情を汲んでかな?
未だ、メヒョニが頭から離れず(笑)
姉の夫(弟から見て)がメヒョン。。。?等辞書を引いたりしています。
この部分、ドラマでは描かれてなかったので、さらんさんの世界でのヨンが楽しみです。
ウンスが戻るまでまだ少し掛かります。
その間、どの様な事があるのかしら。
そして、ヨンはウンスが戻るまで、どの様に過すのでしょう?
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この王様すごくいいですね。
ヨンのことを、よく分かってる。
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>mayuさん
こんにちは❤コメありがとうございます。
メヒョニが心を惑わせて申し訳ない・・・(ノ_-。)
今回は、ひたすら切ないヨンを書きたく。
結末を知っている私はふふふ、と、
ひとりほくそ笑んでおります。
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>みわちゃんさん
こんにちは❤コメありがとうございます。
王様は、王妃媽媽誘拐事件護、大人になったのを
ドラマでも端々で感じましたが、
ここではさらに年月が経っているので・・・
ヨンのよりよい理解者になってくれている事を
祈りつつ(●´ω`●)ゞ
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>さらんさん
さらんさんが、そこまで口を閉ざすという事は、
最後まで秘密なんですね?
分かりました。
では、それだけに囚われず、後の部分を楽しみますね(^-^)/
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>mayuさん
いえいえ、秘密なんて全然です(〃∇〃)
正解はもう、至極単純なので
今日の夜か、明日にはすぐにわかります。
今回は、ネタもばらすほどの事もなく
ただただ、雪が降り、ヨンが切なく、
そして相変わらずうちの末っ子、テマナが
出来る子ぶりを発揮する、そんなお話。
最近暴れすぎたヨンを、すこしばかり
おとなしくさせてみました。
楽しんで頂けたら、とても嬉しいです。
なので、BGMも先行告知でww
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王様って医仙がいなければ今は余が一番チェ・ヨンを理解できているって思っていらっしゃるかしら
でもチュンソクがおりますよ、王様
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>あみいさん
はいっ❤追いついて頂けましたヾ(@°▽°@)ノ
王様は男同士として、己が一番ヨンの心が
分かると思っているかもしれません。
的な会話が、今日は出てきます。
さすがあみいさま、読んでいらっしゃる(o^-')b
そうです、チュンソクが。
そして、テマナが。
今回も、ウンスオンニの抜けた穴を埋めるべく
多方面より、ヨンを支えて尽くす漢たち。
ヨンは幸せ者です。本当に。
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さらん様、おはようございます❤︎
迂達赤には気の毒な事ですが、彼らに容赦の無い、ヨンが良いですねぇ。
我らのチェ・ヨンここに有りです(*^_^*)
チュンソクの心配は続きますが、以前とは違う、前を向いてウンスの帰りを信じて待つ、ヨンが見える様です。
ヨンの無言の頷き、いただきました❤︎
頷いたか頷かないか分からない程度の、あの小さな動きの時の、ヨンの視線がたまりません(≧∇≦)
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>夢夢さん
おはようございます❤
こちらにもコメありがとうございます。
迂達赤、哀れw
迂達赤にとっては相変わらず、最も信頼でき、
言葉数の少ない、短気で厄介な大護軍ですww
しかし、だんだん私の信義そのものが
中盤に差し掛かってきたな、と
複雑な思いの初秋の飛び石連休。
年表修正更新の際も、❤マークが増えました。
抱き締めて手放さず、まだ書くのか。
それとも、最初から決めた通りに進むのか。
悩みます。